「デザインのミラノ」が実質的な内容を伴いつつある。
ミラノのデザイン界がほんとうに次元を変えて動きつつあるのを実感します。
以下の日経COMEMOの記事で、ミラノサローネがミラノ工科大学に「サローネのエコシステム」の調査を委託したことを紹介しました。2月13日のプレス発表のことです。
その翌日、2月14日、今度はトリエンナーレ美術館でプレス発表がありました。ここに年間、開館時にはいつでも誰でも無料で使えるスペースとサービスがあるデザインセンター”Cuore Centro Studi Archivi Recerca"がオープンしたのです。
30万点以上の本、カタログ、写真、図面などがアーカイブされており、開架式に見られる資料とアポをとって司書に見せてもらう資料の両方があります。ル・コルビュジェの図面なんかもありますよ。
まさしく、ぼくのやっているプロジェクトにバッチリの相談役になってくれる場です。さっそく司書にお会いし、資料の検索をお願いしました。来週、深く相談にのってもらうことになりました。ぼくがお願いしたのは以下です。
そうしたら、「やってみよう」と言ってくれたのですよ。で、来週後半までに彼女がそれなりに資料をあたり、その報告をくれるのです!当然、すべてを満足する結果はないでしょうが、いわば「イタリアデザインの殿堂」がどこまで資料をおさえているのかが分かる意味は大きいです。
なによりも、写真にあるように、光があってとても明るい気持ちの良い空間に通うのは嬉しいです。位置としては入り口から入って左手にあるチケット売り場を通過してすぐ左です。外観からすると、以下、日本式の1階にある窓にスクリーンがかかっているところです。
(因みに2階のスペースではカルティエ財団のサポートでRon Mueckの展覧会をやっています。そっちはこんな作品が展示されています)。
コンテポラリーアートの作品で頭を刺激した後、過去のデザインのアーカイブに浸ったり、その逆ができるわけです。デザインを考えるに相応しい空間と時間が用意されているということです。
このところ、ミラノにおけるデザインインフラの整備が進んでいます。トリエンナーレ美術館内でイタリアデザイン史を辿る作品が展示されるのは当たり前になっているし、パンデミックの最中にはイタリアデザイン協会(ADI)の美術館がオープンし、コンパッソ・ドーロの1954年からの軌跡を作品とともに追えます。
かつて、そうですね、20年くらい前までは「デザインのミラノと称されるが、ミラノのどこに行けばそうだと実感できる場所がない!」と盛んに言われました。
それこそミラノ工科大学やドムスアカデミーに部外者が行って何か資料がみられるわけでもないので、コルソコモ10の店内やアンティークショップでかつての記録に接し、ドゥリーニ通りあたりのインテリショップ巡りをする、というのがせいぜいだったのです。
正確にいえば、トリエンナーレ美術館の地下階的な一階には図書室があり、そこにはデザイン誌のアーカイブや書籍が開架式でみられ、読めるデスクもありました。
かつてウルム造形大にいて、その後、ボローニャ大学を経由してミラノ工科大建築学部でデザインを教え、ミラノ工科大のデザイン学部を創立するに尽力したアルゼンチン出身のトマス・マルドナドの蔵書が寄贈されていて、彼のメモのはいったウイリアム・モリスの批評本をぼくも読んだことがあります。
しかし、パンデミック中に閉鎖され、その後、その階に足を踏み入れることも禁じられていたので、ぼくは「あああ」と思っていたのです。そしたら、なんと2018年から、今回オープンになったスペースの計画がはじまっていたのでした。
疑って悪かった!すまん!
また、最近、大手出版社のFeltrinelli をつくったGiangicamo Feltrinelliの息子が父親について書いたSenior Serviceという本(これは抜群に面白いです)を読んでいるのですが、この本の新版がマルドナドと(Giangicamoの妻だった)Inge Feltrinelli夫妻に献じられているのです。
それでマルドナルドのことをちゃんと調べておかないといけないなあと思っていました。あの彼の蔵書のタイトルくらい、再確認したいと思っていたら、Cuoreの司書の方が「あのアーカイブ、ちゃんとあるので安心ください」と言われ、すごくホッとしました!
だって、マルドナドがイタリアへのバウハウスの重要な伝達者であり、例えば、デザイナーのピレッティなんかもウルム造形大に行こうと思ったら閉校になって残念と言っていたくらいです。このイタリアにおけるバウハウスの影響の微妙さの背景を知るにマルドナドの蔵書の確認はヒントになりそうと思っています。
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