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日本語教師のキホン知識【ひらがな・カタカナ学習の始め方】

はじめに

こちらの記事では、日本語を外国語として学ぶ方への50音(ひらがな・カタカナ)の指導、特に導入方法についてご紹介します。



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学習者の気持ちを想像しよう!


文字の指導に限ったことではありませんが、学習者の気持ちに寄り添った授業を行うこと、また、それを常に心がけることが、大変重要だと私は考えます。

私は日本で生まれ、日本で育ちました。
日本語母語話者の両親に日本語で育てられました。
ですので、日本語を外国語として学ぶ方の気持ちを完全に理解することはできませんが、他の言語や文化と比較することで、彼らにとっては当たり前でない日本や日本語の特徴を知り、彼らが疑問に思うであろう点は何か考えることはできます。

と、偉そうに語ってみましたが、本当に本当に難しいです。
日本語学習者の気持ちなんて、正直未だによく分かりません。

今回も、分からないなりに想像した結果をもとに授業の流れを考えます。




【ステップ①】ひらがな・カタカナ・漢字の3種類の文字があることを確認!


私はいつも、50音の発音や書き方の指導に入る前に、まずはこのような画面を見せます。
ここでは「山田太郎」としていますが、実際には自分のフルネームを見せます。

ひらがな、カタカナ、漢字、と順番に見せながら、
「『やまだたろう』です」
「じゃあこれは?――そうですね。これも『やまだたろう』です」
といった感じです。

学習者全員が知っている日本語である教師の名前を使って、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の形を確認


すでに日本語で簡単なやり取りができている場合や、間接法(学習者全員が理解できる別の言語を使った指導法)の場合であれば、
「日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字、3つありますね。じゃあ、どれが一番古いですか。知っていますか」
なんて聞いてみても面白いかもしれません。

大抵の学習者は、自分たちが勉強した順番で「ひらがなが一番古いです」と答えたりします。

「漢字は中国から伝わったもの」ということを知っている学習者は多いのですが、なぜひらがなやカタカナが生まれたかまでは知らない学習者が多いのです。

初級なので、色々端折って
「ずっと昔、日本は文字がありませんでした。ひらがなもカタカナも漢字もありません。話すだけです。書きません。それで、中国の人が日本人に漢字を教えました。その後で、『漢字は難しいですねえ〜』と男の人がカタカナを作りました。女の人は、可愛い文字を作りました。ひらがなです」
という具合に話したり、話さなかったり。

この時点で日本語でここまで理解できる学習者はなかなかいないので、おまけでした。


次に、カタカナで書いた学習者の名前を画面に表示します。
それを見ながら、まずは自分の名前をノートに書いてみてもらいます。

書き順なんてどうでもいいのです。
形もきれいじゃなくていいのです。
動機づけのために、とにかく書いてみます。

自分の名前が書けたら、学習者の国・地域の名前、好きな漫画のタイトルやアイドルの名前を聞き、画面に表示します。

自分に関係するものや好きなものの名前を日本語で書ける喜びを感じてもらい、「楽しい!」「もっと勉強したい!」と思ってもらう。これが動機づけです。

また、この活動を通して「あれ?これはカタカナかな?」「お?今度はひらがなかな?」と、2種類の文字を使い分けることに気付いてもらう、というねらいもあります。

「私の名前や町の名前はカタカナだけど、日本の名前や地名はひらがなだ!」
なんて気付いてくれたらとってもラッキーです。




【ステップ②】母音5つ×文字2種類 であることを確認!


ここから本格的に文字の学習に入ります。

形や書き方を指導する前に、まず、日本語には母音が5つあることを確認します。

母音の数や音は言語により異なります。
日本語の母音は5つで、それぞれ2種類の文字で表すことができる、ということは日本語母語話者にとっては当たり前ですが、学習者にとっては違います。
実際に教師の真似をして発話をしながら、そのことを確認します。

ちなみに、私はいつもこのような画面を見せます。

日本語は母音が5つあること、文字がそれぞれ2種類あること、そして口の形をイラストで確認




【ステップ③】50音表でひらがな・カタカナの全体像を確認!


さて、5つの母音と文字の確認ができたので、あとは子音と組み合わせていくだけです!

50音表で、ひらがな・カタカナの全体像を確認


このように、か行のみ例としてローマ字を見せます。

さ行以降は「SとAだから…『SA(さ)』だ!」と学習者が自分でどんどん推測します。

教師は、学習者が推測した後に正しい発音を聞かせ、リピートさせます。

「『K』と『U』だから…『KU(く)』だ!」と、学習者に音を推測させながら、文字を確認


同じ要領でカタカナも確認し、50音表の仕組みと、ひらがな・カタカナがそれぞれ全く同じ音を持つことを確認します。

続けてカタカナも確認し、ひらがなと全く同じ音を持つことを確認





【ステップ④】ひらがな・カタカナの音と書き方を確認!


今度は一音ずつ、発音と形を改めて確認しつつ、書き方を確認します。

ひらがなとカタカナ、2種類を見比べながら音と書き方を確認


全体のどの部分を学習しているのか分かるように、常に50音表と行ったり来たりしながら進めるのがおすすめです。

50音表のあ行の部分を赤く囲って見せ、これから学習する内容が全体のどの部分なのかを確認

あ行を学習

50音表のあ行の部分を赤く囲って見せ、今学習した内容が全体のどの部分なのかを確認

50音表のか行の部分を赤く囲って見せ、これから学習する内容が全体のどの部分なのかを確認

か行を学習

といった流れです。




さいごに

今回は文字の指導についてご紹介しました。


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最後までお読みいただきありがとうございました!

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