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〈17歳のカルテ(Girl,Interrupted)〉様々な葛藤

17歳のカルテ(原題:Girl,Interrupted)を観ました。

〈作品概要〉
  作品名:17歳のカルテ(Girl,Interrupted)
   監督:ジェームズ・マンゴールド(James Mangold)
  制作国:アメリカ
劇場公開日:2000年9月2日
 上映時間:127分
 ジャンル:ドラマ・伝記

〈あらすじ〉
抑うつにより夢と現実を行き来してしまうスザンナは、ある日頭痛を抑えるためにアスピリン1瓶とウォッカ1瓶を併用し、病院へ運ばれる。境界性人格障害と診断されたスザンナは、クレイムアという精神病院へ入院することに。クレイムアには、彼女と同じように精神病と診断され入院を強要された個性豊かな少女たちが多く入院しており、スザンナも徐々に彼女たちの輪に溶け込んでゆく。様々な葛藤を抱えた少女たちは、一緒に生活していく中で互いや自分のあり方を認め合い、成長してゆく・・・。

〈ADI Score〉・・・映画のスコアを作品ごとの項目に分けて採点
    考えさせられる度:★★★★★
前向きな気持ちになれる度:★★★★☆
    キャストの個性度:★★★★★
       おすすめ度:★★★★☆

〈感想〉
ある少女は衝動的な行動に出てしまい、またある少女は病的な嘘つきであったり・・・それぞれの葛藤を抱えた少女たちの感情や思考が時には生々しく伝わってきて、最近10代を卒業したばかりの私にはとても共感できる内容だった。もちろん17歳じゃなくたって、人間誰しも他人と違うところを気にして、時にはそれが病気と診断されてしまうことだってある。でも、それはただ感情や行動の”揺れ”の大きさが人それぞれ違うだけであって、全くおかしなことじゃないんだよと、温かく包み込んでくれるような映画だった。

以下ネタバレあり

自分の顔にガソリンをかけて火をつけてしまったポリーや、病的な嘘つきのジョージーナ、過食症のデイジーそして境界性人格障害のリサとスザンナなど、登場人物それぞれの個性が非常に豊かだった。みんなそれぞれの葛藤を抱いていて、時には泣き出したり叫んだりして自分の現状に絶望する時もあるが、スザンナのように少しずつ自分を受け入れて認めて、前向きに考えられるようになる。もちろんデイジーのように、一度は自分に正直になったつもりだったが、改めて考え直すと深い絶望に陥ってしまい、自ら命を絶ってしまうケースもあるが・・・。

デイジーの死は非常に考えさせられるものがあった。彼女の本当の病は過食症でも近親相姦でもなく、自分に嘘をついてしまうことだったのだ。よくないことだとわかっているのに、”私は大丈夫、どこもおかしくない”と、自分に嘘をつき続けることで、クレイムアを退院した後に段々と自分の中で何かが壊れていったのだろう。そこにリサの言葉が突き刺さり、命を絶ってしまった。『死ぬきっかけが欲しかったんだよ』と吐き捨てるリサは、非常に冷酷に見えたが、その通りだと思った。

すごく話が飛ぶが、序盤のクレイムアに移動するタクシーのシーン、ここで運転手が言っていた『馴染むなよ』の意味が終盤になってとてもグッとくるものがあった。

入院初日にリサに問い詰められ、ジョージーナのルームメイトでありリサの親友であったジェニーが病室で自殺したことを知らされたスザンナは、非常に混乱し早く退院したいと願っていたが、少女たちと交流していく中で、段々とクレイムアが”狂気的だが心地良い”居場所だと感じるようになってしまったのだ。

タクシー運転手が言っていた『馴染むなよ』とは、自分と同じような境遇の少女たちがいる中でどれだけそこが心地よく感じてしまったとしても、”ずっとそこに留まってはいけない”と言うことを伝えたかったのだろう。

精神病は判断が難しいし、レントゲンを撮ったらどこが悪いかわかって治せるものでもないから、夜病室を抜け出し自分のカルテを読むシーンで、リサが”医師の診断と自分自身が違う”と言っていたように、誰にも正解はわからないものだと思う。

もし他人と違うことで悩んでいる人がいたら、それは単なる葛藤であって、感情や行動の揺れが大きいか小さいか、それだけのことなんだよと伝えたい。

感情や行動の揺れが大きいことはマイナスなことに聞こえるかもしれないが、私が思うに揺れが大きい人はプラスなことをさらに2倍や3倍で感じ取れることができる人だと思う。

みんな違ってみんないい!前向きになれる映画でした。原作も読んでみたい!

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