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お守りみたいな曲たち

はじめに

僕が音楽をとても好きなことは、多分知人友人なら周知の事実だと思うんだけど、
歌における重要なファクターの一つである"歌詞"というものを、僕はあまり意識していない。

多分、幼少期、ピアノやクラシックに触れたり、ゲームミュージックを気に入って聞いていたり、はたまた理解できないなりに英語の歌を聞いたりしていて、言葉を意識せずに音楽に触れていた時間が長かったからだとは思う。

あともう一つ理由があって。
僕が十代のころだから、2005年〜2015年くらいだと思うんだけど、

"歌詞共感ハラスメント"
、横行してましたよね?

やれ「この歌詞に共感」だの、やれ「気持ちを代弁」だの、歌詞ありきで音楽の価値が決まるみたいな風潮があったような。
それがすごく苦手で。
自分がとても多感でありながら尖っていた時代なので、若すぎてその風潮が受け入れられなかったんだと思う。

そんなこんなで、いつのまにか、歌詞を軸に音楽を聴くことが苦手になってしまっていたんだよね。
今でこそ、素直に歌詞が好きな曲もたくさんあるのだけど、大々的にそういう話を人に語るのは恥ずかしい。
恥ずかしくて、好きな歌詞はなんですか?って聞かれたら、これを答えるようにしている。

ケーキあれば 全部食べたい
他の子のも おいしそうねぃ YEAH YEAH
(ピリリと行こう! / Berryz工房)

いわゆるつんく♂パンチラインってやつ。
まあそんな建前の話は放っておいて、、こないだ友人と好きな歌詞について話をしまして。
友人は好きな歌詞について「お守りみたいな曲(歌詞)」って言っていて、おーなるほどな、と。
考え出すと、存外たくさん出てくるもんで。今回は僕の人生における大切な、お守りのような曲たちについてつらつらと書き綴ってみようと思う。
頑張って10曲に絞った。
きっとタイムリーに、今の気分や心持ちに起因しての選曲もあるから、普遍でないものもあるけど。
個人的なテーマや所感と共に、手短に紹介する。手短に。

雨 / ペトロールズ

これはもう僕の永遠のナンバーワンみたいになりつつある。
逢えない相手は人に限らず、幸せとか、喜びとかなのかもしれない。
そういうものに出会えなくて、色を失っている時にも、それで良いんだと思わせてくれる。
長岡さんの声も、がんばれがんばれ!っていう感じじゃなくて、今はそのダウナーな感じに浸っておきなよ、っていうどこか楽観的な趣きがあっていいんだよなあ。
ペトロールズは割と、歌詞の意味というよりも、リズムや音にカチッとハマる言葉をのせているイメージがある。
そこがとても好きなのだけど、この『雨』という曲に関しては、歌詞もしっかりと好きだなと感じる。
僕が死んだら、葬式でぜひ流してほしい。そして皆に泣いてもらいたい。(傲慢)

time will tell / 宇多田ヒカル

この曲は、どんなことにも真っ直ぐに向き合うしかないよね、っていう気持ちにさせてくれる曲だよね。
ペトロールズの雨が、そのままでいいよって言ってくれるのに加えて、この歌詞は、「まあ時間が解決するっしょ」って、抱えてるものを軽くしてくれる感じ。これも「がんばれ!」じゃないのが良いんだよなあ。
それから、”誰だってそんなつもりで泣くんじゃないよね”ってフレーズ、わかってもらえたような気分になってとても好き。

曖昧に逸れる / school food punishment

sfpは僕の思春期の多くを捧げたバンド。小さなライブハウスで佇んで聴くこの曲はたまらなく良かったなあ。内村さんの書く歌詞は、割と抽象的で理解が難しいものが多いけど、それゆえに僕の人生哲学の一つの要素になってる気がする。
ただこれの明確にわかるところは、人との別れと後悔の歌なんだよね。多分。
”その日はそれで暮れる”という冒頭の言葉は、time will tellと同じテーマ性があって、嫌でも時間は過ぎるよねということを語りかけてくれる。
だけど、最後には”日またぎ 意味は変わらない”で、起きてしまった事実は消せないし抱えて生きていくしかないんだなと捉えられるのかな、とか。
難しいな。

浮かび上がる / school food punishment

再びsfp。これは転じて、誰かの前では自分がただの人になれるということかな、と。
いつもあらゆる肩書きや鎧を背負って生きねばならないからこそ、大切な人の前ではせめて、ね。
明日も同じようにこのままでいられる保証なんか無いから、繋がりを失わずに、”消さないように守りたい”って思いになる。
本当はsfpについては『slide show』とか、『帰る』とかも挙げたいけど、特に大事な二曲に絞った。

風琴と朝 / siraph

こちらはsfpが解散した後、キーボードを担当されていた蓮尾さんと、ベースを担当されていた山崎さん、そしてハイスイノナサのギター照井さん、ボーカルにはanNinaやbinariaといったユニットでも活躍されていたシンガーのAnnabelさんといった錚々たるメンバーで組まれたバンド。個人的にはありがたや~でしかない。
ここ10年で熱量が変わらず追いかけている”バンド”という存在はsiraphくらいかもしれない。
この曲は朝を迎える尊さや、日々の小さな美しいモノやコトに目を向けるきっかけをくれる。
子どもの目で見たときに、「なんて素敵」と思われる自分でありたいよなあ。

花束 / 中島美嘉

中島美嘉ってちゃんとどの時代もコンセプチュアルで好きなんだけど、この曲で改めて彼女のパワーというか、言葉を届けることへの責任感みたいなのを発売当時に感じた。
しかもそれが、作詞作曲玉置浩二と来たもんだ。作り手のパワーも相まって、×2どころか二乗でパワフルになっている。
これはすべての人に愛や感謝を伝えよう、どんなものにも変わらぬ愛を与えようというニュアンスの曲。
だけど、あくまでそれも ”あなたと あなたのまわりのもの すべてを思います” っていう、自分と誰かの関係が礎になっているところに安心を覚える。

それ以外に何がある / 玉置浩二

そして件の玉置浩二氏です。
過ちを犯す人間たちにがっかりしながらも、変わることを諦めてはいけないと知らせてくれる。そんな歌。
多分玉置さんの根幹には、そういう隣人愛みたいなものがあるんだろうな。
すべては、目の前の人を愛することから始まるんだ、って語りかけてくる曲がとても多いよね。(『I love youから始めよう』とかね。)
ぜひ、この曲の最後の一節をかみしめて聞いてほしい。

プレゼント / 玉置浩二 安全地帯

また玉置浩二氏。歌詞は松井五郎さん。(安全地帯としてもアルバム収録しているので、どちらの名義も記しておく。ちなみに動画は安全地帯のアルバムでの音源)
この曲は、なんというか、僕の仕事におけるテーマ。
いつもこういう気持ちで我が生業に取り組める自分でありたい。正直、今日は無理!って日もあるけど・・・。
さておき、特に、
”ここにある なにげない一日は
いま僕から君へのプレゼント”
という部分を聞くと気持ちが引き締まる。
毎日を楽しく、友達や自分と過ごす目の前の子どもたちが、大人になって「あの時、楽しかったな」「あの日、隣にいてくれた時嬉しかったな」、そんな風に思ってくれることを夢見ている。

おかえりなさい / 坂本真綾

月並みだけど、一人暮らしをしてもうかれこれ8年近くになるので、いつの間にか「おかえりなさい」と声をかけられることがめっきりなくない。だから響くのかな?いやでも、もっと前からこの曲は大事だ。
すべての思い出たちに意味があり、いつ振り返っても大切だったと思わせてくれる曲。
そして小さな後悔や傷を忘れて生きていくことすら認めてくれる。そんな歌詞。
積み重ねることも、忘れることも、どちらも同じように尊いのだな。

HOME / 土岐麻子

これに関しては、アニメ『フルーツバスケット』によるバイアスもかなりかかっているかもしれない。
あと単純に、”多摩川”というワードにカチッとはまってしまったこともある。
郷愁や子どものころの原体験。そして今目の前にある環境や幸せへの感謝。どちらも大切に抱えているような表現が、刺さるんだよなあ。
多分、今僕が大切に思っている人に伝えたい気持ちに近いのだと思う。

一番に教えたい / 原田知世

さあ本題に入ってしまう。
この曲は、つい最近、友人の家にお邪魔したときに、「たつやこれ好きだと思うよ~」と言ってレコメンドされ、レコードで聞かせてくれた。
実をいうと、聞いている傍から涙が出そうで、でもまあ友人の家で泣いてたら頭おかしいから我慢したんだけどさ。
生きていると、年に1回くらい、「ああ、この瞬間のために今年も生きてんだな」って思う出来事があるんだけど、それだったよ。
珍しく歌詞がどんどん頭に入ってきて、情景も浮かぶし、いろんな思いが湧いてくるし・・・これはギフトだな、と思った。
この曲を聞き終えるや否や、すぐに僕もレコードをポチった。
日常の何気ないシーンを切り取りながらも、そこに深い愛や思いがあることがひしひしと伝わってくる。すばらしい曲です。
一番の歌詞と最後のサビの歌詞が少しばかり違うところにも、愛しかない。
自分の大好きな人への気持ち、それから、小さなことにも驚きや感動を忘れない子どもたちへの気持ち、自分を形作るすべてのものを表現してくれたような気持ちになります。
歌詞を書いているのは元チャットモンチー、高橋久美子さん。多謝。
いつか生で聞けるといいな。ライブ活動はあまりされていないようだけど、フジロックのピラミッドガーデンか、フィールドオブヘブンあたりで、朝一、まだ日が昇り切る前の時間に聞けたりしたらうれしいな。

結びに

10曲一度に紹介するって、なかなかしんどいね。
と思って読み返していたら、11曲やっていた。
もう書いてしまったのでこのままで良いことにしましょう。
本当はそれぞれの曲に対する所感が倍くらいあったのは、ほんとに性分と言いますか。やっぱり短く簡潔に物事をまとめるのは苦手だ。
まあ、人に読んでもらうためと言うよりも、自分の思いを記録に残す意味の方にフォーカスしているので良しとします。

そして。改めてこうリストアップしてみると、やっぱり傾向がわかりやすい。「泣きたいときは泣きなさい」「落ち込んだっていいよ」っていうテーマ性のある歌が好きなんだよね。
救われたいんだよねえ。きっと。
ただ、歌詞が好きなのと同じかそれ以上に、曲のサウンドや声もありきでこれらを選んでいる。
おそらく、人生のベストアルバムを作るとして、普段通り歌詞の要素を削っても、この曲たちは真っ先に選ばれるのだと思う。

あまりにも長くなってしまったのでここでは割愛したけど、
一曲の破壊力と、アーティストへの思い入れが乗っかってるのと、ちょっと思いが深まる経緯が違うよね。
いつかそんなことについても書き記せたらいいな。
あと、言葉がわからないなりに大事にしている外国語の曲への思いなんかも。

さあ、ここまで読んでくれた人がいたとしたら、本当にありがとう。
あなたはきっと変な人ですね。

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