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トーキョーライフワークトーク 第4回アーカイブ:文章

2020年11月配信分

【ゲスト】島 健さん(株式会社ROOM810 グラフィックデザインチーム部長)
【ナビゲーター】田中 結子


島さんが書く企業や商品のブランディングを目的にした文章は引き込まれる要素や思わずクスっと笑ってしまう要素がたくさん。ついその企業や商品に興味を惹かれてしまうことから私は勝手に島さんを荒川区の名バイプレイヤーだと思っています。
様々な企業や商品の魅力を広く伝える島さんが考える、今の時代に求められる企業のコミュニケーションの在り方についてやクライアントのニーズに応えるための新しいアイディアの生み出し方、社内での部門を跨いでのコミュニケーションの取り方などなど聞かせてもらっています!


音声でお聞きになりたい方は前の投稿からお聞きください!


番組提供:城北信用金庫



グラフィック、インテリア、メディアと3つの強みを持つ唯一無二の企業(株)ROOM810

田中:
それでは今月のゲストをご紹介します。
株式会社ROOM810(ルームハート) グラフィックデザインチーム部長 島 健(しま けん)さんです。

島さん、よろしくお願いします。


島:
よろしくお願いします。


田中:
ROOM810さんはどういった会社なんですか?


島:
一言でいうとデザイン会社で荒川区の町屋というところでグラフィック、インテリア、メディアという3つの柱でやってます。
ぼくはグラフィックチームなのでホームページとかパンフレットとかいわゆる広告を作るチームですね。

ほかにはお店とかオフィスの空間デザインを行うインテリアチームがあります。
ここまでは同じ会社でやるかどうかは別として結構どこのデザイン会社にもあるようなお仕事なのかなと思うんですけど、
うちがちょっと変わっているのがメディアのチームがあるということでラジオ番組を作ったりイベントを作ったり、ブッキングというタレントさんとかにイベントや番組に出ていただけないかと、交渉をするようなことをしています。
これをデザイン会社が一部門で事業の一環としている企業は日本でうちだけじゃないかと。


田中:
おお!唯一の。


島:
と言ってもそこにうまみがあるかっていうと特にないんですけど。(笑)


田中:
(笑)


島:
あと会社でいま一番増えているお仕事は企業ブランディングです。
「ブランディングってなんじゃい?」というようなメインバンクを信用金庫にしているような中小企業さんのブランディングに特化して力を入れています。


田中:
ROOM810さんはアルファベットのROOMと数字で810と書くんですよね。
お名前からしてちょっとかわいいかんじですね。


島:
領収書のときに全然聞き取ってもらえなくて。


田中:
あ〜たしかに。(笑)


島:
帽子になったり。


田中:
帽子?


島:
ハットになったり


田中:
なるほど!ROOMハットさん(笑)


島:
なかなか伝わらないですね。
我々のことよくROOMさんって呼ぶ会社さんもよくあるんですけれども、
たぶん正確な読み方をご存じないと思っていて。


田中:
この810はどういう風に読むんだろうっていう・・・


島:
そうですそうです。


田中:
先ほどやられている事業で企業のブランディングっていう風におっしゃっていましたけどなんとなく中小企業でも「やっぱりそういうことって大事だよね」っていう流れになってきていますよね。


島:
特にこのコロナ禍で「なにか打開策を」というご相談をいただいたりとか、
こういう時なんでちょっと腰を落ち着けて何か未来に向けてやるしかないといったかんじで多いですね。


田中:
お客さんと会える機会が減ったからっていうのもあるんですかね?


島:
そうですね。
これまで実際にお会いして営業活動をしたりとか、商品をお見せしたりっていう活動ができなくなっているなかで、離れていても商品やサービスの魅力が伝わるような強みを出したいというような形でのご相談が多いかと思いますね。


田中:
ROOM810さんとは城北信用金庫のお仕事としてカフェとインキュベーションオフィスの一体施設「COSA ON」のデザインをお願いしてご一緒させていただいたんですよね。
そしてその「COSA ON」のテナントにROOM810の丸山社長が立ち上げた任意団体の「TOKYO L.O.C.A.L」さんにカフェとして入居してもらってるんですよね。

ROOM810さんのお仕事とTOKYO L.O.C.A.Lさんのお仕事では実際に島さんがやられている業務はどんなものがあるんでしょうか?


島:
狭い範囲でいうとグラフィックチームのリーダーということになっているのでROOM810が作るクライアントさんの広告だとかWEBだったり、紙だったりなんでもそうですけど全部のクリエイティブを見ていて、自分でも作っているのがひとつの柱のお仕事です。

先ほど言ったブランディングも自分が主軸になっているお仕事なので、クライアントである企業さんやその会社の商品の課題をヒアリングして問題解決の形とか成長の形を見つけて、すぐには解決するものではないので1年単位とかで計画を立てて一緒に進めていく、と。

最終的に「デザインといったらROOM810だよね」みたいに言われるようになるとブランドとして認知されていることになるので、名指しされる存在になるというんですかね?そういう風になると自社ブランディングはいったん完成だと思うので、それを目指すのがいまのメインの業務なのかなと。

あとおまけとしては、うちデザイン会社なのに営業マンとか営業活動が存在しない、ほぼデザイナーだけの会社なんですね。
なのですべてのお仕事は紹介とか、口コミというかWEBサイトやSNSからのお問い合わせで成り立っています。
そこが止まると死んでしまう感じになるのでROOM810としてのホームページだとかSNSだとかそこに掲載されてる文章とか会社としての見せ方みたいな自社の広報・宣伝業務はだいたいすべて僕が担当しているので、クライアント向けのグラフィックとブランディングと自社の広報・宣伝と自社のブランディングというところがぼくの仕事ですね。


田中:

営業さんいらっしゃらないんですね!?


島:
そうですね!
来てくださるなら全然ウェルカムですけどそういう話をあんまり聞かないです。(笑)


田中:
(笑)
あらためて聞いてちょっとびっくりしました!


島:
コロナ禍になって営業がいなかったなと改めてびっくりしたというか・・・
営業活動がそぐわない業種ではないと思うんですけど。


田中:
結構デザイン会社さんも営業さんいますもんね!


島:
そうですね。
WEBの会社さんなんか営業と制作に分かれたりしてると思うんですけど、なんなんでしょうね。
ぼくも逆に知りたいくらいで、だれかいてもいいのに。(笑)


田中:
(笑)
でも島さんがROOM810のブランディングをしっかりやってらっしゃるから営業さんがいなくても成り立ってるってことですよね!


島:
今まではなんとかやって来られてるっていう。


田中:
ROOM810さんにお邪魔させていただいたときに、オフィスのデザインが素敵だと感じたんですが、あれもみなさんでやられてるんですよね?


島:
オフィスとしてはもう使われていなかったビルだと思うんですけど、オーナーさんのご厚意で「自由に改装していいよ」と言っていただいて。
とはいえ工事費もそんなにかけられないので、ぼくなんか専門知識も全然ないですけどペンキ塗ったりタイル貼ったり、従業員みんなでしました。


田中:
えー!


島:
本当に自分でやると危なそうなところだけ専門の方さんにお願いして。
6年前に手作りで作ったオフィスなので・・・


田中:
でもあのオフィスを見るとROOM810さんが作ってくれるものがわかりますよね。


島:
好みは分かれると思うんですけど、結構そういう風に言っていただけて。
そういう風に言っていただけるときはありがたいというか、そういう風に思っていただける方とお仕事させてもらうことが多いですね。


田中:
オフィスもそうなんですけど、社員の皆さんも個性的なイメージが強くてですね、
特にアフロがトレードマークの丸山社長なんてもうまさしく、町屋でアフロといえば!な印象があるんですけれども、島さんから見て社員さんたちのイメージってどんな感じですか?


島:
丸山はアイコン的にもわかりやすいというか・・・町屋にアフロの人が意外と何人かいるんですけれども・・・


田中:
丸山社長以外にもいらっしゃるんですか!?


島:
そうなんです。
僕もたまに「あっ!」と思うと違う人だったりして。


田中:
後ろ姿とかでですか?


島:
そうですそうです。
基本的にデザイン会社なんで自由にみんなで集まってっていう感じなので、割とその後も知り合いが集まっていて友人の彼女さんとか、誰かの後輩だとかっていう風に集まって増えてきた会社なので・・・


田中:
ツテで入られる方が多いんですね。


島:
良く言えばファミリーみたいな感じで、ゆる〜いファミリーみたいな感じで仲良くはやってるのかな、と思います。


田中:
皆さんすごく仲が良さそうなイメージがあって、風通しが良さそうなイメージがありますね!


島:
割とデザインって人それぞれだとは思うんですけど、業種的に机にへばりついて作業している人はしているので。


田中:
黙々と・・・


島:
暗いかどうかはわかりませんけどおとなしい方はおとなしい職種だと思うので、なるべくみんなで賑やかに、フレンドリーに会社の中ではやってこうかなという感じで僕らは思っています。
最近2、30代の若い子も増えてきたので上のおじさんが弾けているだけなのかもしれないという不安感は常に持ちながら(笑)


田中:
(笑)


島:
浮いてるんじゃないかな?とか思いながらもみんなで仲良くやろうかなっていう。


田中:
(笑)

島さんがROOM810に入ったきっかけとかも聞かせてもらってもいいですか?


島:
もともと代表の丸山とは友人同士で15〜6年前から知り合いなんですけど、ROOM810っていう会社が出来た頃に僕はほかの会社で役員をしていました。
特に仕事に不満があったわけでもなくすごく充実してたので・・・友達なのでうちの会社に入ったら?とかそういう話はしたりしてたんですけど、お互い全然本気じゃないというか、ずっと友人関係でした。

ROOM810は創業して1年くらいは当時まだ人数も少なかったので810号室の丸山の自宅の1室をオフィスにしていて・・・


田中:
へ〜ご自宅の部屋番号だったんですね!


島:
そうですね。こんな大きい声で言っていいのか。
まあ多分大丈夫だと思いますけど(笑)


田中:
場合によっては・・・(笑)


島:
そうですね。
丸山たちは自宅でずっと人数も少ない中仕事をしていて、1年くらい経ってから相談があるっていうのでなんだろうなと思って行ったら「島健、俺ダメだ。家だとテレビ見ちゃう」


田中:
(笑)


島:
っていうんですよ。
「それはダメだね」って言ったんですけどその時もWBCの決勝か何か見ながらで・・・


田中:
(笑)


島:
これはダメだなっていうことになって、
ROOM810とオフィスを共同で借りて、別の会社なんですけどお昼を一緒に食べたりとか同じ空間で机を並べて仲良くやったりしていました。

その後僕が病気になってちょっと間隔空くんですけど、もう一回本格的に仕事に復帰しようかなというタイミングでちょうど丸山の結婚式があったんですね。
その時に生い立ちを辿るようなプロフィールビデオとか、友人代表でスピーチしてくれないかと言われて。
ちょうど自分も結婚を考えていたタイミングだったので、人生の転機みたいなのを意識しながらプロフィールビデオを作っていたらサブミリナル効果というか・・・頭がだんだん混乱してきて、僕が丸山と結婚するんじゃないか?みたいな。


田中:
(笑)


島:
頭おかしくなってきちゃって。


田中:
刷り込まれちゃったんですね。


島:
そうですね。(笑)
で、気づいたら彼の結婚式で「彼はこういうところもありますけど、すごいいいやつで・・・奥さんも支えると思うんですけど、僕も支えるんで」みたいなスピーチをしていました。
なんかあれ?これ?ROOM810に入ろうとしているな?みたいな。
しかも人の結婚式で宣言してるな?みたいな感じになって、司会の人からも「大丈夫ですか!?サプライズですね!」と。


田中:
その場でそのスピーチの時におっしゃられたっていうことですね。


島:
で、まあ言ったんで入社をするっていう。
転職のエピソードとしては全然使い物にならないと思うんですけど、それで今に至る感じですね。


田中:
(笑)
すごいですね!結婚式で丸山社長にプロポーズされたみたいな!


島:
こっちがプロポーズしたことになるんですかね。
そこ突き詰めて話したことないですけど(笑)


田中:
(笑)
丸山社長と島さんっていう組み合わせが意外なイメージがあって何きっかけで二人はお知り合いになったんですか?


島:
僕の前職の会社が福岡に本社があって、社長が定期的に東京に出てくる時用にマンションを借りていて、それが町屋だったんですよ。
で、町屋の「ROJI」っていう駅前のバーで社長が一人で飲んでるとそこで丸山も一人で飲んでいて、そこで話すようになったみたいで。
社長は僕よりだいぶ歳上なんですけど、「うちにもお前と同じくらいの年齢のやつがおるんや、今度紹介するわ!」みたいな感じで引き合わされたのがきっかけですね。


田中:
へ〜そういう出会いだったんですね。
じゃあお二人の出会いも町屋だったんですね!


島:
そうですね!その時初めて町屋にきたと思いますね。


田中:
お二人はタイプが全然違うじゃないですか。
なのでずっと不思議だったので知ることができて私は嬉しいです。


島:
結構最初からあんな感じでお互い何も変わってないと思うので、最初の一件目ですごい盛り上がって楽しかったんですけど、
当時彼がハマってたラーメン屋さんがあって「この後どうしてもお前に食わせたいラーメンやがあるんだ!」って言って2件目行こうと。
当時僕目黒に住んでたんで、これ行ったらもう帰れないなと思って朝まで行くやつかなと。
まあでもせっかく盛り上がってるし、ラーメン屋さん行って朝まで付き合おうと思って2件目行ったんですけど、彼ラーメン出てくる前に寝てましたからね。


田中:
(笑)


島:
食べないんかい!?と思って(笑)


田中:
せっかく行ったのに(笑)


島:
(笑)
家も知らないんで、当時。


田中:
送ってもいけない(笑)


島:
で、僕も終電無くなって10分後くらいの超微妙な時間で、
「ロングの客ですよ、運転手さん」とか言いながら帰るっていう。


田中:
喜ばれちゃうやつですね(笑)


島:
そう(笑)
それはすごい覚えてるんですけど・・・


田中:
そんな始まりがあったんですね〜。



新しいアイディアを生み出す習慣と仕事を楽しむ方法



田中:
今までこの番組では会社の社長さんをゲストとしてお呼びしていたのですが、今回は初めて代表ではない方をお呼びしています。
世の中的には会社の経営者ではない方もたくさんいらっしゃるということで、今回は会社勤めでのライフワークの実現というところに重点を置いて、お話を聞かせていただきます。

会社での仕事を充実させるためには会社の目的に沿った上で自分がやりたいことをやるというのが重要だと私は思うんですね、
それをやろうとすると、社内で新しい企画や事業を提案することもあると思うのですが、新しいアイデアを見つけるために島さんが日頃から意識して取り組まれていることは何かありますか?


島:
すごい壮大なテーマ(笑)


田中:
すみません無茶ぶりを(笑)


島:
企画を作ることが多いんですけど、企画って結局人の心を動かすことだと思います。
「怒る」でも「泣く」でも良いのでちゃんと自分の感情を動かして、一つずつのアイデアに向き合うというか、共感するというのが大事だと思っています。

基本的にデザイナーさんって感情が動かない人には向いていない仕事だと思います。
日本でデザイナーというと、おしゃれなものや、洗練されたビジュアルをつくる、見た目の仕事だと思われている節があるんですけど、デザインって関係性をつくることだと思うんですよ。


田中:
関係性をつくること?


島:
はい。
基本的に理解力がある人にデザイナーさんの適正はあると思っていて、柔らかく言うと共感力。あと自分が共感しているだけでは意味がないので、それを翻訳して他の人に表現できる力も大切です。

お店をつくるにしても、ホームページをつくるにしても、イベントをつくるにしてもクライアントさんがどういうビジネスをしていて、その商品やサービスの何が強みで、何が弱みで、何に悩んでいるのか、お客さんに届けたいメッセージは何なのか、それが理解できないと何もつくれません。
理解力、共感力、翻訳して表現する力、この辺りがデザイナーさんのスキルセットだと思います。
これはツールを選ばないスキルで、一回身に付くと何にでも使えると思っています。

仮に田中さんがご自身の魅力を誰かに伝えたいと思っていて、それをお仕事として我々のところに持って来られたとします。
田中さんの魅力を理解して、文章が得意だったら田中さんのキャッチコピーを作ったりブログで発信したりとか、写真が得意だったら田中さんの魅力的な写真を撮ってそれを紙やWebにしたりとか、
結果的に田中さんの魅力が広く伝われば僕たちが田中さんをデザインした、ということになるので作った画像とか紙はあくまでも成果物で、僕らはデザインとは呼ばないんです。
デザインする対象はあくまでも田中さんなんですね。

僕らが関わって田中さんが変わるということに意味があって、それって結局関係性をつくってるってことなんじゃないかと思います。
僕らの仕事は全て共感から始まりますが共感だけしていても仕方がないので、つっこみどころがあったり、「これちょっとおかしくない?僕らが関わればもっと面白くなる気がする。」と思ったところにお仕事があると思ってますね。

電車に乗ってて「おもしろい広告だな~」って感動したり、逆に「なんてダサい広告なんだ。誰がつくっとんねん。何で俺にやらしてくれなかったんだよ。」っていう怒りだとか、そういう感情を動かしていると電車に乗ってる5分10分の時間でも、何かしら気づきはある環境だと思います。
よくデザイナーさんって刺激を受けるのに美術館に行きましたとか、アートみてきましたとか言いますけど僕はデザイン科とかを出た人間ではないのでそういうのをちょっと馬鹿にしていて(笑)


田中:
(笑)


島:
自分はいま子供が小さいのでなかなか美術館に行くって訳にもいかないし、町工場のおじさんがお客さんにいるんですけど、その方に対していまパリで流行ってるものとかアートの話って無価値じゃないですか。


田中:
ちょっとピンとこないかもしれないですね。


島:
かっこよくはないかもしれないけどこの前電車で見たとかそういう話の方が伝わるかなって。
そういう風に刺激を受けて心動かされた時間っていうのが企画とかアイデアの元になってるのかなと思います。
なんか電車乗る話してますけど(笑)日常で感情を動かすのが大事だなと思います。


田中:
ありがとうございます。
じゃあ意識的に電車に乗る、ということで(笑)


島:
・・・ごめんなさい、例え間違えました(笑)


田中:
いろんなものを見たり、クライアントさんに共感して寄り添うことが大事ということですよね。(笑)


島:
はい。わかりやすいまとめをありがとうございます。(笑)


田中:
(笑)

会社で色々な事業をされていると思うんですけど一つひとつ行っていく中で当初の目的がブレてきてしまうことってあると思うんですね。
そういう時、島さん流の軌道修正の方法があれば是非教えていただきたいです。


島:
まるでうちの会社の中をご覧になっているかのような(笑)

デザイナーさんって共感力もあるし、アイデア豊富だし、すぐブレるんですよ。
アジェンダみたいなものを決めて、カッチリ会議してブレストしていっても誰かがちょっとおもしろいアイデアを出すと前提条件を全部バーンって忘れて。


田中:
「それいいね!」みたいな(笑)


島:
「おもしろいね!やろうやろう!」とか言って(笑)
代表の丸山が予算を無視したり、実現の可能性が全然無い様なところに率先して走っていったりするので、僕はそこで「待てい!」って言う役割だと思ってるんですけど。


田中:
そんなイメージがあります(笑)


島:
構造上ブレやすい業種だと思っているので全否定する訳じゃないですし、なるべく出たアイデアは活かしながらゴールには辿り着きたいんですけど、多分デザインとかアイデアってみんなの意見をちょっとずつ取った折衷案が一番つまらないんですよね。
クライアントさんの意見もちょっと入れて、社長がこうおっしゃってるんで、うちの意見もちょっと入れて・・・モダンなような古き良き地味であり派手であり・・・みたいなものって無価値ですし、存在しないと思っているので。

平等に意見も聞くんですけど平等に依怙贔屓もして誰かの尖っている意見を残したりとか場合によっては自分の意見を取り下げても良いし、何かエッジを効かすという。
軌道修正って自分の方向に戻すイメージがあるんですけど、自分の方向は置いておいて何か尖ったところは残ってますか?というのが一番心掛けないとまずいところだと思っています。


田中:
ある程度そういった部分は残さないと、結果的に面白いものは生まれなくなってしまうんですね。


島:
カチッと線路の上を走ってもしょうがないところがあると思います。
脱線とおもしろさは紙一重で何でも修正すればいいとは思わないです。


田中:
共感力のあるデザイナーの方が多くいらっしゃるので、いろんなアイデアが出てきそうですもんね。


島:
アイデアは出ますね。
アイデアを出しているときが多分一番楽しい職種だとは思います。


田中:
そういうのは基本的に島さんがまとめられるんですか?


島:
自分の中ではまとめるのが自分の仕事だと思っているつもりなんですけど、他の人に伝わっているかどうかはちょっとわからないです。


田中:
皆さんそう思われていると思いますよ!


島:
真似しようとする人がいないのが辛いところですよね。


田中:
でも島さんが居るから皆さん安心されて任せられているんでしょうね。


島:
いやあ、録音して聞かせたい。


田中:
ここはカットせずに流しましょう(笑)

島さんには丸山社長や他のチームの部長の方々や下には部下の方々がいらっしゃると思うのですが、社内での関係性の築き方や意識されていることは何かありますか?


島:
社長も含めてチームリーダーは元々友達でもありまして。
対外的に友達とは言わないですけど当人同士は勿論、社内・外どちらでも「僕らは仲間ですよ」というのを可視化することは心掛けています。
タイプは全然違いますし、感性とか考え方もそれぞれで意見が合わないことも多々あるんですけど根本的なところで各々才能を認めていてリスペクトし合っている。


田中:
素敵ですね。


島:
いま素敵な風に言いましたからね(笑)


田中:
それ聞くと本当に町屋のアベンジャーズみたいな感じですよ(笑)


島:
何が恥ずかしいって僕ら4人の「アベンジャーズ」っていうLINEグループがあるっていう(笑)


田中:
自分たちで!(笑)


島:
本物のアベンジャーズの画像を入れて(笑)
まあそれぐらい自分たちで暗示をかけていて、やり方は違っていても絶対あいつはやってくれるみたいな。

仕事としては部門として利害が一致しないことも多々あるんですけど、絶対敵対はしないっていうのを「EVERYDAY FRIDAY」っていうふわふわした言葉に乗せて、社内だけじゃなく社外にも出していって、ブレない、安心して任せられる会社だという雰囲気をちょっとでも出したいな、と。実際そういう感じは多少でているのかなと。
ここまではリーダー同士の話です。

うちの会社は個々で全然違う仕事をしていて僕のチームがロゴやホームページをつくっている横で、模型をつくって活発に議論しながら空間をデザインしている人がいて、その横には耳にヘッドフォンをして完全に音をシャットアウトした状態でラジオの編集をしてる子がいるんですよ。お互い無関心でいるのはすごい簡単なことなんです。
なのでコミュニケーションを密すぎるくらい取って濃厚接触する。

僕のチームは新入社員でもうちの会社がどこのラジオ局でラジオ番組をつくっているのか知っているし、僕のチームでフリーペーパーを作っているんですけど、フリーペーパーのデザインが仕上がったときの文章チェックは全員に回して、
例えばラジオ番組のADの子が「島さんこの漢字間違ってないですか?」って教えてくれたり、何かミスがあったらみんなでシールを貼りに行くとか、インテリアのチームで人手が足りなければつなぎを着て現場に行くとか、そういう気持ちでみんなやってるのかなと思います。

ひょっとしたら自分の仕事だけをずっとしていたいという人には向いてないかもしれないんですけどリーダー同士だけが団結しても仕方がなくて、そういうお節介みたいな関わりが会社の一体感を生んでくれるんじゃないかな、と僕らは思ってます。
意外とそういう自分の本来の仕事じゃないことをやっているときにアイデアが出たり、気づきがあったりもします。


田中:
そうですよね。
全然違うところで思いついたりしますもんね。


島:
ペンキってこう塗るんだ!とか、普通だとこの歳になってあまり触れることのない気づきがありますね。
部署同士がコラボしてなんぼの会社だと思うのでそういうのはすごく大切にしたいなと思ってますね。


田中:
先程「 Everyday Friday」という言葉が出ましたが、これは企業のキャッチコピーですか?


島:
そうですね。


田中:
毎日が金曜日ということで、これはどういった意味が込められてるんですか?


島:
みんなそれぞれ心の中で定義を決めてます。
月曜日の夜から今日金曜日だもんねって言って飲みに行くとき、便利に使われることもありますし。(笑)
とにかく「楽しい」というのを前面に出すのが我々の会社。日本で一番お給料が高い会社じゃないだろうし、人数の多い会社でもないでしょう。
全員にとって楽しいかは別として、うちの会社の人にとって「楽しい」という雰囲気を出そう、という概念を「 Everyday Friday」と言っています(笑)


田中:
言語化されたんですね!
ROOM810の皆さん、実際すごい楽しそうに見えますもん。


島:
楽しそうに見えることだけに命をかけてる(笑)


田中:
きっと中にはご苦労とかも沢山あると思いますけど、みなさんキラキラお仕事されてるなと思います。


島:
頼む相手の人が歯を食いしばってしんどそうな顔でお仕事してたら、頼みたくないじゃないですか。


田中:
そうですね。
ちょっとやめておこうかなってなりますね。


島:
この人悩み多そうだなっていう。
任してくださいよ!という感じを信頼感という言葉を使わないで、楽しくやってるんで!というところにかけてるんですよね。


田中:
そういうところで伝えていくってことですね。


島:
そうですね。
伝わってるといいんですけどね。

あと、社長がアフロな時点でそっちに行くしかないですよね(笑)
なかなかクールで知的な、ロジック命みたいなイメージを出そうと思っても、アフロじゃねーか!みたいな(笑)


田中:
確かにアフロの方で堅苦しい会社だとイメージが結びつかないですね(笑)


島:
イメージが裏切られるというか(笑)
まあ部下として緊張感はありますよね。アフロに謝らせる訳にはいかないっていう。


田中:
「なんでその頭で来たんだ!」みたいな(笑)


島:
僕の部下の後ろには僕がいますけど、僕が失敗したらもうアフロしか居ないですからね。うっすい壁が後ろにあるので、この人土下座させたら違う意味でまずいなっていう感覚は持ってますね。


田中:
人によっては面白い人が来てくれたと思ってくれそうですけどね。


島:
そこで場が和むかっていうのは結構ギャンブルですよね(笑)


田中:
確かに賭けではありそうですね(笑)

他に仕事を楽しむために何か心がけていることはありますか?


島:
中小企業を楽しむという気持ちですかね。
中小企業ってチャンスしかないと思っていて、起業したいとか、自分の力を伸ばしたいって人こそ中小企業に入るべきだと思ってます。

勿論大きい会社の方が会社としてできることは沢山あって、そこはすごく羨ましいなと思うんですけど、一方で自分の会社の社長さんに会うのも簡単ではなかったりとか、会社で何か一番を取るのも、ひょっとしたら同期の中で一番を取るのも簡単ではないような会社って少なくないと思うんですね。

僕たち中小企業って何かのトップになるのがものすごくイージーで、そもそも会社を運営する上で最低限の知識しかないので、総務部、広報部、企画部やITに関する部署がない。
そういうのが当たり前なのでちょっと出しゃばるとすぐその担当になっちゃうんですよ。


田中:
言った人がなっちゃうみたいな。


島:
ちょっとパソコンに詳しかったり、ネットワークの知識があったりすると社員全員からITのエキスパートみたいな、魔法使いみたいな扱いを受けるんですよ。
多分実際そんなに詳しくなくてもパソコン操作はあいつに聞けってなると後は環境と慣れが育ててくれる、実力は後から付いてくる。
やる気とちょっとの勇気があって、自分の得意分野を伸ばしたい、増やしたいみたいな人には結構良い環境だと思います。

新しい仕事や事業に挑戦してみたいとか、社内にそれを提案したいと思ったら「それ、俺詳しいっすよ」って言うだけなんですよ。


田中:
口から出たまことみたいな。


島:
嘘は勿論いけないのでちゃんと努力しないと駄目ですけど、知ったかぶりみたいなのはありだと思っていて、
「俺それ詳しいっすよ(3ヶ月後には)」っていう後ろの部分を心の中で言ってみたり、これが僕の基本的な仕事スタンスというか。


田中:
ちょっと盛り気味でいくってことですね!


島:
そうですね。
自分自身もそうですし、会社自身もそういうスタンスでして。
仕事が降ってきたとか、押しつけられたって思うと疲れちゃうと思うので成長の機会がきたとか、僕の知らないわくわくする仕事がきた、みたいな気持ちで向き合えるのが楽しみ方なのかなと思っています。


田中:
捉え方ですよね。


島:
そうですね。
あとキャパオーバーになったらちゃんとギブアップするのも大事だと思っています。
僕いますごいやる気に満ちあふれた積極性のかたまりみたいな発言してますけど、割と自分自身が会社全体に向けて自分はギブアップだってハッキリ出す方です。
そこはちゃんと言わないと本当に身体壊しちゃうので。


田中:
そうやって伝えることで助け合えますもんね。


島:
そうですね。そうありたいです。



企業や商品の欠点を味に。今の企業コミュニケーションに大切なのは等身大の自分。


田中:
島さんが携わった文章や制作物って、なんとなく島さんらしさを感じるんですね。
まさに顔が浮かぶようなお仕事をされていて、且つクライアントの意図と異なることはなくそれをやられていらっしゃると思います。
自分らしいお仕事をするために、何か意識していることはありますか?


島:
僕たちのお仕事の形って徐々に変わってきてると思っていて、今はSNSもあればインターネットで物を買うのも当たり前になってきて、皆さん商品とかサービスを購入したり何か選ぶって時に口コミや使ってみた人の感想、自分以外の人の意見をすごく求めてると思うんですよね。
クライアントさんに聞いた商品の良いところをデカデカと赤い文字で書く広告ってもう成立してないというか。

ラーメン屋さんに行っても店主のこだわりが壁に筆字で書いてあったらそれでラーメンを美味しく感じるのかって言わると別にそんなことはないと。
でも誰かがインスタグラムに載せてるのを見ると無性に食べたくなる。

そういう傾向の中で、クライアントさんの意見を全否定するのは駄目ですけど、購入される方と多少同じ目線に立って、自分自身が面白いと思ったものを宣伝やPRするっていうのが大事なのかなと。
クライアントさんっていうのはその商品を開発したり販売されている当事者だと思うんですけど、そういう当事者じゃないからこそ見つけられる面白いポイントとか、魅力的なポイントがあると思っていて、それを伝えるのが僕たちの仕事だと思っています。

ただ、口コミって感想でも何でも誰が言ってるかが大事じゃないですか。
仮に僕と田中さんが同僚だったとして田中さんから「会社の近所のラーメン屋さんは食べ切れないぐらい量が多いです。すごいボリュームでした。」って言われても僕は信じないですよね。
明らかに僕の方がでかくてデブで沢山食べそうだから、それって田中さんが小食なだけじゃんって話じゃないですか。
ネットで服を買うのも、僕170cmちょっとなんですけどMサイズなのかLサイズなのか悩んだときに185cm100kgの人の口コミって無価値なんですよね。

昔は大量生産・大量消費で「日本中のみんなが必要な商品です」っていう広告が良しとされていたり、それなりに売れたと思うんですけど今はやっぱり私だけの商品だ!見つけた!みたいな感覚を持ってもらうのが購入のフックになると一般的に言われているんですね。


田中:
その時のときめきですよね。


島:
そうそうそうです。

ROOM810です!とか島です!とか言う必要は無いですけど、宣伝してる僕らの人間性が若干透けて見えるとか、ある程度自分を立てて人柄とか感性を立ててブランディングするのはマストなんじゃないかなと勝手に思っていて。

別に本当の自分を全てさらけ出す必要はなくて、広告用に最適化された等身大の自分を設定して大事なのは嘘をつかないこと。

本当に自分が面白いと思うポイントがあって、お客さんとの間に僕がそれを出すのを許してもらえる信頼関係があるというのが一番大事なのかなと思います。

その結果ちゃんと面白いと思うものが世の中に出るとお客さんにとってもメリットがあるし最終的に広告とか企画とか文章を見た人が、僕らのことを知っている人なら顔が浮かぶとか知らない人はこれ誰が作ったんだろう?と思ってもらえてみんな得する、みたいなことは心がけてますね。


田中:
表現を見たときになんとなくその人が透けて見えるとこの人ちょっと自分と近いかなとか、これはちょっと違う人をターゲットにしてるのかな、というのがわかるのですごく効果的になりそうですもんね。


島:
いろんな手段があると思うのでよくTwitterとかでも企業の中の人がいて、それが面白いって話題になることあるじゃないですか。
あれって別にTwitterが面白いとか、Twitterが広報に効果的なんじゃなくて、その人柄とか人格が透けて見えるのがすごく魅力的なんだと思います。


田中:
島さんの書かれる文章も、なんかちょっとクスっときますよね。


島:
笑っていただけてるかわかんないですけど、それが無くなるとね。


田中:
いつもにやっとしながら見てます(笑)


島:
こんな対面で言われると恥ずかしいです(笑)
ありがとうございます(笑)


田中:
島さんは部長としてお仕事をされていらっしゃるじゃないですか。
部下の方にクリエイティブなお仕事の依頼をして、もし意図と違ったものがあがってきた時、どんな風に指示をされていますか?


島:
スタッフに恵まれているのでそういったことはあまり無いんですよね。
少し話が遠回りするかもしれないですけど、僕らがやっているグラフィック・インテリア・メディアという仕事は共通点があって、どれもやりがいを搾取されやすいジャンルなんです。


田中:
確かにそうですね。


島:
ラジオ番組つくりたい、空間デザインしたい、広告デザインしたいとか、どれもなりたくて仕方ない人が一定数いるんですよ。
そのくせに小規模な会社が多くて狭き門というか、安定的に新卒採用をしていない職種なんですね。
どれもクオリティを突き詰めていくと無限に時間が使えるので単価とか関係なしに名刺のデザイン20時間やろうと思えば出来るんですよ。
なので比較的低い金額で長時間労働になりやすい仕事なのかなと思っています。

ROOM810はそういうところの殻を破るというか、集まって強いものを出し合えばそういうのも解消できるんじゃないか、と思って始まった会社なんですけどただ集まっただけだと駄目なんですね。
例えばクライアントさんに会うとすっごいナチュラルに悪気もなく「じゃあとりあえず、デザイン案を3パターン下さい。」って言われるんですよ。A~C案で選びたいと。
それだけ聞くとすごく普通に聞こえるんですけど、これって他のお仕事と比べると珍しいことですよね。

レストランに入って「お腹がすいたからとりあえずハンバーグとパスタとシチュー全部持ってきて下さい。来たらどれ食べるか選ぶわ。」って有り得ないんですね。
ただ僕らの業界ではそれが普通に起きていて。
僕たちの人生油断していると起きている時間の半分ぐらいが、渾身のA案に慣習的に付けているよくわからないB案とC案をつくることに時間が使われているのかもしれない、と思うと結構ぞっとします。


田中:
3倍の時間がかかっちゃいますもんね。


島:
そうなんですよね。

ラクしたい訳じゃなくて誰も得しないので、その時間をまずは無くそうってなって。
とっておきのクオリティのものがやっつけのB案とかC案から出ることって有り得ないんですよ、渾身の力でつくった物が一番良いので。
ただ下手するとそのB案C案が選ばれたりとかするので、まずはその3案つくるのを断ることから始めようかなと。
もし3パターンくれって言われたら「うちはとっておきのA案と、ゴミみたいなB案C案をつくる会社なんですけど、大丈夫ですか?その代わりうちのA案はすごいですよ。」みたいな(笑)


田中:
とびきりのA案だと(笑)


島:
どうしても3パターンつくらなきゃいけないって言われたら、もう意地になってABCって言わずに甲乙丙みたいな(笑)


田中:
自ら言っていくっていう(笑)


島:
もう優劣出してやろうと(笑)

今はほぼA案しかつくっていないので、その分A案に時間をかけて深く突き詰めて作ってはいるはずです。


田中:
ROOM810さんはブランディングがすごく上手なイメージがあります。
良いところを正確に伝えてらっしゃって、知れば知るほど親近感が沸いて魅力的に感じる会社さんだなと思っています。

それがまさしくブランディングの効果なんだろうなと感じているんですけれども、
企業ブランディングをするときに会社の思いやお考えを正しく伝える方法や、会社を客観視する方法があれば教えていただきたいです。
なかなか内側からだと本当の良いところって見えにくかったりしませんか?


島:
そうですね。

逆説的に言うと本当の良いところを発見するというよりはブランディングって良いところだけ並べても駄目です。張りぼてはすぐバレちゃうので。
どちらかというと最初に駄目なところ、弱いところをしっかり聞いてそれを隠さずにちゃんと出す。
欠点もあるけどそれも味だな、尖ってて逆に良いな、みたいな見せ方をするのが最終的なゴールなんですよ。

なので、最初はその会社さんとか商品の悪いところ、欠点、悩みとかを教えてもらえる関係性をクライアントさんとつくるというのが一番大事です。

あとは聞き出すだけじゃなくて、クライアントさんにとっては隠したい、恥ずかしい部分をさらけ出すというか、外に出しても良いよっていう許可を頂けるように懐に入って信頼してもらう。


田中:
信頼関係を築くってことですね。


島:
先月、コロナ期間に宿泊客がゼロになっちゃったホテルのブランディングのお仕事をさせていただいたんですね。
お客さんに来て欲しい気持ちはあるけど、今お客さんがゼロだってことはあんまり言いたくないっていう。まあ当たり前の話だと思うんですけど、なんか恥ずかしいというか。
でもそこをあえて「今日もお客さんゼロでした!」って言おうと。
苦しい状況を開示して、でもお涙頂戴で同情を買うんじゃなくて、少し面白い方向で話題を呼ぼう、プレスリリース出そうって話になったんです。

SNSでうちのホテルを紹介してくれるって約束してくれるだけで、フォロワー数関係なく誰でも宿泊無料だと、なんて言ったって今宿泊客がゼロなので三密とは無縁だと。
そういう打ち出し方でプレスリリースを出したら結構反響があって、二十万件ぐらいツイートやご紹介があったり、パンクするぐらい電話がかかってきて結果的に一部無料ですけど連日満室になったんです。

アイデア出してプレスリリース出したのは僕かもしれないですけど、凄かったのは僕じゃなくて、自分の恥ずかしいところを出しても良いと、宿泊無料でも良いと決断されたオーナーさんが一番凄いんです。
オーナーさんが自分の決断で自分のホテルをブランディングされたと思っていて僕は本当にちょっと後押ししただけ。
っていうのもこの仕事の面白いところだと思っています。

僕のちょっと凄いところは、後押しできるように懐に入り込んで仲良くなった。ただそれだけなんですよね。


田中:
島さんの人間力ですね。


島:
すごい偉そうに馴れ馴れしくはしました。


田中:
(笑)

確かにブランディングっていうとちょっと難しく聞こえますけど、例えば自分がこの人と友達になりたいな、異性で素敵だなと思うときって絶対良いところだけじゃないですもんね。
欠点や悪いところも味があって良いな、なんとかしてあげたいなと思ったりするじゃないですか。きっとそれに通じるものがありますよね。


島:
うちの丸山もよく異性に例えるんですけど、自分で自分の良いところを言って異性と仲良くなるってなかなか難しい話でやっぱり人が良いところを言ってくれて、自分では自分の駄目なところを言う、みたいな両面が大事だなと思います。


田中:
それが企業ブランディングにも繋がるんですね。


島:
最高なのは友達が言ってくれることですよね。
相手に直接自分をアピールするより、相手の友達が「あの人いいよね」って言ってくれるのが最高のパターンじゃないですか。

その関係を作るのがPRでそういうふうに持っていくっていう姑息な仕事をしています。(笑)


田中:
いやいや、素敵なお仕事です。



ツールや手段にとらわれずクライアントの魅力を広げていく



田中:
ROOM810さんは丸山社長をはじめ皆さん個性的でそれぞれ強みを持っていますよね。
社外から見ても「この人にこの仕事をお願いできたら素敵だな」って思ったりすることがあって、社員さんのブランディングも丁寧にされている印象があります。
会社としての社員ブランディングのお考えのについて聞かせてください。


島:
社員ブランディングというほど大げさなものではないんですけど、うち比較的若い会社で2、30代の社員が多いんですよ。


田中:
そうですよね。


島:
たぶんうちの社員も気づいてないと思うんですけど、ぼくも20代の頃ってあったんですよ。
で、あの~・・・


田中:
あ!島さんにってことですか!?


島:
そうですそうです


田中:
(笑)


島:
20代の頃って自分が聞いてきた音楽とか、見てきた映画とか着てる服とかで自分の個性が表現できると思っていて、一生懸命なにかを消費して自分のことをブランディングしてるつもりではあったんですけど、
ぼくみたいに40代のおじさんになるともう誰もぼくに好きな映画とか聞いてくれないんですよ。


田中:
(笑)


島:
もうおじさんって誰も興味ないんですよ。おじさん同士ですら興味なくて。
ぼくも別に丸山の好きな映画とか興味ないので、だから血糖値とか血圧とか体脂肪の話を。


田中:
(笑)
内に向いてくるんですね!


島:

そう。

自分の持ってる数字をぶつけ合うっていうか、そういう年代なのかなって思います。

若い社員には本人も気づいてないような、たとえばアニメがすきだとかキャラクターとかの話ではなくて、それはカルチャーや趣味の話をしているだけなので、そういうのじゃない個性とか性格みたいなものを見つけてそれをフックにさせる。
いずれ3、40代になったときにこうなるぞと。


田中:
(笑)


島:
お前にだれも興味なくなるぞと。偉そうですけど。(笑)
その時に向けた仕事上の個性とか性格をなるべく作る。
多少最初は捏造でもいいので。捏造というか、こちらからの強引なフリでもいいので、作っていきたいというか。
みんなそうだと思うんですけどコラボとかフューチャリングみたいなことってすきじゃないですか。特別扱いされるのってみんなすきだと思うので、なので人を育てようとか社内巻き込もうと思うとキャラを立てたり。無理におだてる必要はないですが。

僕らの仕事の場合だと「このレイアウトは緻密な性格の君にしか頼めないな」とか。

君とか言ったことないですけど(笑)


田中:
(笑)


島:
中小企業の人材不足をうまく逆手にとって「これやれんのはお前しかおらんやろ」みたいな。
なんなら社長に対しても同様で社長こき使うみたいな。


田中:
(笑)


島:
これが僕の思っている社員ブランディングでこれを繰り返していくことでキャラが濃いようなキャラが立った集団みたいなものがちょっとずつ出来上がっていくといいなあと。
雑用として頼むんじゃなくて「これコラボやで〜」みたいな、「今回のコラボはfeat.お前や」みたいな感じを出してくうちに「これは俺ですね!」とか言ってくるようになると、きたきた!!!みたいな笑


田中:
「これは俺の出番ですね」と。


島:
勝手にこっちが言ってるだけではダメで自分でそのうちプロデュースできるようになって人もプロデュースできるようなことを理想とはしています。


田中:
言われてうれしいものだとだんだんそっちに寄って行きますもんね、本人もなんとなく。


島:
そうですね。
こっちが強引に乗せてやってるところもありますけど、うち普通にデザイナーの子がモデルとして写真に写ったりとか結構する会社で「足長いからいけるんじゃん?」みたいなことやったりしているので、全部全部褒められた話じゃないかもしれない、ただ人がいないだけかもしれないですけど。
そこの方向に向かわなくてもよくて、なんか楽しいなって思ってもらえたり、自分にこういう個性があるんだと見つかるといいなと思っています。


田中:
そういう得意を見つけてあげられると仕事とのミスマッチも減りそうですよね。


島:
あんまりそっちに走っていかれても困るんですけど。


田中:
(笑)


島:
「モデルやりたいんでやめますね」とか言われても困るので(笑)
やりがいというよりは息抜きみたいなことができるといいなと。
自分が実力不足なんじゃないかとかつまんないことで悩むことが減ったらいいよなぁと思っています。


田中:
みんな絶対いいところがありますもんね。


島:
担任の先生みたいなこと言いますね(笑)


田中:
かえって平たくなっちゃいましたね(笑)


田中:
ROOM810さんは今までもWEBサイトなどでビジョンを掲げられてそれを実現されてらっしゃると思うんですけど、会社としては今後の展望ってどんなイメージをされてますか?


島:
実現してきたというか、実現できなかったことは隠してるっていうところがあるのであんまり展望っていうのは・・・(笑)

っていうのも一社員なのであんまり会社の展望っていうとあれですけど、デザインを成果物だとは思っていなくて、クライアントさんのことをデザインするというか関係性を作っていく、クライアントさんにとってのお客さんみたいな人との関係性を作っていくっていう表現手段っていうのは無限にあると思っているんですよ。

今は便宜上グラフィックとかインテリアとかメディアとか言って自分たちでラベリングしているところがあって、アウトプットの選択肢を狭めているというわけではないですがそういう状況だと思うんです。

クライアントさんにとって効果的だと思えばお客さんの代わりに文章書いてもいいし、街頭でティッシュ配ってもいいし、動画を作ってテレビCMを流してもいいし、何かレクチャーするとかで解決するのであれば講義をしてもいいし、アウトプットに制限を設けない存在になっていきたい。

今自分たちがたまたま持ってる部門にクライアントさんを誘導しているだけなので、そこまでいくと真のデザインというかブランディングができる会社になるというか。
広告代理店みたいになりたいわけではなくて、まぁなりたいと言ってなれるわけではないでしょうけど、代理じゃなくてクリエイティブは自分たちで作ると。

最初の話に戻りますけど共感が一番大事なのでメールとかで客がこう言ってますとか言っても伝わらないんですよ。自分が代理で何かを投げるんじゃなくて、面白がって自分で作るというかそういう会社でありたいなとは思っています。


田中:
続いて島さんご自身の展望についても聞かせてください。


島:
生まれて初めて聞かれた(笑)
そうですね個人の展望というか希望としてはとっとと家に帰りたいっていうのが(笑)


田中:
(笑)
毎日ですか?


島:
そう、数年来のテーマとしてあって。
子供が今3才と1才で可愛い盛りで、土日とか家いるとまだ「パパ大好き」とか言ってくれる年齢じゃないですか。
反抗期になる前になるべく子供と一緒にいる時間を、僕の宝物の思い出を増やしていきたい。

なので自分自身で何か実現したいとかこれを伸ばしたいとかっていう欲って今もう全然ないです。
今日話した内容でなくてもいいので、お客さんに共感して関係性作ったりとか、仕事を面白がるとか、アウトプットを選ばないそういうような人を増やしていきたい。
すごいおじいちゃんみたい。育てる話をしてる(笑)


田中:
(笑)


島:
うちの会社は荒川区にあるので荒川区でブランディングっていう言葉がもっと当たり前に聞こえるような、そういう社会を目指して頑張っていきたいというか。

うちが勝手に言ってるだけかもしれないですけど、荒川区のキャクターづけとして23区で唯一スタバがない区だみたいなことをいつも言っていて、ばかにしていると捉えられるかもしれないですけど、なんでも一番になるって大事じゃないですか。


田中:
そうですね。
唯一無二は大事ですよね。


島:
そうです。
なので本当にそういう気持ちは持っていて、ばかにしているとかではないんですよ。
荒川区もROOM810も何か一番になれるというか、ちょっと目立っているみたいなものを増やしていって、自分の周りのものというかお客さんであれ、社内の人間であれ、キャラクターみたいなものをつけていって結果として最終的に自分が早く家に帰れるようになると。


田中:
(笑)


島:
子煩悩キャラみたいなのを自分にはつけて打ち出していこうと。
そういう風に思っています(笑)


田中:
でもいいですね、アウトプットの手段を選ばないって。
そこがやっぱりあくまで手段ということなんですよね。


島:
そうですね。
最近みんなツールの話ばっかりするので。今Youtubeがどうとか、Instagramがどうのとか。それはツールでしかないと思っているので。
そういうのじゃないところでブランドを作るとか、人の役に立つみたいなことって違う概念なのかなと。


田中:
続きまして、これが最後の質問です。
この質問はこれからインタビューに答えてくださる方みなさんにお伺いするものです。
あなたのライフワークはなんですか?個々の取り組みに限定されたお話しではなく人生をかけて取り組んでいることや果たしたい目的を教えてください。


島:
人生をかけて(笑)
そうですね、僕は散々デザインとかブランディングって言ってきましたけど個人的なライフワークとしては編集。英語でいうとエディット。

ぼく社会人としてのキャリアのスタートが雑誌の編集者で、会社としての建前を抜きにすると自分は言葉っていうものを商品として生計を立ててきたと思っていて。
誰かのためにプレスリリース書いたりとか、誰かの会社が世間に広まっていくためのストーリーを書いたり、人の会社の商品に名前をつけたりとか。
言葉を発信し続けるお仕事をさせていただいているんですけど、実際に自分の意見として個人の名前を出したものってゼロでなんですよ。
人にはSNS更新しろとか会社PRしろとかいうんですけど自分のSNSなんて全く更新しないし、文章書くことは得意としてるんですけど自分の名義で小説書きたいとかそういう風には全く思わなくて。
人の会社をテーマにゴーストライター的なことを書けって言われたら全然できると思うんですけど、自分を表現するものとして言葉を使ってないのでそれって編集するってことなのかなと思っていて。

うちの丸山もそうですけど面白い社長さんとか、面白い商品やサービスってたくさんあると思うんですけど、自分自身で表現すると全然面白くないとか全然伝わらないってことは結構あるんですよね。


田中:
ちょっと勿体無いなぁと思うことありますもんね。


島:
それって客観性がないとできないのでそういうものを編集して伝えていきたいっていう欲がありますね。

ちょっと話が違うのかもしれないですけど、高校とか大学の同級生と久しぶりに会って飲んだりして久しぶりに盛り上がるというか思い出話を話すときに「あの時、俺こんな面白いこと言ってたよね、覚えてる!?」とかいう人っていないじゃないですか。
「あの時、お前こうだったよね」みたいに人が言ってくれるから、面白いというか。

なので僕の仕事ってお客さん全員に対して「あの時、お前こうだったよね」みたいなものを提供するという仕事なので、全く面白くないものを面白いって言ったら嘘だし誇大広告というか良くないですけど、面白いものを本人以外が編集して昇華させて表現して伝えてあげるっていうのが僕のライフワークだと思っています。

これって自分がないからできることというか、自分自身っていうのはどこまでも薄っぺらくて上っ面だけの存在に思っていて、バターナイフみたいに薄くのばすだけの人間がいてもいいのかなと思って編集をしているっていうのが自分のライフワークだと思っています。
ライフワークって何回言うんだ(笑)


田中:
(笑)
全然薄っぺらくなんかないですけどね。


島:
薄くのばすと言うか広げる。あ、広げるって言えばいいのか!


田中:
あ!広げる、いいですね!
広げるお仕事ですね!

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