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チームマネジメントの質の静かな大転換

リーダーの方々から届く質問で頻出するのは、「年上のベテラン部下をどのようにマネジメントすればいいでしょうか?」というものです。

年功序列で、定年が55歳だった30年前であれば常にリーダーのほうが年上であることがスタンダードでした。でもいまは、自分より経験値の高い年上のチームメンバーたち、場合によってはかつて自分の上司だったという人もいます。

また、未経験の異部門への人事異動の結果、メンバーたちのほうが業務知識が豊かで深いという場合も、これに類するケースだと言えるでしょう。

自分のほうが経験が浅く、日々の業務についてほとんど何も教えることがない、あるいはむしろ教えてもらう立場の中で、どうやってメンバーを導いていけばいいのでしょうか。

「指導する」こと自体が無理ゲーな時代

少し前までの時代には、リーダーがいつも必ずチームメンバーより優れていて、リーダーの指導のもとで一人ひとりが仕事をし、成果につなげてきました。正解はリーダーが持っていて、それにメンバーが従うというヒエラルキー型のマネジメントスタイルです。

このスタイルのもとでは、年上のベテラン部下に相対するには、リーダーがその人たちをうならせるすばらしい解を示し続ける必要があります。逆に、正解を出してくれないリーダーは信頼するに値しません。大丈夫なのか、この人で、と不安になります。

ところが、チームメンバーが年上かどうかにかかわらず、リーダーがメンバーを教え導くことができる領域は、どんどん狭まっているのが現実です。自分がかつて磨き上げてきた業務スキルは、新しいテクノロジーや価値観の出現によって年々、いや毎月陳腐化していきます。

ビジネスマンである以上、新しい情報や知識は最新のものを手に入れておくのは当然ですが、それをリーダー自身がすべて身につけて実戦レベルまで高めることは現実的ではない、と言わざるを得ないほど環境の変化は高速です。

現実がそうなのであれば、発想を転換してみてはどうでしょう?

メンバーの能力を信じて活かす

つまり、チームメンバーのほうが自分より優れていると仮定して、その能力を最大限に引き出し、自発的に仕事を進められるように支援するのがリーダーの役割である、と再定義してみるのです。

メンバーの答えと行動を引き出すマネジメントへ

そう捉えてみると、年上のベテランメンバーや自分の専門分野ではない領域のメンバーに対して、「正しい答え、らしきもの」をひねり出して指導する必要はありません。その仕事のスペシャリストであるメンバーたちに、持ち合わせている能力を最大限に活用して、ベストな解を見つけさせることが、リーダーのやるべき仕事です。

そして、リーダーとしてその結果に責任を取る姿勢を明確に示しておけば、メンバーは自らたどり着いた解に基づいて、心おきなく行動してくれます。その行動が成果につながってもつながらなくても、メンバーがそこから学習し次の仕事の質を高める支援をすることも、リーダーの重要な役割です。

いずれにしても、リーダーとして一人ひとりのメンバーの能力を信じて活かす覚悟が求められます。マネジメントは小手先のテクニックではなく、人間としての器を磨かなくてはいけない修行の道です。

ヒエラルキー型マネジメントスタイルの終焉

正しい答えがあって、そのとおりに間違いなくやることが求められるルーチン型の仕事が大半を占める職場であれば、ヒエラルキー型は実によく機能します。しかし、上述した職場環境や、仕事の質の変化を踏まえると、すでにヒエラルキー型マネジメントスタイルは機能しなくなっていると言っても過言ではないでしょう。

組織構造としては機能別組織のヒエラルキー型のチームであっても、実態としてメンバー支援型のマネジメントを機能させることが、これからの時代に生き残るために必須なのです。

すでに、「上司」「部下」ということば自体が陳腐化しています。上でも下でもなく、それぞれの持ち場で責任を持って自らの仕事の成果を最大化し、周囲のメンバーをレスペクトしながら切磋琢磨する、そんな職場がこれからの時代の主流になることでしょう。

ポストヒエラルキー型の新しいマネジメントスタイルを支えるインフラが「対話」です。次回はさらに対話の効果について考えていきましょう。