見出し画像

マネジメントに対話を埋め込むためのコツ

前回の記事で、対話において付加価値を生み出すには、まず相手のことを理解しようとするスタンスが必要であること、そこでオートクラインが起こり、新たな発想やアイデアが生まれるという話をしました。

これからの経営環境のなかでは、人と人とが対話することによって付加価値を生むことは最重要課題になっていきます。そうした付加価値が生まれる対話をマネジメントに埋め込むには、どんなコツがあるのでしょうか?

コツ1 対話する場を仕組みとして作ってしまう

リーダーがひとりでなんとかしようとしてもなかなかハードルは高いので、会社やチームとして、対話する「場」そのものを制度や仕組みとして作ってしまうことは、マネジメントに対話を埋め込むためのコツのひとつです。

そのひとつの例が、リーダーとメンバーが一対一で毎週あるいは隔週で対話を継続的に行う「1on1ミーティング」です。

数年前にyahoo社が全社的に1on1ミーティングを展開するようになったころから人事や組織の分野ではひとつのトレンドになっています。そのため、1on1ミーティングを制度として取り入れる企業も増えてきました。きちんとメンバーとの対話の時間を取っているかを、リーダーに対する評価項目にしているというケースもあります。

近年の職場環境の変化を受けて、意図的に対話する場を作らなくてはいけなくなったとも言えます。以前記述したとおり、働き方改革で労働時間そのものが減ったことによる多忙化や、リモートワークの普及でそもそも顔を合わせられなくなっていることを鑑みると、業務時間のなかに対話の時間を確保することは、付加価値を生むためにますます必要になってきているのです。

コツ2 緊急ではないが重要なテーマについて話す

通常の職場では、緊急度も重要度も高い業務に高い優先順位をふりあてて、そうした業務を前に進めたり完了させたりすることに意識が向いています。一定割合のリーダーの方々は、「わざわざ対話の時間なんて取らなくても、チームのメンバーとは日頃から仕事についてよく話していますから」とおっしゃるのですが、「よく話している」ことの大半は、この緊急かつ重要な業務の話です。

しかし、持続可能な組織を作り成果を上げ続けるためには、緊急ではないのだけれど重要なテーマについて、しっかり考えて手を打っておくことは必須です。そうしなければ、近い将来手の打ちようのない深刻な問題となって降りかかってきます。

例えば、リーダーが対話する担当者クラスであれば、

  • より高いレベルの業務を担当するためにどんなスキルを身につければよいか

  • 新人の育成のためにどんな受け入れ施策を用意すればよいか

  • 顧客を深く理解するためにどんなコミュニケーションを取ればよいのか

  • 現場の作業効率をよくするためにどんな改善策を打つべきなのか

といったような、いますぐなんとかしなくてはいけないわけではないけれど、ちょっと先の未来のために必要なテーマです。

こうしたことについて、メンバーがリーダーに話しながら考えを深め、なんらかの行動を起こしておけば、チームとしての基礎体力を強化することができます。

1on1ミーティングでは、もちろんプライベートな悩みも話してもいいのですが、まずは仕事そのものの質を高めることに資するテーマを選ぶべきだと私は考えています。仕事についての課題を話せないリーダーに対して、仕事以外のことを話しても単なる雑談になってしまう恐れがあるからです。

限られた貴重な業務時間を投資するのですから、仕事の質やスピードが上がるという成果につながらなければ、投資を回収できません。

コツ3 対話を行動を支援する軸として位置づける

せっかく継続的かつ定期的に対話をするのですから、単発の話をして「話してすっきりしました」だけで終わらせるのはもったいない話です。

まあそれでも価値はあるのですが、毎回の対話が終わるときには必ず、「次の対話のときまでにどんな行動をするのか」を決めて終えることをお勧めします。

次の対話までの時間が1週間から2週間あるわけですから、なんらかの行動として表現することが可能です。期限の決まった行動を約束していたなら、次の対話の場でその行動の状況や結果について話さなくてはならないことになります。そうすると、言いっぱなしにして行動に移さないことは心理的にハードルが高くなるので、行動する確度が上がります。

行動しなければ、1ミリも変化は起こりません。でも、行動さえすれば、成功するにせよ失敗するにせよ、そこから学ぶことができます。それは対話の時間の投資に対する十分なリターンにつながります。

対話を軸にPDCAを回していく

つまり、上図のように、対話の場で前回決めた行動を振り返り、改善点を検討した上で次の行動につなげていく、というPDCAのサイクルを作っていくのです。

こうすることで、対話すること自体が仕事の改善や前進につながっている実感を得ることができます。だから、メンバーもリーダー自身も、次の対話をしたくなってしまうのです。その結果、対話が継続します。

コツ4 チームメンバー自身が考える場にする

新入社員や経験の浅いメンバーを除いて、原則として、メンバー自身がテーマについて考えて自ら行動を決めるように対話を進めていきます。メンバーが自分の仕事について、話しながら考えて、よりよい解決策や行動計画を立てる時間にしていく、ということです。

そのためには、リーダーからメンバーに考える道筋を作る質問を投げかけて、メンバー自身の答えが出るまで、じっくりとつきあっていかなくてはなりません。

経験豊かなリーダーの頭の中では、質問を投げかけた瞬間にすでに自分なりの答えが出ています。自分の答えで十分に問題を解決できることはわかっています。そうすると、その答えを言いたくなるのは自然なことです。

でも、言いたくなるその思いは、一旦脇においてください。この対話の場は、メンバーが自分で答えを出せるように成長させる場なのですから、そこで答えを言ってしまったら、物事は前に進むでしょうけれど、メンバーの成長の機会を奪ってしまうことになるのです。

それだけでなく、「なんだ、結局リーダーが答えを言ってくれるんなら、自分は考える必要はないじゃないか。じゃあリーダーの答えに従っておこう」と依存的なメンバーを育ててしまうことになります。そうなると、なにか困ったことがあると「どうしたらいいですか?」とリーダーのところに答えを求めにやってくることになります。

答えを言いたくなる欲求を抑えて、沈黙に耐え、メンバーの答えを待つことは、人間としての器を問われる感じがします。マネジメントは修行の道である所以はここにあるのです。

対話によるマネジメントはマネジメントの質的な変化をもたらす

対話が埋め込まれたマネジメントが実現すると、メンバーが主体的に考えて行動を起こすチームに変化します。それは従来のヒエラルキー型のマネジメントとは質的に違うものです。リーダーとメンバー、あるいはメンバー同士の関係のありかたが再構築されることになります。

一体、何が従来のマネジメントにおける関係のありかたと違っているのか。それは次回お話ししましょう。