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宇多田ヒカルのライブに行った

先日、友人に誘われて、宇多田ヒカルのライブに行ってきた。

友人の友人が大ファンで、大激戦だったというチケットを多めに申し込んだところ当たったとのことで、昔から宇多田ヒカルを聴いていた友人と私に声をかけてくれたのだった。

気合を入れて、開演2時間前にさいたまスーパーアリーナに着いた我々は、グッズ売り場をまわり、フォトスポットをのぞき、ロッテリアのバーガーセットを食べ、準備万端の状態で開演を待った。

ざわざわしていた会場は開演時間に合わせてだんだんと静まり返り、「まだかなー」とみんなが思っているのが聞こえるくらい「待機」の雰囲気が流れ始めた。そして、ぱっと会場が暗転すると、真っ暗闇の大きな空間にグッズの青白いライトが人々の手首で光って、会場は夜空が降ってきて星が波打っているようになった。

我々の期待が最高潮に高まった頃、ぽろん、というピアノの音に合わせて白いライトが光り、宇多田ヒカルが登場した。ドレープの美しい白いスーツ姿だ。私の左隣にいた知らない人が「グフん」と音を立てて泣くのが聞こえた。私も泣きそうになった。

それからのことは、夢みたいだった。誰もが聴いたことのある名曲が流れ、宇多田ヒカルが銀河を貫くような声で歌い、我々は夢中で手を振った。私の左隣の人は、次の曲の前奏が流れるたびに「グフん」と言ってちょっと泣いていた。アップテンポの曲の時は宇多田ヒカルが「みんなで楽しもうー!」と言い、みんな体をリズム良く使って踊っていて、「宇多田ヒカルのファンの人は音楽が好きな人たちなんだなー」と思った。

途中で宇多田ヒカルがMCをして喋ってくれたのだけど、歌う時の力強さとは裏腹に遠慮がちな感じは、声のきれいさと相まって、地上にいることに慣れない天女みたいだった。

「First Love」のサビの時に、私はふと、17歳の時に実家の中古のCDプレイヤーでこの曲を聴いたことや、大学生になってカラオケでこの歌を歌ったことを思い出し、こんなに私の個人的な思い出がつまった曲をこの人が作ったんだな、そしてきっとこの会場にいるすべての人に、個人的な、宇多田ヒカルの曲にまつわる思い出があるんだろうな、と思い、胸が熱くなった。

だって、なんにせよ、宇多田ヒカルだ。日本にちょっとでも住んでいた人で、曲を聴いたことがない人はいないだろう。デビュー25周年の彼女の歴史は、我々の人生の歴史と重なっている。

MCの途中で、宇多田ヒカルが「デビュー25周年を祝うんじゃなくて、みんなの25年を祝いたくてツアーをやりたかった」というようなことを言っていて、本当に天女みたいだな、と思った。銀の光がきらめくような彼女の声を生で聴けたことは、とても幸運だった。

ライブはあっという間に終わり、我々は余韻に浸りながら夜の東京をそれぞれの帰路に着いた。人生で一度は行ってみたいと思っていたライブに行くことができ、最高の時間だった。

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