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経済成長を前提とする未来 vs しない未来

12月30日。バリ島のウブドにあるCo-living Space[ROAM]で、一年を振り返りたいと思います。本題に入る前に、この施設はすごいです。ROAMに宿泊するには一定の審査があり、審査をクリアするとROAM memberになれて、世界5カ国にあるROAM施設をどこへでも宿泊できるようになります。優秀で愛に溢れるコミュニティマネージャーFennyと、今日も世界8カ国12人のメンバーと一緒。ウブドの絶景を見渡すハイスピードWifiが整ったコワーキングスペースで仕事をしながら、What’s up グループチャットを開けば、誰かしらランチやディナー、朝Yogaなどに行く誘いがあり自分のペースでJoinしたり誘ったり。昨日はBitcoin市場について各国の意見交換をしないか?というトルコ人の誘いから昼下がりに議論が繰り広げられました。(もちろんBING TANGビールを片手に。ちなみに日本のBitocoinについて何も話せなかった、ごめんなさい。)

Airbnbはもう古い。世界に普及しつつあるCo-living Space. 

メンバーとROAMをどうやって探したか?という話になり、共通していたのは「Co-living space」で検索してヒットした中の一つだったこと。Airbnbでいわゆる家主滞在型の素敵な空間を探していたが、最近は不動産物件のような家主不在型のスペースが掲載の多数を占め、素敵なホストを探すのが難しくなった。一方ユースホステルやゲストハウスは学生やバックパッカーがメインで、自立したミレニアル世代にとっては、「素敵な空間で、魅力ある人たちと出会い、ネットワークを作りたい」という目的は残念ながら果たせない。自分の仕事をしながら、適度に交流、しかも施設はホテル並みに綺麗、何よりも世界の潮流を同じような感覚で捉えていて「つながり」から生まれるアイデアやコラボレーションを重要な価値と置いている人が集まり、その後もメンバーシップとしてコミュニティのメンバーと繋がりつづけられるCo-living spaceは、来年必ず日本にも来てほしいと確信しました。 

今年主催したSHARE SUMMIT2017のスピーカーとして招いたEmbassy Network のAnnoukや、Seats 2 meatのRemekも「つながりから生まれるSocial Capital(社会関係資本)」こそが最も重要な資産となるということを解いていて、そのような”コミュニティネットワーク”を、どうデザインできるか?がコワーキングスペースにしても、シェアハウスにしても、人と人をつなげる空間を作る上で重要であるかを話していました。

シェアリングエコノミーは2つの側面を持つ。

改めて振り返りたいと思いますが、2017年の1年の講演・メディア露出は多くの機会を頂きまして100を超えました。特に3月に内閣官房シェアリングエコノミー伝道師を拝命してからは、シェアリングエコノミーを普及するための一年でした。政治・行政関連に向けた講演の機会は事務局長の佐別当と私を合わせて50回、台湾政府に招待頂き日本の現状をお伝えする機会や、ミレニアル世代向けイベント、大学の授業など分不相応な多くの機会を頂いた1年でした。

講演の中で最も多く頂いた質問は「シェアリングエコノミーはGDPを減らすのではないか?」という質問でした。GDPというひとつの経済指標がシェアエコに限らず、現代の私たちの幸福度を示す指標として正しいのかどうかは、政府の統計改革会議や研究機関など様々なところで議論や研究がスタートしていますが、ここでお伝えしたいのはシェアエコが、企業主体の経済社会と個人主体(市民)の経済社会を進める2つの側面を持つのではないかと強く感じていることです。

中国・米国型 資本主義ドリブンなシェアエコと、欧州・韓国型 持続可能主義ドリブンなシェアエコ。

Airbnb、Uberを始め時価総額10兆円規模を超えるユニコーン企業がアメリカから登場し、世界中どこへ旅しても使えるようになりました。中国でもシェアエコ市場は去年時点で56兆円、2020年までにシェアリングエコノミーがGDPの10%を占めると今年発表されました。先日ニューヨーク大学教授・シェアリングエコノミー著者(日経BP)のアルン氏とコーヒーを飲んでいる時に、中国では政府が企業に介入する形で海外展開も含め政治政策的なバックアップまであるという事実も伺いました。ITドリブンなイノベーション力で、多額の資金調達に成功し、大きな資本を持ち、日本でもフリマCtoCから始まったメルカリがバイクシェア、スキルシェア、など圧倒的なユーザー数(先日1億DL突破)を武器に様々なシェアサービスを展開し始めました。良いか、悪いか、どちらの側面もあると思いますが、マッチングプラットフォームの性質上、ユーザー数、トランズアクションが圧倒的なプラットフォームに人が流れていく動きがあると思います。

一方、フランスや韓国の視察を通じて、また欧州のシェアエコ界隈の人たちを通じて、別の側面に強く可能性を感じる一年でした。オランダ・フランスなどの欧州やお隣の韓国(ソウル)ではまた違ったシェアエコの発展があります。経済の低迷、環境問題などの社会アジェンダに着目し「持続可能な社会」を市民的なアプローチで目指したシェアサービスが生まれています。ビジネスモデルも通常のマッチング課金モデルではなく、NPOが運営をし、ユーザーは無料で使えて、スポンサードや補助金で運営コストをランニングしているご近所同士のモノの貸借りのシェアサービスや、その地域の人しか使えないシェアサービスなどが多くあります。11月に来日したアムステルダム市行政官Nanetteが「アムステルダムはスタートアップが沢山生まれているけれども、多くのミレニアル起業家はIPO(上場)を目指していない。」という話も印象的でした。アムステルダムでは、高齢者や低所得者の人が地域のミールシェア(ごはんのシェア)に参加できるようなITを使わないリアルなシェアイベントや、シェアサービスが割引で使えるようなクーポンを市が発行しています。

また、韓国で古民家を中心とした交流型民泊サービスKOZAZAのCEOのSankuさんも「この5年で、巨大なグローバル資本の企業に飲まれて、韓国のローカルな民泊サービスは何個も死んだ。」と嘆いていました。去年視察に行ったソウルでもNPOが運営する「Open Closet」という、寄贈されたスーツを借りることができるシェアサービスも街のお金のない就活生や若者に愛されています。寄贈する人が、次に使う人に「就活、頑張ってね」のようなメッセージを書くことができる人肌感あるシェアサービスです。実際に去年ご挨拶させていただいたソウル市長も2012年にシェアリングシティソウル計画の指針スローガンに「少ない資源の中で皆が幸せになれるシステムを。環境問題への配慮、コミュニティ再生による共助社会への復興を。」ということを上げています。

今年2月に行ったブラジルでも「COLABOR AMERICA」というシェアサミットがあり資本主義社会から抜け出して、市民・行政・社会起業家たちが共に助けあい、アイデアを出しながら社会課題を解決する手段を生み出し持続可能な社会を作っていこうというムーブメントがミレニアル世代を中心に起こっていました。

上記、2つの側面、どちらがいいか?という話ではなく、どちらも必要であると個人的には思うのですが、ただ、まだ日本では「どう儲かるか?」という視点での議論が多い印象です。このような、市民主義的アプローチから生まれているシェアシステムや、共助の仕組みを推進する国があり、そのムーブメントは世界では広がりを見せていることに自分自身強い影響を受けた一年でした。

日本はその両側面をもつ特殊な国
日本は、その両面を持つ国であると思います。前者の側面では、日本はまだまだ経済大国であり、その資本力や技術力を活かしたイノベーション、ユニコーン企業が生み出せる土壌があること。先日1億人DLを超えたメルカリのような世界で戦っている日本発のサービスや、上場するシェアサービスが登場してくることで、既存産業が衰退していく中の新たな産業として期待されています。

一方で、後者の側面では、今、日本が「持続可能型な社会システム」への構造転換が余儀なくされるターニングポイントに日本が直面していること。人口減少による地方の過疎化、増え続ける若者の社会負担、公助や自助が働かなくなっている中に、シェアという「個人と個人が助け合いながら支えあって生きていく」共助の仕組みが、いま必要です。

例えば北海道の過疎地域では、免許がないお婆ちゃんが病院に行くまでに2時間かかる。過疎化により、公共交通バスや電車の数も年々減少、タクシー会社はお客さんが少なくて参入すらしないような地域があります。天塩町では自治体と相乗りシェアサービスNottecoが提携をして、地域に暮らす人が自家用車で、免許のないお婆ちゃんを送り迎えできる取り組みも今年から始まりました。 

持続可能な共助社会への転換は地方だけでなく、都心でも必要です。私が住んでいる渋谷では、人口が密集しているのにも関わらず、地震が起こってもお隣さんに誰が住んでいるか分からない、夢を持って働きたい女性が沢山いるのに保育園が足りない、頼れる人がいない。
このような課題は6月に行われた「おとなりサンデー」や、恵比寿新聞のkenziさんと一緒に主催しているEBISU TOWN MEETINGでも多く同じ声を聞きました。

大震災や北朝鮮の問題など、当たり前のように稼いだお金を消費することでまかなえていた生活も、いきなり供給がストップするような事態も考えられ、不確定要素の高い未来に、「なんとなく不安」「なんとなく孤独」が私たちの周りに付きまとっているような気がしています。 

日本では、世界でも未だ見ぬ課題先進国であるからこそ、これまでの資本の力で解決していく経済ドリブンな解決手段と、それだけでは行き届かない課題に対して、個人と個人がつながりの中で持続可能な共助の仕組みを作っていく、両方の側面でシェアが広がる2018年にしていけたらという思いです。

2018年は、「つながり」を科学する。物差しを作りたい。

新しい人間関係
今年5月から渋谷のセンター街から5分のShibuyaCastの13Fで、39人のクリエイターと暮らし始めた「Cift」では、まさに生活の中で “ともに働き、ともに暮らす拡張家族”というコンセプトで、本当に安心できる暮らしの実践に挑戦しています。(私の中の精神的な変化としては、今年40人の家族ができた!という嬉しさと、"おかえり、ご飯あるよ”という帰りたくなる場所が地元ではない、この渋谷にあるという不思議な感覚です。)39人が一つの企業組合としてプロジェクトを組んで仕事をとりコミュニティの口座に収入を入れる事で、みんなのお金で食材や必要なものを購入したり、将来的には家賃も減らしていくことができたり。生後5ヶ月のしおちゃんや、1歳のりっくんなど、コミュニティで子どもを育てたり(Ciftの独身男性陣は、おんぶひもを上達する人が続出!)、将来的には食料やエネルギーもこの渋谷で自給率100%にすることができる可能性も見えてきました。

血縁でも地縁でもない人たちが、「拡張家族」になることで、キャリアやお金のために一生懸命働き続けていても「なんとなく不安。」な毎日に、つながりの中で暮らしにおける「安心」をつくることができるんじゃないか。そう本気で思っています。「仕事にゴールはあるけれど、子どもを育てる事にゴールやルールがないように、生活はプロセスであり、毎日のプロセスの中に今この瞬間を噛み締めたい幸せや平和があることを実現したいよね」と一緒に暮らしている藤代健介くんも言ってました。

「なんだか孤独。」が広がる今、人はやっぱり他者との関わりの中で幸せを感じる生き物であることは普遍で、これまでは家族や恋人が、そうした幸せを感じる人間関係の最たるものだったけども、今の世の中は必ずしもそれだけが全てではないんじゃないかと思うのです。

NEW TRUST
その中で今年衝撃を受けた本は大ベストセラーであり自分のバイブルにもなっている「シェア」の著者レイチェルボッツマンの新著、「HOW CAN YOU TRSUT」です。(早く日本語出版出てほしい。涙) テクノロジーと人間における信頼の変化について、まさに自分がこれまで伝えたかった「信頼」そのものの価値観が私たちの中で変化していること、信頼が全ての購買行動を左右する意味を説いてくれています。地縁コミュニティの1stステージの信頼から、組織・契約が仲介となる2ndステージの信頼、そして今私たちの中に起こっているのは「分散型」という3rdステージの信頼。
 
だから契約・組織に基づく「結婚」のあり方や「雇用される」というあり方が、気づかない内に違和感と不自由さを感じてしまっているのだと感じます。分散型の信頼関係を社会が受け入れ、消費・暮らし・仕事・人間関係において新しい「安心」の物差しを手に入れることができれば、もっと私たちは楽になるのでは、と。

2018年は、この「新たな”つながり”」について、新たな定義と物差しをつくりたい。私たちの中で「信頼」の概念が変わっていること、人間関係の定義も内からも・外からも変わってくこと、そのつながりがシェアされ、共助社会を生み出し、不確定要素の多い未来の中で、確かな「安心」と平和な社会を作れる鍵となるのではないかということ。11月から、かつてリクルート時代に日本経済新聞社のコンペや、朝日新聞ASAグループのブランディングプロジェクトなど共に戦った先輩であり同志のコピーライター山下さんなどに仲間に入ってもらい、この物差しをつくる朝まで会議を始めたり、一緒に考えて下さる人募集という投稿をしたら沢山の方にメッセージを頂きました。是非ご連絡ください。

シェアの先にあるのは「ハーモニー」 
26日に、久しぶりお父さんと父娘の2017年を振り返る夜を小さな個人店のイタリアンと、ブラジリアンバーで過ごしました。今年は命には限りがあると受け止めて、2人でブラジルを旅した年。 しかし海外でも国内でも、一緒に行くとこどこへでも歓迎してくれる友達、お店、コミュニティが世界中にあるお父さん。しかもオフラインで繋がってるからすごいです。
その夜の教えは「帰れるお店を沢山作りなさい。」 と「シェアの先にあるのはハーモニーだよ。」でした。完全に腹落ちしました。分かち合いの先にあるのは「調和」であると。そんな世界観を広げていきたいです。

まとまらなくなってきました、(汗)。今夜ウブドから日本へ帰らないといけません。
少し寂しいけども、先日佐賀県伊万里市に行った出張で出会った金吾さん(71歳)が送ってくれたお米の再配達の連絡がちょうどきたので、帰りたくなってきました。

改めまして、今年お世話になった皆様、素敵な機会をくださった皆様、日々一緒にそばにいてくれるみなさま、本当にありがとうございました。

来年も、どうぞ宜しくお願いします!

石山アンジュ

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