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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2021年5月の記事一覧

イチローと野球のルール:Anizine

昨日、江川卓さんと会ったときの話をしていて思い出したことがある。あるアメリカ人のスポーツライターがイチローについて語っていたことだ。彼は日本に住んでいたことがあるらしく、江川投手をはじめ、日本のプロ野球にくわしいことに驚いたが、その中でもイチローの分析は特に興味深かった。 「日本人はイチローのすごさをまるで理解していない。もちろんメジャーもね」ちょうどイチローがマリナーズに移籍する直前だったが、そんなことを話してくれた。ある日本人選手を比較対象として彼が話してくれたことは、

救急車を待つより:Anizine

住宅地の大通りに面した高級レストラン。ゆったりとした食事を終えたふたりの男性が、デザートのあとの珈琲を飲んでいた。 「すみません、電話なので席を外します」 ひとりがスマホを手に店の外に出てしばらくした瞬間、クルマの急ブレーキの音が聞こえた。窓から見ていた連れの男が慌てて外に飛び出す。 「石井さん、大丈夫ですか」 道路に倒れている客を見て、レストランの若い女性店員が呆然としている。 「店員さん、この近くに病院はありますか」 「はい、すぐその先に日赤病院があります」

ひとつめの旅:Anizine

ある人が「旅っていう言葉が嫌いなんだよね」と言っていた。それはなぜかと聞くと、「いかにも俺はスゴいことをしてますっていう自慢っぽいじゃん、旅行でいいのに」と続けた。普段から割と浅はかなことを言いがちの人だったから驚きもしなかったけど、その根拠の脆弱さに旅と旅行は違うものだと知らないのだなと悲しく思った。八歩譲って、別に同じでもいいのだ。しかし本人が「旅だ」と言うことに他人が異論を唱える権利はない。 30年くらい前、俺が初めて行った外国は韓国だった。飛行機で数時間の距離しか離

固有名詞を消去:Anizine

「あなたは『そうですね』と言ってから話し始めますよね」と言われたことがある。そういう印象を持たれているのならうれしい。ある頃から「それは違うと思う」と話し始めるのを意識的にやめたからだ。誰でもそうだけど自分に自信がないと相手の言ったことを認められず、返事が反論や反駁から始まってしまうことがある。 僕は犬が好きなんです、に対する返事は、「そうですか。私は猫が好きです」でいいわけで、「犬って、猫より可愛くないでしょう」と相手の好みを貶める必要はさらさらない。 「それは違う」と

次のツルッパゲ:Anizine(無料記事)

編集の吉満さんから、「ロバートの続編を出しましょう」と言われた。俺は謙虚村の出身なので、すべてのことを疑ってかかる。それは社交辞令ではないのか、お世辞ではないのか、ナメられているのではないか、イジられているのではないかと、このときだけはスーパーコンピュータ並みの速度で計算をする。しかし、吉満さんも遊びで出版をやっているわけではない。編集者が「本を出しましょう」という話を冗談で言うことだけはあり得ないのだ。 「わかりました。書きましょう」と答えると、それは『ロバート・ツルッパ

ワールドワイドウェブ:Anizine

俺はある意味で、ソーシャルメディアに生かされてきたと言える。仕事の依頼が、「ずっと前からFacebookを見ていました」「Twitterをフォローしていました」という前書きで始まることがよくある。 俺たちの時代は人づてに紹介されることはあっても、まったく知らない人に仕事を頼むことはあまりなくて、だからあまり仕事仲間が広がらなかった。会社のOBであるアートディレクターが同じくOBのカメラマンと仕事をしていたりするのを見て、これだとずっと同じだなあと感じていた。 独立して自分

バカと利口の構造:Anizine

ちょっと言葉がキツくなりますけど、「バカの、頭がいいと思われたい発言」というのがあります。これ、どんどん増えていますね。 俺はワイルド・バカサイドを歩んできた人間ですから、バカの気持ちは手にとるようにわかります。我々「バカ」という存在自体は、家族や同僚やご近所などに迷惑がかからない範囲であればそれほど糾弾すべきものではないのです。 バカと利口の違いをはっきり言えるでしょうか。これはなかなか難しいと思います。大バカ、小利口、熱いバカ、冷たい利口、のように、形容されるサイズや

イタリアに行ったつもり:Anizine

どこにも行けないので、昔のHDDばかり見ている。イタリアに行ったときの写真を並べて我慢しよう。 この時は、機内でたこ焼きが出ました。これからイタリアの小麦粉と対決するので、最後の「和風粉モノ」で勢いをつけます。 途中で小さい飛行機に乗り換える。歩いて行って乗るのもまた楽しい。 街に着きました。変な建物は取りあえず何でも撮ります。 クルマも撮ります。 カップルがやってきて、知らない人からも祝福されます。 ホテルの部屋。コーヒーなどが置いてある棚に豊富なnutella