拝啓 くそったれの夏

美しいものが好きと言ったら笑われるような世界で生きたくなくて断捨離した人間関係。
優しいうたが好きと言ったら嘘つきと言われるような自分で生きたくなくて清算した凄惨な日常。

生まれ変わることなんて容易かった、それでもしなかったのは、なぜ?

空が青くて泣きたくなった、夏の葬儀が終わってやっと夏を美化できるくらいのぼくはまだ追いつきたいものに追いつけてないんだと知る。
追いつけてしまったらゼロになることすら知っているのに。

ばかみたい、あんたね、キスってこうやってやんのよって居酒屋の喫煙所で知らないお姉さんに舌を絡まされた。あなたは、あなたは、あなたはあなたはあなたはあなたは愛を知っているのですか。ほんとうに?

到達地点の向こうで全選択して消去したはずの少女が壊れそうな笑顔で待っている。そこへ、行こう。ぼくらで。手を取った、きみの手は思ったよりも弱々しくて切なくなった、なんて言えるわけなくて。

さよならさよならぼくを何者にもしなかった夏。

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