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カナダのレイプ被害者支援センター勤務を通して、性暴力被害者やカウンセラー仲間たちとの出会いと助け合いについて ~ My Story

私は、カナダのレイプ被害者支援センターでカウンセラーをしています。私のプライベートの友達の半分は、私の仕事や生き甲斐を理解してくれない。なぜ、そんな辛い仕事をわざわざ選ぶのか?というワケ。

それが、実は、被害者をサポートするのは、「辛い」の何十倍も「幸せ」で「嬉しい」仕事だと、再確認できるのは、カウンセラー仲間と時間を過ごす時です。

久しぶりにカウンセラー仲間全員がオフィスに集まり、チームビルディングをしたら、心が熱くなり、とても幸せを感じたので、その話を綴ります。


私がカウンセラーとして勤めているセンターは、レイプ撲滅を大きな使命として、問題を直視して、真っ向から勇敢に取り組む有名な団体。当事者が自分たちのニーズのために設立した、人権運動の歴史的にも重要な意味を持つ施設で、規模がこれほど大きくなった今も、「ボトムアップ」の運営方針が変わることなく、被害者やサバイバーから信頼を集めています。

レイプだけではなく、もちろん幅広いジェンダー問題、そしてジェンダー問題と密接な人種差別問題の被害者を、深い知識と、経験からの知恵を総合的に使って支援しています。

私は、実は、もう10年以上前、被害者として、ここのカウンセリング・サービスを受けていたことがあります。他の施設でも仕事をしていますが、この施設がやっぱり、セラピストとしての私の原点だし、心温まる、懐かしの回復と成長の場所なのです。


さて、チームビルディングの時間です。


やはり、

同僚の全員が、性暴力を受けた体験があるというのは、すごい現場だなと思います。

皆んなの言っていることが、言葉数すくなくても、皆んな、分かる。部屋の空気に、やさしくて強い、仲間のつながりを感じるミラクルな雰囲気なのです。

(これは、被害者として、サポートを受けた時にも感じました)

そして、

このセンターが成功している鍵は、セラピスト達のバックグラウンドが実に多様だという点が大きいと思います。

白人のセラピストはむしろ少数で、アフリカ系、アジア系、インド系(インドもこちらではアジア圏内と括られる場合もありますが)、そして、ユダヤ教、イスラム教、クリスチャン、仏教、その他様々。


個人が信じていること(処女について、男女関係について、レイプについて、服装・ファッション、表現の自由について、親や医者や目上の人について、経済格差について、LGBTQI+について等々)は、今、身を置いている環境や、生まれ育った環境から吸収した産物であることが多いです。

暴力を振るわれたという事を単独で理解するのではなく、それが、被害者の価値観、社会観、人生観のレンズから観ると、どういったトラウマになっているのかを多角的に理解することで、心から信頼できるサポートを提供できます。

これだけ世界中の文化や慣習を背景とした人財が揃うこのセンターだからこそ、被害のひとつひとつ異なる事例、被害者ひとりひとり異なる心理状況へ、深い理解を持って対応できます。


私たち、ここのカウンセラー達は、サバイバーでありサポーターです。ひとりひとりの事件は違うけれど、共通して何度も出てきたのは、次の点;

  • 自分のことを「サバイバー」と名乗れるまでに何年もかかった(サバイバルできた(=トラウマを克服できた)と思えるまでは、被害者(Victim)という風にしか自分を見られなかった)

  • 暴力を受けたと誰にも言えなかった、自分自身の中でも認められなかった

  • 自分が汚れてしまった、自分の価値がなくなったという考えが終わるまで何年もかかった

  • 事例によって(殺人未遂を逃れた場合などは特に)死の恐怖との葛藤

こういった話をセオリーとして分かる次元ではなく、自分自身がその回復と自己改革の道を一生懸命、歩んで、幸せまで辿り着いた経験があるからこそ、分かる人達が、被害者をサポートしたくなる、サバイバーがサポーターになるというのは、本当に自然です。


私たちは、今の自分の地点から昔を振り返ると、身に降りかかった悲しい事実よりも、

その時点から、自分の力で回復、そしてそれ以上の成長ができた誇り

を感じています。

悲しかった・辛かった時代に、「いつか努力してトラウマを乗り越えたら、それを誇りに思えるようになるんだよ!」と誰か経験者が、強く優しい笑顔で約束してくれたら、どれだけ安心できるだろう?どれだけ努力する力が湧いてくるだろう?

その答えが分かっているから、できるだけ多くの被害者に寄り添って、お手伝いするということが、この後、生きている限り、生活の一部になっている。誰かが私をサポートしてくれた通り、私も誰かをサポートしたい。そのつながりが私のウェルビーイングに欠かせないのです。

サポートしてきた誰かが回復してイキイキしているのを見ると、ああ、私も生きていて良かったと思うのです。この生き甲斐を分かり合える仲間と出会えた職場は、他では味わえない心の熱さを感じられる私の居場所で、この心の熱さというのは、例えば、登山で山頂まで辿り着いた時とか、マラソンをゴールした時のような達成感と幸福感と感謝のミックスです。

同僚の一人の言葉が、まさに的を得ているので、心に残りました。

"This place makes me feel brilliant! There's nowhere else on earth that makes me feel this brilliant."

アンジの日記、最後まで読んでくださって、ありがとうございます⭐️


アンジ自身の「メンタルヘルスの長い旅の始まり」という日記も、下記でシェアしています✨


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