ノスタルジックなマーボー

お腹空いてお弁当までもたないからおにぎりかなんか買うお金ちょうだいと朝に200円渡した子が結局行き道で鼻がたれて仕方なく、ティッシュを買ったといってきてまあもったいないと苦笑いで麻婆茄子のためしっかりナスに油を通しながら作っていたらぼわあと過去の記憶が蘇ってきた

受験の日、新幹線を待つホームでティッシュをわすれたことに気づいて慌てて売店で買おうとしていたわたしに気づいて声をかけてきた同級生　いくつも持ってるからとあちこちのポケットから何個も取り出して渡してくれた

髪伸ばしっぱなしの男子にティッシュもらうって、と色々あせるくせに詰めが甘い自分を笑ったけど受験に関してもその通りで、そつなく世界史の自作ノートを見返す彼の横でほーなんも知らんと横目で眺めつつカセットテープで音楽を聴いていた　

音の悪い黄色のスケルトンカラーのカセットプレーヤー　藤原ヒロシのピアノの曲　

いつも聴いてたら友達が誕生日に音楽室に引っ張っていって弾いてくれたこともあった　サプライズって人生であれくらいかもの記憶

窓の外に目もくれずノートをめくり続ける同級生にこんな単語も知らないってあんた、と小馬鹿にされながらもお礼のつもりで片耳聴かせてあげたらばよく分からん顔をしていた　じゃ、お互い頑張ろーとそそくさ手を振って東京駅で解散したはず

でもあとあとまわりまわって聞いた話、やつはわたしに好意をもってくれていてその日なんて偶然と内心喜んでいてくれたそう　色々早く言ってくれてたらな　高校生のうちにちょっと変な彼ともっと楽しく会話したり出かけたりできたのにな

その日は本命の試験だったのかどうかも思い出せないのだけど　ぼわわあと蒸気とともに記憶が一瞬押し寄せてしまった　麻婆茄子は上手に出来上がった　鶏挽肉でもさっぱりとしてよかった

曖昧な記憶だからまた良いのよね　カルエ