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桃月堂本舗 ひなの巣にて "あられ工場の詩、お話"

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このマガジンでは、米菓工場の2階にある通称「ひなの巣」のことを綴ります。「ひなの巣」とは、小さなお煎餅や干菓子の詰め合わせ、”ふきよせ”を作る部署のことです。そこで起こる日々の様…
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#ポエトリーリーディング

冬の雛の巣

冬の雛の巣

窓際の温度は冷気で少し下がる
暖かい部屋と外気に挟まれ
外が見えないほど窓ガラスは曇る

ここは、おせんべい工場の2階
吹き寄せを作る部署通称『雛の巣』

休憩室から出て来た佐々木さんがぼやいていた
この寒い季節に初夏の商品を検討するなんて
思いつかないと

清水さんが椅子へ座り直す
これで全員揃ったね
来年の夏にだす商品を考えよう

足先が冷えるリノリウムの床は
曇り空と同じくらい鈍く光る

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新しい1年

新しい1年

コマの真ん中に軸足があるだろ?
そこからグルグルと糸を外側に向かって巻いていくのさ
そう、それで、巻き終えた糸を勢いよく離すと
コマは一本足で回転する

いま、正確に答えがわからないことでも
同じ作業の繰り返しに見えることでも
このコマに糸を巻きつけて行くように
続けていると
糸を離す瞬間、変化が起こる

離す瞬間は躊躇なくだ
そうするとコマは勢いよく回る
だから物事も同じさ
今までわから

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ひなの巣のこと

ひなの巣のこと

明け方に土砂降りの雨が降っていたなって

目を覚まし、窓の外を眺める

自転車で旧道を抜け、踏切を渡ったら

線路沿いに走る

職場に着く頃には陽は高く昇り

首筋に汗をかく

わたしが務める米菓工場では

うるち米のおせんべいと

もち米のおかきと一口大のあられを作っている

敷地はとても広いけれど

工場は小さな小学校のような建物だ

1階ではおせんべいやおかき、あられなど

大きな音を立てて

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ソーダ水とこんぺいとう

ソーダ水とこんぺいとう

湿度の高い空に気泡が立ち上がる
雨が地上の空気を押し出すように降りはじめる

冷たい風を少しだけ吹き
地面に着地した気泡が空気に触れて弾け
水滴を撒き散らす

ソーダ水のようだ
駐車場へ
降り注ぐ雨を見ながらそんなことを思う

ここは桃月堂のおせんべいを作る工場
あられや金平糖、砂糖菓子で吹き寄せを
作る部署
通称「ひなの巣」

休憩室の扉が閉まる音がして振り返ると
森本さんが掲示板を眺め

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春のあさ

春のあさ

熱を出して
三日ほど寝込んだ

明け方に見た三日月は春らしいむらさき色
何も食べていない事を思い出し、フローリングの床を裸足で歩く

少し頭が痛い
午前5時のキッチンに立ち
ゆっくりとガス台に火を入れる

東の窓が明るくなる頃気温が下がる
お茶の入ったカップをしっかりと包み、足先を丸める

イングリッシュマフィンにバターを塗る
マーマレードジャムの瓶にスプーンを突っ込む

久しぶりにのる

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雛菓子のこと

雛菓子のこと

立春を迎え、ラジオから聞こえる天気予報では暖かくなると

言っていたけれど、ダッフルコートを羽織る

みんな、晴れた日が続くから少し浮き足立っているんだ

「ひなの巣」へむかう階段をのぼりながら思う

わたしの職場はお煎餅工場の2階にある吹寄せを作る部署

通称「ひなの巣」と呼ばれている

この時期1階の工場ではひなあられの生産に追われ

ひなの巣では、贈答用の雛菓子作りが始まる

あられの素とな

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ひなの巣にて(秋)

ひなの巣にて(秋)

5本のピンセットをきれいに洗い、銀色のトレイに載せ

滅菌装置の棚へ置く

お煎餅の工場2階にある吹寄せを作る部署 通称「ひなの巣」

ここでは退出する前にこの作業を行う

帰り際、扉近くに座っている小田さんへ挨拶をすると

「おう」と言いながら片手を上げる

メガネの上からスコープをつけ、さとう菓子を仕上げている

白く練り上げたお砂糖でキノコの内側にあるひだを一本ずつ描く

作業を邪魔しないよ

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