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最強のディフェンスとは? 危機察知能力の重要性とその鍛え方

 今日も今日とて柔術は楽しい。今日は危機察知能力の話


1.良いディフェンスとは

早めの対処=危機察知能力+先読み

 ディフェンスは「早めの対処」が重要です。

 そして早めの対処には「危機察知能力」+「先読み」 が必要です

 相手の形に入らせて勝つ横綱相撲は漫画みたいでカッコイイですが、現実ではレベルが拮抗したらやられます。強い人は形を作らせず初手で潰すか、カウンターを取っています。そもそも、相手の形になっている時点でその前段階の攻防に負けています。

2.危機察知能力とは?

なんでも反応すりゃいいってものではない

 危機察知が大事だからといってなんでも反応するのはNGです。打撃だと分かりやすいのですが、すべての相手の動きに反応していたらフェイントで動かされて隙になります。寝技でも同様で「リアクションを取らされる」とそれを起点にアタックされます。

 強い人のスパーを見ると、打撃でも寝技でも必要以上に反応しません。

3.危機察知能力(+先読み)の鍛え方。

3-1 技の理屈を理解する

 クラスや教則や打ち込みで技の理合いを理解すれば、その起点となる部分(「〇〇を取らせなければやられない」ポイント)が分かります。

 ディフェンス単独で覚えるより、その技そのものをちゃんと理解する方が効率がいいです。こちらの記事も参考に↓

「〇〇のディフェンスだけ教えてください」はアリなのか?|柔術哲学(アンディ) (note.com)

3-2 やられた技、形、シチュエーションを覚える

 技の理屈を理解したら、あとはスパーで情報収集、ストック集め、実験検証。先読みと危機察知の精度を上げていきます。「取られたらヤバイポイント」を自分の中にたくさんストックして、危機察知能力や先読みを上達させる材料にします。

 大事なのはただスパーで本数をこなすだけではなく、やられた形を覚えておくことです。そうすることで自分の中の良質なストックや情報が蓄積されます。やられた経験は危機察知能力を上げる貴重な材料です。

3-3 防衛ラインという考え方

 攻防には「どこまで(何%まで)作られたらやられる」の防衛ライン(危機察知ライン)があります。これは自分がアタックする際の基準にもなります。

例:脇マクラを取られたハーフパスをされる

ライン1:脇マクラ取られている(100~80%)
 ディフェンス:足を抜かれないように足をめっちゃ挟む
 →クロスフェイス(枕)のプレッシャーで潰されて足抜かれる

ライン2:ハーフは取られているけど首脇は守っている(70~40%)
 ディフェンス:マクラや脇を取らせない
 →ボディロックやレッグウィーブパスで腰を殺されてパスされる

ライン3:相手との間に両足のフレームがある(30~10%)
 ディフェンス:そもそも足を跨がせない、足のフレームを突破させない
 →足をコントロールしてまたいでくる

※ハーフを得意とする人もいるのであくまでこれは例です。

 上記の例でいえば、ハーフパスのディフェンスで大事なのは「足を挟んで粘ること」ではなくて「マクラを取らせない」「そもそもハーフにさせない」「そもそも足を簡単にコントロールされない」です。

 「枕を取られること、首を触らせること」や「足を跨がれること、足首をCグリップで上から持たれること」に危機を感じられるようになることが大事です。これこそが危機察知能力です。

4.とにかく初手で潰す、防衛ラインを守る

初手の言い換え

・危機察知ライン
・防衛ライン

・技のエントリー
・技のセットアップ
・崩し、あおり
・技の起こり
・技の発動条件
・組手
・組足(?)
・重心の位置
・体や手足の位置取り
・取らされたリアクション
・越えさせてはいけないライン
・「ここまで(何%まで)作ったら技が決まる」のライン
・「取られたらヤバイ」のライン
・「〇〇を取らせなければこの技はやられない」のポイント

 危機察知能力と先読みを鍛えて、この初手を潰していきましょう

 白帯の人は「クラスの技をやろうと思ってもその前に潰されちゃう」という経験をしたことがあるでしょう。色帯の人たちは危機察知ラインの精度が高いので白帯のアタックを早めの段階で対処します。

 逆を言えば、白帯の人は危機察知ラインの精度が低いので簡単に取らせてはいけない組手や越えてはいけないラインを越えさせています。

5.白帯あるある

「形に入ってからの解除=ディフェンス」だと考えがち

 まさにかつての自分です。「4.とにかく初手で潰す」の真逆のことをしていました。

①「ボーアンドアローの解除を教えてください!」
②「フットロックの解除を教えてください!」
③「三角のディフェンスを教えてください」

ボーアンドアローがっつり入ったら逃げられんよ。。。

 もちろん形に入ってからのディフェンスも大事です。でも実戦を考えるならばそもそも形に入れさせないようにすることがより大事になってきます。

①バックから襟を取らせない、バックを取らせない
②フットロックの足を抱えさせない
③三角をエントリーされる瞬間に膝や手を入れる、頭を上げる

危機察知能力が上がるとこれらをやられなくなります。

 上の例のように危機察知能力と先読みを鍛えて早めに対処しましょう

6.応用

6-1 格下相手とのスパーで防衛ラインを下げる

 自分よりも弱い相手、体格が劣る相手の練習の場合、防衛ラインを下げることがあります。あえてハーフまで取らせる、襟を持たせる、バックまで取らせてそこから攻防をするというのもあります。

 いわゆる、なめプ(なめたプレイ、手抜き)をするわけではなくお互いの練習のためにラインを下げるだけです。

例:ガードの防衛ライン
ライン1:相手に襟や裾を取らせない、取られてもすぐ取り返す
ライン2:足のフレームを突破させない
ライン3:ハーフにさせない(足を跨がれない)
ライン4:ハーフから脇を差されない

試合だったらライン1すら越えさせたくない

 上記の例でいうと、ライン1で格下相手を完封するよりも、ライン2,3までラインを下げて攻防したほうがいい練習になることもあります。

ちなみに格下相手との練習の心構えはこちらにたくさん書きました。よかったら参考にどうぞ

スパーしたくなる人とは? 「同じやられ方をしない」 あとルールとマナーは守ろう|柔術哲学(アンディ) (note.com)

三様の稽古 お互いの良いハードル(障害)になる話。|柔術哲学(アンディ) (note.com)

6-2 カウンター

 初手で潰した方がいいですが、あえて相手にラインを越えさせてカウンターを取ることもできます。

 有利な形を作ってアタックできない場合はカウンターを取ります。相手がアタックする際にできる隙(重心や手足の位置)を狙います。


・リバデラから圧をかけてくる相手にキスオブザドラゴン
・ハーフから圧を書けてくる相手にもぐってディープハーフ
・フックスイープを腰切りしてスマッシュパス
・パス際に三角
・三角にかつぎパス

6-3 アタックの話。防衛ラインの突破方法。フェイントとコンビネーション

 アタックの際の考え方。正攻法で防衛ラインを突破できない場合は、相手にリアクションを引き出してそれをアタックの起点にします。いわゆるフェイントやコンビネーション。

 危機察知能力が全然ない初心者は反応しないのでフェイントは使えません。というか必要ないです。普通に殴るだけでいいので。

7.まとめ

 危機察知能力や先読みは簡単には身に付きません。そのシチュエーションごと、技ごと、相手ごとの危機察知が必要になります。そのためには多くの技を学んで、スパーでたくさんデータをストックして、自分の防衛ラインの精度を上げるしかありません。

 ディフェンスが上手くいかない人が本記事を読んで参考になればうれしいです。

2024/4/18 アンディ

追伸 いろんな初手(防衛ライン、取られたらヤバイポイント)の例

 思いつくままに上げてみました。これらの初手の動きを危機察知できればディフェンスできます。逆にこれらを取ればアタックできます。

・下からの腕十字
 →自分の肘が相手の腰のラインより前に出る
・下からの三角
 →頭を下げられる、手をマットにつかされる、手をコントロールされる
・フックスイープ
 →膝をマットにつく、上半身の組手を取られる
・サイドからのアタック
 →脇を差される、手首を持たれる
・ベリンボロ
 →尻もちをつく、自分の膝を相手の膝が越えてくる
・トレアナパス
 →両足を持たれる
・リバデラパス
 →襟を取られる、上の足のスソを取られる
・ハーフパス
 →脇、枕を取られる
・デラヒーバパス
 →フックを外される、フックしてない足をグリップされる
・ループチョーク系
 →クロスグリップを取られる
・フットロック
 →足を抱えられる
・キムラロック
 →リストを取られる
・アームドラッグ
 →リストを取られる
・カラードラッグ
 →襟を取られる
・バックチョーク、送り襟絞め
 →肩口を持たれる、襟を持たれる

まだまだたくさんあります。そしてレベルが高いともっと細かい初手の攻防があります

 襟やスソや首や脇を持たれたら「ヤベッ」っと危機察知センサーが反応する様になるといいです。でもレベルが上がるとその反応をアタックの起点にしてきます。フェイント。コンビネーション

 「反応しなくてもダメ、反応しすぎてもダメ、そんなのどうすりゃいいのよ」ってなるでしょう。俺もです。でもそれが面白いですよね。

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