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着物でつくる 日傘

東京は下町、人形町。
平成のひと頃まで、地下鉄人形町駅を上がってすぐの水天宮通りに、曾祖母の営む呉服店「ゑびすや」がありました。
子どもの頃、まだ内装も新しく(朧げな記憶ですが)きりりと美しいそのお店に、曾祖母を訪ねて何度か遊びに行ったことがありました。遊びに行くと、すぐそばの喫茶店「RON」さんで、デザートをごちそうになったりもしました。
クリームソーダ、プリンアラモード。テレビや絵本に出てくるような「あ、これ知ってる!見たことある!」と思わず喜んでしまう夢のデザートの数々を初めて食べたのは、どれも「RON」さんでだったのではなかったかなと思います。

曾祖母から始まる着物とのご縁。また、着物を着る機会の多かった両親の両祖母も、着物をきれいに取っておいてくれていました。

両祖母からもらった、たくさんの着物は、はさみを入れるのは忍びないような気がして、なかなか思いきれないものも多いけれど、身近なものに作り変えて、この先も日常の中で長く使わせていただくことにしています。

着物でつくる 日傘(2014年)

着物は、まず糸をほどいてお洗濯をしました。
和裁の糸は、しっかりと縫われているのにほどくのに洋服ほど手間がかからず、どんどんと生地に戻すことができました。
また、洋服のようにパーツごとに切り刻まれていないということも、何度も仕立て直して着ることができる、和服のパターンの素晴らしさに改めて気づかされる点でした。

お洗濯は、中性洗剤を溶いた水に、ほどいた着物をつけて押し洗い。
水を入れかえて押してすすぎ。ある程度、汚れが気にならなくなるまですすいだら、濡れたまま竿にかけて、のし干しにしました。
乾いたらスチームアイロンをかけて、下準備は終わりです。

傘は、骨組みと型紙がセットになったキットを利用したので、型紙に沿って生地を裁断しました。
型紙の幅と、着物の幅がほとんど一緒で、無駄なく生地を使えたことに、また驚きました。

布同士を縫い合わせる際はミシンを使用しました。骨組みにつける作業は手縫いです。
生地の端を隠すためのシュシュ状のパーツ。
型紙通りにすると、かなり大きなシュシュがつくようだったので、生地の雰囲気に合わせて、ここはできるだけ小さく目立たないシュシュにアレンジしました。
木のボタンと革の帯を付けました。
最後に布用のUVカットスプレーを全体に振りかけ、乾かしたら完成。

傘にした生地は、パッチワーク生地のようにも、バティック柄のようにも見えて、「これ着物だったの?」と驚かれることもしばしばです。

作製から9年目。まだまだ頼れる日傘です。


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