【2-1(1)】 循環器系 - 血管系概論 解説
− 学習のポイント −
■ 1. 循環の概要 –体循環と肺循環–
循環器系は体内に血液やリンパ液を循環させる役割があり、心臓、動脈、静脈、毛細血管、リンパ管とリンパ系器官からなります。
- 心臓は血液を送るポンプ
- 動脈・静脈・毛細血管は血液の通り道。
- リンパ管とリンパ系器官は血管系では回収できない比較的おおきな異物も回収可能。外来の異物に対応するための免疫システムも発達しています。
▶ 動脈・毛細血管・静脈
・動脈:心臓から送り出された血液を身体の組織に向かって運ぶ
・毛細血管:1層の内皮細胞のみからなり、物質の透過性が高い
・静脈:各組織から心房に送り返される血液を流す
▶ 体循環と肺循環
人体には循環の系統が2つあります。
ひとつは体循環。全身に酸素と栄養を送るための循環です。左心室から始まり、大動脈から各部位の動脈に分かれ、毛細血管となり各臓器や組織に酸素や栄養を供給します。そして静脈に集まり、大静脈から右心房へと還ります。
一方、肺循環は肺でガス交換を行い、二酸化炭素を放出し、酸素を血液中に取り入れる循環です。右心室から始まり、肺動脈から肺に行き、ガス交換を行い、肺静脈より左心房へと還ります。
そして、再び体循環として全身にめぐっていきます。
▶ 動脈血と静脈血
動脈の中を流れるから動脈血ではなく、酸素が多い血液が動脈血です。体循環の動脈は動脈血が流れていますが、肺循環では、肺動脈には静脈血、肺静脈には動脈血が流れていることに注意が必要です。
・動脈血:鮮紅色。酸素を多く含む
・静脈血:赤黒い色。二酸化炭素を多く含む
▶ 機能血管と栄養血管
栄養血管とは身体の末梢組織に酸素と栄養素を送り届ける血管です。
機能血管とは臓器の機能に係わる血管です。
体循環は全身の組織や臓器に酸素と栄養を供給する循環なので、体循環の動脈は栄養血管です。一方、肺循環における肺動脈は肺の組織に酸素を送り届けているのではなく、肺でガス交換を行うための機能血管です。
機能血管と栄養血管でよく国家試験に出題されるものを表でまとめましたので、ぜひ覚えてください。
■2. 血管の構造と分類
血管壁の構造をみてみます。
動脈・静脈の血管壁は内膜・中膜・外膜の3層からなります。
動脈は厚い壁と比較的小さい内腔を有し、一般的に円筒状をしているのに対し、静脈は薄い壁と比較的大きい内腔を持ち、一般的に平たい形をしています。
内膜はどちらも単層扁平上皮の血管内皮細胞です。動脈の場合、平滑筋の収縮により波うっているのに対し、静脈は滑らかな形態です。
比較的大きな動脈では、内弾性板が存在していますが、静脈では欠如します。静脈弁は内膜の特殊化したものとみなされます。
中膜は血管によりもっとも違いが大きい部位です。中膜は平滑筋と弾性線維からなる層で、動脈では厚く、静脈では薄くなっています。
大動脈では平滑筋より弾性線維のほうが豊富で、弾性動脈と呼ばれます。中程度以下の動脈では平滑筋が主体となり筋性動脈と呼ばれます。そして比較的大きな動脈では中膜と外膜の間に外弾性板が存在します。
静脈では中膜が薄く、ときに筋層はまばらとなり、外弾性板は欠如します。
外膜は線維性結合組織の部位です。動脈では大動脈を除き、通常最も薄い層です。膠原線維の他に弾性線維も含まれています。また血管壁に分布する脈管の脈管や、脈管の神経が存在しています。
静脈は外膜が比較的厚く、とくに下大静脈では外膜が非常に発達し縦走筋線維がみられます。
以上、すこし細かいところまでお話しましたが、まとめます。
内膜は単層扁平上皮の血管内皮細胞で共通です。
中膜は平滑筋と弾性線維の層。動脈で厚く、静脈では薄いです。
外膜は線維性結合組織の層です。
▶ 各血管の特徴
-- 動脈:動脈は心臓から出ていく血液を通す。--
① 大動脈(弾性動脈)
大動脈などの心臓に近い太い動脈は弾性動脈といわれ、中膜には平滑筋より弾性線維が豊富です。その弾力性により、心室の収縮期には大動脈壁が押し広げられて血液を受け取り、拡張期には大動脈壁が収縮して血液を末梢へ押し出します。これにより持続的な血流を作り出すことができます。
② 中等大の動脈(筋性動脈)
太さが4mmほどの中等大の動脈は筋性動脈といわれ、中膜は主として平滑筋からなります。筋性動脈は、平滑筋の収縮・弛緩により血管腔の広さを変えて、その血流量を調節することができます。
③ 細動脈(抵抗血管)
細動脈は血管収縮神経支配が豊富で、血管抵抗が特に大きいことから抵抗血管と呼ばれます。血管平滑筋は持続的な緊張があり、血圧の維持調節に働いています。各臓器の血流抵抗が増減することにより、血流の分配が変化します。
--静脈 :静脈は心臓に血液を戻す。--
④ 静脈(容量血管)
静脈は動脈に比べて中膜が薄く、管腔の形も不規則で、血液の逆流を防ぐ静脈弁が存在します。血液全体の60%以上が静脈にあり、容量血管として循環血液の貯蔵場所となります。一般に、からだの深部を走る静脈は動脈に寄り添って走ることが多く伴行静脈と呼ばれます。
▶ 静脈還流を促進させる仕組み
・静脈弁
静脈は動脈に比べて血圧が低く、静脈壁自体に血液を押し流す力が乏しいので血液が貯留しやすく、かつ逆流しやすくなっています。そこで静脈の内腔には、内膜がポケット状のヒダをなして、血液の逆流防止弁として機能する静脈弁が存在します。
静脈弁はとくに下肢の静脈にて発達しています。一方、顔面の静脈には静脈弁は存在しないとされています。
・伴行静脈
からだの深部を走る静脈は動脈に寄り添い伴行静脈といいます。動脈の拍動が静脈をしごくような外圧となり、静脈の還流を促します。
・筋ポンプ
筋ポンプは筋肉が収縮するときに、その部位の静脈が圧迫され、内部の静脈血の還流が促進される仕組みです。これは下腿で特に顕著にみられることから、「ふくらはぎは第2の心臓」などとよく言われます。
スーパーのレジ打ちなどの長時間経ちっぱなしであまり歩かないような仕事ですと、下肢に静脈血がうっ血しやすくなります。うっ血により静脈圧が高くなると静脈瘤ができやすくなります。長時間の立ち仕事の場合、少し疲れていても仕事終わりに少し歩くことをおすすめします。その習慣が下肢のうっ血をふせぎ、静脈瘤を予防します。
-- 毛細血管:組織に酸素と栄養を供給--
⑤ 毛細血管(交換血管)
毛細血管は単層扁平上皮の内皮細胞とそれを取り囲む基底膜から構成され、動脈系と静脈系の間に介在します。物質の透過性が高く、内皮細胞を介して周辺組織との間でガスや栄養のやりとりが行われます。(交換血管)
毛細血管は場所によりいくつかのタイプがあります。
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