見出し画像

【2-2(1)】 循環器系 - 心臓 解説

↑ 解剖学マガジン記事一覧(目次)

【2-2循環器系 - 心臓】
第2章 循環器系 資料配付ページ(プリント・スライド)
【2-1(1)】心臓 解説(このページ)
【2-2(2)】心臓 一問一答
【2-2(3)】心臓 国試過去問演習

 → 【2-3 動脈系】

💡かずひろ先生の解剖生理メルマガ💡
毎日届く国試過去問解説や勉強法、オンラインセミナー情報などお届け


− 学習のポイント −

1. 心臓の位置と縦隔について
心尖部の位置(左第5肋間 鎖骨中線付近)、縦隔

2. 心膜
線維性心膜、漿膜性心膜(壁側板、臓側板)、心膜腔(漿液で満たされる)、心タンポナーデ

3. 心臓の壁 
心内膜 (単層扁平上皮)、心筋層 (心筋)、心外膜、介在板、機能的合胞体、左心室が最も厚い

4. 心房と心室
大静脈→右心房→三尖弁→右心室→肺動脈弁→肺動脈/肺静脈→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈弁→大動脈
前室間溝、後室間溝、冠状溝

5. 心臓の弁膜
房室弁(右:三尖弁 左:僧帽弁(二尖弁) )、動脈弁(右:肺動脈弁 左:大動脈弁)
※房室弁は左二右三・腱索と乳頭筋、動脈弁は半月弁

6. 刺激伝導系
洞房結節、房室結節、房室束(ヒス束)、左脚・右脚、プルキンエ線維

7. 心臓の血管
左冠状動脈(前室間枝、回旋枝)右冠状動脈 (後室間枝)、冠状静脈洞

■1. 心臓の位置と縦隔について

▶ 心臓は血液循環の中心

循環器系-21-01-体循環と肺循環-図

心臓は血液を送り出すポンプとして働く血液循環の中心臓器です。まず全体をとおして見て、右心が静脈血左心が動脈血だということを抑えると理解しやすいです。そして心房は血液を受け取る場所心室が血液を送り出す場所となります。

心臓はイチゴのような形で、下部の尖っているところ心尖、上部の太い血管が出入りしている部分が心底といいます。

肺と心臓-HL1

こちらは肺と心臓の全体像です。まず前面よりみてみます。左右の肺に挟まれた領域を縦隔といいます。心臓は縦隔の中部に位置します。

心臓は心嚢という内外2層の膜に被われています。心嚢の外側は線維性心膜、内側は漿膜性心膜と言われます。この図は外側の線維性心膜を薄く切開し、心膜に分布する血管を剖出したものです。この奥に漿膜性心膜があります。
縦隔は心臓を基準(中部)として、上か前か後ろかで区分します。心臓の上部にある左右の腕頭静脈や上大静脈、大動脈弓、腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈などは縦隔上部です。

ちなみに肺は左肺が上葉・下葉の2つに分かれるのに対し、右肺は上葉・中葉・下葉の3つに分かれます。心臓の房室弁も左房室弁が二尖弁、右房室弁が三尖弁です。二尖弁は僧侶の帽子ににているので、僧帽弁と言われます。肺も房室弁も左二右三(サニウゾウ)と覚えると、まとめて覚えられておトクです。

後面からの図をみてみます。左右の肺の間に気管・気管支が走行しています。食道を除いているので気管後壁である膜性壁が見えています。気管支は心臓の裏に位置するので、縦隔後部で、気管は心臓の上なので縦隔上部に位置します。
後面から心臓を見ると、左右から2本ずつの肺静脈が左心房へと流入している部位が見えます。

肺と心臓・肺動脈・肺静脈-HL2

こちらは心臓に出入りする肺動脈・肺静脈とその枝を丁寧に剖出した図です。

まず位置関係で大切なのは、心臓に出入りする血管で一番手前に位置するものは肺動脈幹です。心臓は上が心房、下が心室で、さらに左右に分かれていますが、肺動脈が一番手前なので、右心のほうがやや手前に来ていることになります。

心耳は心房の一部ですが、正面からみた場合、右心耳のほうがより前面にせり出してきていることがわかります。左右の心室を隔てる前室間溝はやや左に寄っています。そして後面から見ると、左心房が正中面にきていることがわかります。

上からみて、少し捻りを加えるように右が前にくると、左が後ろにきます。心臓全体としてそのような位置関係となっています。心臓全体としては右前なのですが、冠状動脈は左前(左冠状動脈が前室間枝となる)であることに注意が必要です。
まずは心臓と肺を俯瞰して、少し細かい位置関係もみていきましたが、心臓自体について、基本的なことから再度みていきます。

▶ 胸郭と心臓の位置関係 (心尖部は左第5肋間 鎖骨中線付近)

循環器系-221-03-心尖部は左第5肋間-図

心臓自体は胸郭のほぼ中央に位置し、心尖部が左に偏っています。
心尖部は左の第5肋間で鎖骨中線付近に位置します。
心尖部の位置はよく出題されますので、必ず覚えてください。左第5肋間。乳頭部が通常、第4肋間なので、その下の肋間で、乳頭より少し内側です。

▶ 縦隔 (心臓は縦隔中部)

縦隔の解剖学

左右の肺の間で、前は胸骨、後ろは脊柱に囲まれた領域を縦隔といいます。縦隔は心臓を基準として位置関係を表します。

つまり心臓が縦隔中部。心臓より上を縦隔上部、心臓より前が縦隔前部、後ろが縦隔後部と区分します。

縦隔前部は胸腺と内胸動脈だけです。内胸動脈は胸骨の脇、肋軟骨の後ろを通っています。胸郭を除いたこの図では内胸動脈も図示されていません。胸腺は心臓から肺動脈幹や左腕頭静脈などの太い血管の前面にまたがって存在しています。よって、縦隔前部〜上部にかけて存在しています。縦隔中部は心臓と、心臓に直接出入りする上行大動脈や上大静脈、下大静脈、肺動脈幹や肺静脈なども含まれます。また横隔神経は縦隔上部から中部を通過します。心膜横隔動脈と共に心膜の表面を下行していきます。
大動脈では上行大動脈は心臓に接続する部分で縦隔中部ですが、その後の大動脈弓は縦隔上部、続く胸大動脈は縦隔後部です。
呼吸器系では気管は縦隔上部、気管支は縦隔後部です。また食道や迷走神経、交感神経幹などは縦隔上部から後部へと走行しています。

表と模式図は縦隔の区分と内容物について、簡単にまとめたものです。2年生、3年生などひととおり解剖学を一度学んだ方でしたら、ぜひ全部把握してほしいと思います。しかし、解剖学を学びはじめたばかりの1年生が全部いきなり覚えるのはかなり大変だと思います。
縦隔は、教科書でいえば呼吸器系に記載されています。また肺ところで再度勉強します。ですので、初学者の方々はまずは、心臓は縦隔中部にあること。大動脈弓は縦隔上部胸大動脈は縦隔後部であることをまず抑えておいて下さい。
国試を控えた3年生は、全部おぼえてくださいね。

■ 2. 心膜

循環器系-221-04-線維性心膜・漿膜性心膜-図

心臓は胸郭の中で2層の心膜よりなる心嚢に被われて存在しています。
心膜の内層は漿膜性心膜といい、心臓を包む水座布団のような構造をしています。心臓壁を直接被っているのが臓側板といい、上行大動脈や肺動脈幹の基部で折れ返り、壁側板へと移行します。臓側板と壁側板の間を心膜腔といい、漿液でみたされています。これにより激しく動く心臓の摩擦を低減して、なめらかに動けるようにしています。

そして、漿膜性心膜の外側を線維性心膜がさらに被い、心臓を胸骨後面や横隔膜に固定しています。

漿膜性心膜は漿膜なので胸膜は腹膜と同じ単層扁平上皮線維性心膜は線維性結合組織で構成されています。
心嚢は見た目の用語、線維性心膜、漿膜性心膜は組織学的な名称です。

心膜-HL2-図

こちらは心嚢と横隔膜の図です。心嚢の栄養血管は内胸動脈の枝である心膜横隔動脈で、線維性心膜に分布しています。
線維性心膜と漿膜性心膜については、まずは模式図で勉強したほうが分かり易いと思います。
模式図がしっかり頭にはいった後にみると、
「あ。なるほど。こういうようになっているんだ」と見えてきます。
漿膜性心膜の臓側板は結合組織とあわせて心臓の外膜となっています。

▶ 心タンポナーデ

循環器系-221-10-心タンポナーデ-SQ

湿性心膜炎などで心膜腔に大量の液体が貯留すると、心臓が圧迫され収縮はできても拡張が困難となり、拍出量が減少し循環不全が起きます。これを心タンポナーデといいます。
 心タンポナーデでは静脈還流が阻害されることにより、静脈圧が時間の経過とともに直線的に増加します。静脈圧は通常の血圧計では図れませんが、外見的に頸静脈が怒脹してくることが特徴となります。
一方、動脈圧は自律的な細動脈の収縮によりしばらくの間は正常に維持されます。
しかし、心拍出量の低下と血管収縮による血圧維持が破たんし、突発的な血圧低下を引き起こします。心拍出量が小さいことに加え、心膜腔に貯留した液体により心音微弱となります。

■3. 心臓の壁

【徹底的国試対策】2-2 循環器系 - 心臓.024

心臓の壁心内膜・心筋層・心外膜の3層からなります。心臓は血管系へと続くものなので、血管壁の3層構造と基本的な構成はよく似ています。
心内膜は血管内皮と同じ単層扁平上皮です。
中膜に相当する部位としては心筋層です。左心室が最も強い収縮を必要とするので、心筋層も最も厚いです。
心外膜は漿膜性心膜臓側板と結合組織の層です。冠状動脈が走行する部位です。

【徹底的国試対策】2-2 循環器系 - 心臓.025

【心筋の特徴】
こちらの文章はあはきの解剖学教科書に記載されている文章そのままを抜き出したものです。この意味がきちんとわかりますでしょうか。

まず、『心房では薄いが心室では厚い
心房は血液を受け取るところ、心室は血液を送り出すところです。
心房、心室どちらも収縮しますが、血液の行き先を考えます。心房の血液は心室に送られます。心室の血液は肺や全身に送られます。とくに左心室は大動脈を介して全身に血液を送り出す部位なので、最も強い収縮が必要です。だから心筋層も左心室が最も厚くなっています。

組織学的には横紋を持ち
これは骨格筋と心筋が横紋筋であるということです。これは大丈夫ですね。

各筋細胞の境界には介在板がみられ
心筋細胞どうしのつなぎ目を介在板といいました。ここにはギャップ結合があるのがポイントです。
ギャップ結合はイオンが通過できる小さいトンネル構造となっていて、イオンなどの小分子が通れる構造となっています。イオンが通れるということは、電気的な興奮が伝わるということで、心筋細胞の興奮はギャップ結合を介して、周囲の心筋細胞へと広がっていきます。
筋の興奮を伝え合う』というのは、このことを行っています。
これにより多数の心筋細胞はあたかもひとつの細胞のように一致して収縮します。これを機能的合胞体といいます。

しかし、心房と心室の間は線維束(線維輪+線維三角)によって区切られていますので、直接興奮はつたわらなくなっています。心房から心室への興奮伝導は房室束によって行われます。

▶ 介在板とギャップ結合

【徹底的国試対策】2-2 循環器系 - 心臓.092

心筋細胞どうしのつなぎ目を介在板といいます。介在板にはギャップ結合があり、イオンが通れる構造となっています。
心筋細胞の興奮はギャップ結合を介して、周囲の心筋細胞へと広がっていくことができるようになっています。
多数の心筋細胞から構成される心房や心室はあたかもひとつの細胞のように一致して収縮することができます。これを機能的合胞体といいます。
ただし、心房と心室の間は線維束で仕切られているので、興奮は直接つたわらなくなっています。心房と心室間は刺激伝導系の房室束により伝えられます

▶ 心筋の構造と性質 (骨格筋・心筋・平滑筋との比較)

循環器系-221-14-骨格筋・心筋・平滑筋-SQ

心筋の特徴についてみていきます。筋には骨格筋、心筋、平滑筋の3種がありますが、比較して見ることで、特徴がよくわかるようになります。

まず、筋線維の種類です。筋は横紋の有無により、横紋筋と平滑筋に分けられます。骨格筋と心筋が横紋筋です。

筋線維の形は、骨格筋と心筋が円柱形なのに対し、平滑筋は紡錘形です。

細胞間の興奮伝導による分類では、骨格筋細胞は絶縁伝導です。つまり筋線維は束になって走行していますが、ひとつの筋線維の興奮が周囲の筋線維に伝わることはありません。
一方、心筋の興奮は介在板のギャップ結合により、細胞間をつたわり、全体にひろがります。よって、多数の心筋細胞で構成される心房、心室はそれぞれ、機能的合胞体をなしています。平滑筋もギャップ結合により、心筋ほどではありませんが、有る程度の機能的合胞体をなしています。

神経支配は、骨格筋は体性運動神経の支配を受け、随意的に運動が可能です。一方、心筋と平滑筋は自律神経の支配を受けます。不随意的に働きが調節されます。
自動性というのは、単独で興奮し収縮を引き起こすことです。心筋細胞は特殊心筋でできた結節組織の働きにより自動能があります。少し細かい話ですが、この自動能は特殊心筋が静止電位を持たず、時間と共に脱分極していき、閾値に達する性質にあります。

活動電位の絶対不応期は、骨格筋で短く、心筋で長くなっています。
単収縮の持続時間は、骨格筋で非常に短く、心筋では0.5秒ほど、平滑筋は数秒にわたり収縮します。

強縮は筋の収縮が積み重なり、強い収縮を持続的に引き起こすことです。
骨格筋と平滑筋は強縮が多いのに対し、心筋は単収縮のみです。

疲労に関しては骨格筋細胞は疲労を起こしやすく、心筋、平滑筋は疲労を起こしにくくなっています。

■4. 心房と心室

心臓の外観-HL

心臓は上が心房下が心室。そして左右に分かれています。心房と心室の間には冠状溝左右の心室の間は前室間溝、後室間溝が走っています。冠状溝と室間溝に通っている血管がよく出題されます。血管についてはまた後でみます。

はじめにも話ましたが、心臓の一番下部は心尖で、左第5肋間鎖骨中線付近に存在します。上の太い血管が出入りしているところは心底といいます。
また外観で抑えておいてほしいところは、心耳は心房の一部ということです。上行大動脈や肺動脈幹の根本の部分に心房がせり出してきている部位で、心臓の耳のように見えるので心耳といいます。

あとは心臓は真上からみて反時計回りに少し捻ったような構造をしています。つまり右が前にきます。よって、右心室のほうが正面に来ています。

心臓に出入りする血管の位置関係としてよく出題されます。最も手前にあるのは肺動脈幹です。抑えておいて下さい。
右が前にくるということは、左が後ろにくるということで、後部は左心房が正中にきています。また心臓全体としては右前ですが、冠状動脈は左前となることに注意してください。前室間枝は左冠状動脈の枝。とても大切です。

▶ 心臓内の血液の流れ

循環器系-222-05-心房と心室-図

心臓内の血液の流れについてみてみます。
右心房、右心室、左心房、左心室に何が出入りしているかが重要です。
丸暗記でも覚えられますが、やはり理屈付けして理解することで、記憶が強固となり、応用力もつきます。

まずは右心には静脈血、左心には動脈血が流れています。そして心房は血液を受け取るところ心室は血液を送り出すところということを当てはめます。

つまり右心房は静脈血を受け取る場所。上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞が入ります。冠状静脈洞は心臓自身を養った静脈血が集められます。
右心室は静脈血を送り出すところ。つまり肺動脈幹が出ます。
左心房は動脈血を受け取る場所。左右の肺静脈が入ります。
そして、左心室は動脈血を送り出すところ。上行大動脈が出ます。
理屈付けして覚えることにより、すんなりと覚えられ、そして忘れにくくなります。

▶ 体循環と肺循環

循環器系-222-03-肺循環と体循環-図

このように右心は静脈血左心は動脈血が流れています。
体循環は左心室から始まり、全身に酸素と栄養を送っています。そして全身をめぐった血液は右心房へ還ります
肺循環は右心室から始まり、肺で二酸化炭素を放出し、酸素を取り入れて左心房へと戻ります

■5. 心臓の弁膜

循環器系-222-18-心臓の弁膜-図

心臓の弁膜についてです。
心房と心室の間には房室弁が、心室の出口には動脈弁があります。
房室弁は左房室弁は二尖弁、右房室弁は三尖弁です。二尖弁は僧侶がかぶる帽子に似ているので、僧帽弁と呼ばれます。

左二右三(サニウゾウ)、二尖弁は僧侶の帽子ににているので僧帽弁。
ちなみに、肺葉も左二右三です。一緒に覚えちゃうとあとでおトクです。房室弁も肺葉もサニウゾウ。

心臓の弁膜-横長-図2

こちらは心房側、心室側それぞれからみた弁膜のようすです。

房室弁には腱索を介して乳頭筋につながっているところも重要です。乳頭筋は心室筋の一部です。心室が収縮するときに、乳頭筋も一緒に収縮します。そして,腱索を介して房室弁を固定することで、心室収縮時に房室弁が心房側に翻って血液が逆流しないようにしています。

一方、動脈弁は右心は肺動脈弁、左心は大動脈弁です。どちらも3枚の半月弁よりなります。動脈弁には腱索と乳頭筋は付着していません。
半月弁はドラえもんのポッケのような形をしていて、心室が収縮し血液が出るときには、ポッケが潰れて、血液が流れ出ていきます。心室が拡張を始めた時に、血液が心室に引き戻される力が働きますが、このときに3枚の半月弁が膨らむことで血液の逆流が阻止されます。

心臓の弁膜-右心房・三尖弁・右心室-図

こちらは右心房と三尖弁、右心室の様子です。
右心房には上大静脈、下大静脈と冠状静脈洞が開口しています。
この図で注目してほしいのは、下大静脈のすぐ隣の心房中隔に卵円窩があることです。これは胎児循環の卵円孔が閉鎖したものです。
心室側をみると、三尖弁に付着している腱索と、それにつづく乳頭筋が見えます。また肉柱は心室にみられる網目状の筋のもりあがりです。

心臓の弁膜-三尖弁・右心室・肺動脈弁-図

こちらは右心室からみた三尖弁と肺動脈弁です。腱索と乳頭筋が三尖弁を固定しているのが確認できます。
また肺動脈弁・大動脈弁ともに3枚の半月弁よりなります。ドラえもんのポケットのような半月弁が3つ並んでいます。

心臓の弁膜-左心房・僧帽弁(二尖弁)・左心室-図

こちらは左心房・僧帽弁・左心室の様子です。
肺静脈は左右2本ずつあるので、計4つの孔が開いています。
こちらは左心房・僧帽弁・左心室の様子です。
心房中隔には卵円窩が確認できます。

僧帽弁を越えて、左心室に注目すると、まず左心室は最も壁が厚いことが確認できます。また僧帽弁に付着する腱索と乳頭筋がみられます。
また左心室は発達した肉柱もみられます。肉柱は心拍出容量に応じて内腔を拡げ伸び縮みすることができる構造です。心室にみられる構造です。

心臓の弁膜-僧帽弁・左心室・大動脈弁-図

こちらは左心室からみた僧帽弁と大動脈弁です。腱索と乳頭筋が僧帽弁を固定しているのが確認できます。

また、3枚の半月弁よりなる大動脈弁もみられます。注目してほしいのは、大動脈弁のすぐ上に冠状動脈の分岐部があることです。
心室が収縮して血液が駆出される際には、半月弁がつぶれることで血液が流れ出ていきます。

そして心室が拡張する際には血液が引き戻される力が働きます。このときに3枚の半月弁がふくらむことで逆流が阻止されます。そして少し引き戻された血液はそのまま冠状動脈へと流れていきます。
この仕組みにより、冠状動脈の血流は心室収縮時にも上昇しますが、拡張期の始まりに多く流れるようになっています。

▶ 冠状動脈の血流は拡張期初期に増加

循環器系-222-冠状動脈の血流-図

冠状動脈の血流は心臓の収縮期にも流れますが、むしろ拡張期の始めに増大します。
心臓が収縮し血液を送り出すときは大動脈弁がつぶれて血液が流れていきます。その後、心臓が拡張する時に血液が吸い戻される力が働きます。
この時に大動脈弁が広がり、逆流が防がれ、その勢いで大動脈弁のすぐ上から始まる冠状動脈へと血液が流れていきます。

▶ 線維束(線維輪と線維三角)

循環器系-222-18-線維輪-図2

房室弁や動脈弁の付着部となる結合組織の輪を線維輪といい、線維輪の間を埋める結合組織を線維三角といいます。
そして線維輪と線維三角を合わせて線維束といい、心房と心室を区切っています
線維輪は心臓の骨格としても働き、心房筋や心室筋はそれぞれ、線維輪に捻りをともなって付着しています。
心房と心室は線維束により隔てられているので、興奮伝導は線維三角を貫通する(房室束)ヒス束により行われます。

▶ 心周期

循環器系-222-心周期-図2

心臓の収縮・拡張のリズムを心周期といいます。収縮期はさらに等容性収縮期と駆出期、拡張期は等容性弛緩期と充満期に分かれます。
試験では、弁が閉じているか、開いているかについてよく出題されます。
心周期の考え方についてコツをお話します。

まず、心周期の名称については、すべて「心室の状態」であることです。心臓は心房と心室からなりますが、主役は心室であると考えて下さい。
そして「等容性」とあれば、全ての弁が閉鎖していることを示します。どれか弁が開いていたら、心室内の血液量が変わってしまうので等容性ではなくなります。
名称は心室の状態。そして等容性は全ての弁が閉まっていることを前提に考えると、わかりやすくなります。

まずは等容性収縮期
全ての弁がしまった状態で心室が収縮します。心室容積は一定ですが、心室内圧は上昇してきます。
そして、心室内圧が動脈圧を超えると動脈弁が開き、心室から血液が駆出します。だから駆出期です。
血液を絞りきると、次は心室が拡張してきます。
心室内圧の低下にともない、動脈弁が閉鎖し、等容性弛緩期に入ります。等容性弛緩期では、全ての弁が閉鎖した状態で心室が弛緩してきます。心室容積は一定ですが、心室内圧は下降します。
そして心室内圧が心房内圧より低下すると、房室弁が開き、心室に血液が流入し充満します。だから充満期です。
心室は再び収縮を始め、房室弁が閉鎖し、等容性収縮期へと入ります。

また、ドックン, ドックンという心音は弁の閉鎖によって生じます。
房室弁が閉鎖するときに生じる心音がI音で、収縮期の開始時に出現するやや低い周波数の音です。ドックンのドッです。
動脈弁が閉鎖するときの心音はII音で、拡張期の開始時に出現するやや高い周波数の音です。ドックンのクンです。

■ 6. 刺激伝導系

【徹底的国試対策】2-2 循環器系 - 心臓.043

心筋には収縮に適した固有心筋と、興奮の発生と伝導に適した特殊心筋の2種類があります。

心臓の拍動のリズムを決める刺激伝導系は特殊心筋で構成されています。(刺激伝導系は神経線維ではないことがよく出題されます。)

循環器系-223-03-刺激伝導系-図2

ここから先は

3,866字 / 9画像
この大変な時代に医療従事者を目指す方々へ。時代は変化していますが、いつの時代でも大切なことは不変です。それは勉強を続けること。今日という日、今という時間を大切にすること。解剖学は医学の最も基礎となる学問です。

あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師をはじめ、柔道整復師、理学療法士・作業療法士や看護師、医師を目指す方々の解剖学国家試験対策のマガジ…

私の知識やスキルなどが、どこかの誰かのお役に立てることはとても嬉しいことです。ありがとうございます。