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【1-3(1)】 体表構造(皮膚) 解説

↑ 解剖学マガジン記事一覧(目次)

【1-3 皮膚】

第1章 人体の構成 資料配付ページ
■【1-3(1)】皮膚  解説(この記事)
【1-3(2)】皮膚  一問一答
【1-3(3)】皮膚  国試過去問解説

→ 【1-4 人体の区分と方向】

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− 学習のポイント −

1. 皮膚の表面積と熱傷について
総面積:1.6m2、重さ:9kg(体重の16%)、
熱傷深度、9の法則

2. 皮膚の構造

表皮(角化重層扁平上皮):ケラチン、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞
真皮(密性結合組織):真皮乳頭、血管網は真皮まで、皮下組織(疎性結合組織):脂肪細胞
※汗腺・血管・立毛筋は交感神経の単独支配、
※褥瘡について
 (褥瘡予防では、2〜3時間ごとの体位変換が必要)

3. 皮膚に存在する感覚受容器と神経

感覚受容器の存在する位置
 表皮:自由神経終末、メルケル小体 / 真皮:マイスネル小体、ルフィニ小体 / 皮下組織:パチニ小体
※自由神経終末は温痛覚、他は触圧覚を受容 ※触圧覚:Aβ 速い痛覚:Aδ 遅い痛覚、温度覚:C

4. 毛と爪について

毛と爪は表皮の変形したもの、毛の構造、爪の構造

5. 皮膚腺について

エクリン汗腺、アポクリン汗腺、脂腺の分泌様式、脂腺とアポクリン汗腺は毛包に付属する、
乳腺は汗腺の変化したもの(アポクリン分泌)、乳腺の構造、乳腺に作用するホルモン

■1. 皮膚の表面積と機能

 皮膚は総面積がおよそ1.6m²(ほぼ1畳分)、重さ約9kgで、体重の約16%を占める、人体最大の器官として、さまざまな役割を担っています。

皮膚の6大機能

全身をくまなく被う皮膚の作用は主に6つに分けられます。
保護作用:体外からの様々な刺激から身体を守り、体内からの水分喪失を防いでいます。
分泌作用:汗や皮脂を分泌します。
体温調節作用:暑い時には汗を出し、寒い時には立毛筋を収縮させます。
貯蓄作用:皮下組織に脂肪を蓄えます。
排泄作用:発汗による水分や塩分の排泄を行なっています。
知覚作用:感覚受容器を介して、触覚や痛覚、温度覚を受容します。

▶ 熱傷深度

熱傷深度の分類

皮膚に関連して、熱傷(やけど)のお話です。
熱傷は損傷の程度により1〜3度に分類されます。

I度は最も軽いやけどで、損傷部位は表皮で留まっています。発赤・紅斑がみられ、疼痛・熱感を感じますが、数日で治ります。

損傷が真皮にまで達しているII度は、浅達性II度と深達性II度に分類されます。
浅達性II度水疱が形成され、水疱底の真皮は赤色を呈します。強い疼痛がありますが、1〜2週間で治ります。
深達性II度水疱が形成されますが、水疱底の真皮は白色で貧血状を呈します。また知覚鈍麻がみられます。深達性II度のやけどは3〜4週で治癒しますが、瘢痕を残す可能性が大きいです。熱傷の部位や広さにより、植皮が行われる場合もあります。

また最も重傷となるIII度のやけどでは、皮膚全層の損傷により蒼白、時に炭化の状態となります。感覚受容器の機能も失われるため疼痛がなくなります。熱傷壊死組織には血流がなくなって、感染源となるため壊死組織の除去(デブリードマン)を行い、植皮をいたします。

II度で10%以下、III度で2%以下を軽症熱傷とし、
II度で30%以上、III度で10%以上を重傷熱傷とします。
重傷熱傷では血管透過性の亢進により血漿が血管外に大量に漏出し、循環血漿量の減少が生じることにより、ショックの危険性があります。よって、損傷部位への感染予防と同時に補液に注意を払う必要があります。

▶ 9の法則

9の法則

熱傷の広さを求めるのに「9の法則」が使われます。
頭部の表面積が9%、上肢が左右それぞれ9%、下肢は前面9%、後面9%、体幹は前面左が9%、前面右が9%。後面も同様に9+9%。外陰部が1%です。

■2. 皮膚の構造

皮膚の構造(表皮・真皮・皮下組織)

皮膚は表皮真皮皮下組織の3層構造です。
組織の種類も確実に抑えて下さい。
表皮は重層扁平上皮。真皮は密性結合組織、そして皮下組織は疎性結合組織です。

手掌と足底を除く皮膚全体に毛が生えています。毛の表面に見えてみる部分を毛幹といい、皮膚内部に埋もれている部分を毛根といいます。
皮膚内部で毛根は表皮から続く毛包に被われています。この図ではありませんが、毛包最下部の毛母基の細胞が分裂して、毛となります。
毛包には鳥肌をたたせる立毛筋が付着しています。交感神経により支配される平滑筋です。立毛筋は寒い時に鳥肌をたたせます。ヒトでは関与が少ないですが、体毛で被われた動物では空気層の暑さが増し、放熱が抑制されます。

油を分泌する脂腺は毛包に付属しています。頭を何日もあらわないと油っぽくなってくるのは、毛包に脂腺が開口しているからなんですね。脂腺はホロクリン分泌全分泌)により分泌します。手掌と足底には毛が無いので脂腺も存在しません。

エクリン汗腺小汗腺ともいわれ、開口分泌により汗を分泌します。分泌部は真皮内部にありあすが、導管は体表に汗孔として直接開いています。

皮下組織は、脂肪細胞が豊富な疎性結合組織で、丈夫な真皮と筋膜の間をゆるやかに繋ぎ合わせます。

▶ 表皮の構造

表皮は角化重層扁平上皮で5層構造です。一番底から、基底層、有棘層、顆粒層、淡明層、角質層の順です。

細胞が表面に近くなるにつれて細胞内部にケラチンが蓄積してくる過程を角化といいます。

一番深層の基底層では通常のケラチン産生細胞の他に、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)とメルケル細胞が存在します。基底層の細胞はさかんに分裂・増殖が行われ、表皮細胞の新生・補充が行われています。

有棘層は、多面体状の数層ないし数十層の細胞が互いに棘のように突起を伸ばし細胞間橋をつくって繋がっています。これは表皮にかかる張力により細胞が離れてしまうのを防ぐ働きがあります。突起同士の連結部にはデスモソームが発達しています。

顆粒層はケラチンの前駆物質と考えられるケラトヒアリン顆粒で満たされることから、この名がつきました。

淡明層は色素に染まりにくく、顕微鏡で観察しにくいことから名付けられました。顆粒層で見られた核とケラトヒアリン顆粒は消失しています。

角質層は一番表層で、細胞内部はケラチンで充満し、核は抜け落ちてしまい細胞としては死んでしまっています。しかし、平たくなって積み重なることで、私たちを乾燥から守ってくれています。

まとめます。
5層全部覚えるのが大変でしたら、一番下が基底層、一番表面が角質層をまず覚えてください
そして、この後またでてきますが、基底層にはメラノサイトとメルケル細胞も存在しています。

 ・ 表皮に存在する細胞

・ケラチン産生細胞(ケラチノサイト)

ケラチン産生細胞(ケラチノサイト)は表皮細胞の約90%を占めます。最深部の基底層で増殖し、 表層に移動するにつれて徐々にケラチンが蓄積し、脱核変性して角質層となります。この過程を角化といい、 約4週間で表面に達し垢としてはがれ落ちます。

・メラニン産生細胞(メラノサイト)

メラニン産生細胞(メラノサイト)は表皮基底層に存在

メラノサイト(メラニン産生細胞)は表皮基底層に存在し、周囲のケラチン産生細胞にメラニン色素を含むメラノソームと呼ばれる袋状の構造物を供給します。この働きによりケラチン産生細胞にメラニン色素が供給され、皮膚が黒くなります。

・ランゲルハンス細胞

ランゲルハンス細胞(表皮有棘層に存在するマクロファージ)

ランゲルハンス細胞表皮に存在するマクロファージの一種。表皮に侵入した抗原物質を取り込み、 局所リンパ節に移動。Tリンパ球に抗原提示を行います。

近年、このランゲルハンス細胞とアレルギーとの関連が指摘されています。たとえば、ピーナッツなどの食物アレルギー。かつては食物アレルギーは食べ物経由で感作すると思われてきました。しかし、皮膚のバリア機能が低下した状態でピーナッツなどが皮膚に触れることにより、ランゲルハンス細胞が抗原を補足することにより、抗原提示がおこなわれて感作が成立することがわかってきています。これを経皮感作といいます。とくに乳幼児にとっては、皮膚のバリア機能をたもってあげることが、アレルギーの予防にとても効果的です。

・メルケル細胞

メルケル細胞は表皮基底層に存在

メルケル細胞表皮基底層に存在し、神経線維とともにメルケル盤を構成します。触圧覚、特に圧の強さを感受する強度受容器として働きます。
メルケル細胞もメラノサイトも表皮基底層に存在することがよく出題されます。

▶ 真皮

真皮の構造(乳頭層と網状層)

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