【2-3(1)】 循環器系 - 動脈系 解説
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【2-3 循環器系 - 動脈系】
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− 学習のポイント −
1. 肺循環の動脈系
肺動脈は肺の機能血管(静脈血が流れる)、動脈管索
2. 体循環の動脈系
2-1. 大動脈
上行大動脈、大動脈弓、下行大動脈(胸大動脈 − 大動脈裂孔 − 腹大動脈)
2-2. 上行大動脈および大動脈弓とその枝
上行大動脈の枝:左右の冠状動脈
大動脈弓の枝:腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈(腕頭動脈:右総頚動脈、右鎖骨下動脈)
2-3. 胸大動脈とその枝
壁側枝(有対性):肋間動脈、上横隔動脈 / 臓側枝(無対性):食道動脈、気管支動脈
2-4. 腹大動脈とその枝
壁側枝(有対性):腰動脈
泌尿・生殖器に至る臓側枝(有対性):腎動脈、精巣・卵巣動脈(性腺動脈)
消化器系に至る臓側枝(無対性):腹腔動脈、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈
2-5. 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝
臓側枝:臍・膀胱・子宮・直腸に分布
壁側枝:腸腰動脈、内陰部動脈(梨状筋下孔から出て、小坐骨孔より骨盤底に入る)
下肢に向かう枝:閉鎖動脈(閉鎖管)、上殿動脈(梨状筋上孔)、下殿動脈(梨状筋下孔)
■ YouTube 動脈系 解説
■1. 肺循環の動脈系
位置関係で大切なのは、心臓に出入りする血管で一番手前に位置するものは肺動脈幹ということです。心臓は上が心房、下が心室で、さらに左右に分かれていますが、肺動脈が一番手前なので、右心のほうがやや手前に来ていることになります。
右肺動脈は大動脈弓の下をくぐり、右肺門に達します。左肺動脈は右肺動脈よりやや短く、胸大動脈の前を横切り、左肺門に達します。
冠状動脈は左前ですが、心臓本体は右前左後ろとなっています。よって、後面からみる正中線には左心房が来ています。
肺静脈は4本あり、左右両側に2本ずつ肺門よりでて、ほぼ水平に走り左心房の上後部に入ります。
肺と心臓,肺動脈と肺静脈 | 徹底的解剖学(暗記用スライダー画像)
▶ 動脈管索
肺動脈幹と大動脈弓の間には動脈管索というヒモがあります。これは胎児循環の際に開通していた動脈管の名残です。
胎児の頃は、肺呼吸の必要がないので、肺動脈からの血液は動脈管を通り大動脈弓にバイパスされています。
出生後、動脈管は退化し、結合組織性のヒモとなります。これが動脈管索です。
▶ 参考)動脈管開存症
新生児期を越しても、胎生期の動脈管が閉鎖せず開いたままに残ったものを動脈管開存症といいます。胎生期は肺血管抵抗が高く、右心室から駆出される血液量のおよそ90%は動脈管により大動脈弓へと流れます。出生後は肺血管抵抗の減少、末梢血管抵抗の増加、血圧上昇や卵円孔の閉鎖とともに、動脈管は1ヶ月程度で閉鎖します。動脈管はもともと肺動脈の血液を大動脈弓へと送りますが、動脈管開存症では高い大動脈圧により大動脈から肺動脈へと左 → 右への短絡が生じます。乳児期にうっ血性心不全や発育不全を起こしやすくなります。
動脈管索:肺動静脈と大動脈弓の間(胎児循環 動脈管の遺残組織) | 徹底的解剖学(暗記用画像スライダー)
2. 体循環の動脈系
■2-1. 大動脈
▶ 大動脈とその枝(模式図)
動脈系について見ていきます。ここでは主に大動脈とその枝について学びます。
大動脈は
① 上行大動脈 → ② 大動脈弓 → ③ 下行大動脈と続きます。
下行大動脈は胸大動脈と腹大動脈からなります。両者の境は横隔膜です。胸大動脈が横隔膜の大動脈裂孔を通過すると腹大動脈となります。
詳細な図については、このあと見ていきますが、まずは表と簡略化した模式図でおおまかに抑えると良いと思います。
上行大動脈は心臓からでたばかりの所で、左右の冠状動脈が出ます。左前右後ろが重要です。
大動脈弓は胸骨柄の後ろで左後方へと曲っている部分です。
① 腕頭動脈 ② 左総頚動脈 ③左鎖骨下動脈を分岐します。 腕頭動脈は右総頚動脈と右鎖骨下動脈へと分かれます。
大動脈弓は文字通り「弓なり」となっている部分。その後、下向きになって、「下行大動脈」となります。
下行大動脈は胸大動脈と腹大動脈からなります。この2つに関しては、「壁側枝」と「臓側枝」に分類して覚えてください。
有対性か無対性かも問われます。壁側枝は必ず有対性です。
まず、胸大動脈です。
壁側枝は肋間動脈と上横隔動脈があります。
胸大動脈の壁側枝としての肋間動脈は第3肋間動脈からで、最上肋間動脈(第1)と第2肋間動脈は鎖骨下動脈の枝、肋頚動脈から分かれます。
上横隔動脈は横隔膜上面を養う動脈です。
胸大動脈の臓側枝は気管支動脈と食道動脈があります。
気管支動脈は気管や気管支に分布し、そのまま肺にも分布します。肺の栄養血管として出題されますので、覚えてください。
気管支動脈は1本ではなく、複数でます(4本が最も多い)が対をなしているとは見なしません。胸大動脈の臓側枝は無対性です。
食道動脈は食道を栄養します。こちらも複数(4,5本)でますが、無対性です。
そして、胸大動脈が横隔膜の大動脈裂孔を通過すると腹大動脈となります。
腹大動脈は① 壁側枝(有対性) ②主に消化器系に至る臓側枝(無対性) ③泌尿生殖器に至る臓側枝(有対性) に区分されます。
壁側枝は下横隔動脈と4対の腰動脈があります。
下横隔動脈は文字通り、横隔膜の下面を養います。
腰動脈は肋間動脈に相当するもので、4対あり、腹大動脈の後壁から出て、腰の筋や側腹筋、前腹筋に分布します。
腹大動脈の消化器系に至る臓側枝は ① 腹腔動脈 ② 上腸間膜動脈 ③ 下腸間膜動脈の3つがあります。 腹大動脈より正面にでてくるので無対性です。
腹腔動脈はすぐに左胃動脈、脾動脈、総肝動脈の3つに分かれます。上腹部、ミゾオチのあたりの消化器系と脾臓に分布します。
上腸間膜動脈はおおまかに、小腸〜結腸前半部に分布します。
そして、下腸間膜動脈は結腸後半部から直腸上部に分布します。
腹腔動脈の泌尿生殖器に至る臓側枝は腎動脈と精巣・卵巣動脈があります。腎臓も精巣・卵巣も左右にあるので、有対性です。
腎動脈は、そのまま腎臓を栄誉する動脈ですが、ここで注意したいのは精巣・卵巣動脈です。
胎生期に精巣や卵巣の原基は腎臓のすぐ下に発生します。そして胎児の成長とともに下行します(精巣下降・卵巣下降)。
だから精巣動脈や卵巣動脈はナマズのヒゲのように、あんな高いところから出てるのです。
精巣動脈・卵巣動脈は「腹大動脈の直接の枝」であることがとても重要です。
大動脈とその枝(模式図) | 徹底的解剖学(暗記用画像スライダー)
▶ 大動脈の全体像 前面
こちらは内臓器をすべて摘出した状態で大動脈の全体像をみた図です。
各部位の枝については、表と模式図のほうが分類して覚えやすいと思いますが、詳細な図においては、大動脈の走行についてより詳細にイメージできるようになっていただけたらと思います。
胸大動脈は胸椎の左側を下行していますが、負大動脈に移行すると、腰椎前面を走行するようになります。
気管支動脈や食道動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈はそれぞれ胸大動脈、腹大動脈の前面より出てます。左右にでていないので、無対性です。
4対の腰動脈は、それぞれ第1〜第4腰椎の前面より、大腰筋の後面に入り込んでいきます。また、右の腰動脈はすべて前面を下大静脈が覆います。
大動脈の全体像 前面 | 徹底的解剖学(暗記用画像スライダー)
▶ 大動脈の全体像 側面(壁側枝を中心として)
こちらは側面より見た図です。
肋間動脈に相当するものが腰動脈であることがよくわかります。肋間動脈は胸大動脈の後ろ側より左右でて、肋間部を後ろから前に走行します。
一方、鎖骨下動脈の枝、内胸動脈の前肋間枝は肋間を前から後ろに走行します。そして、両者は側胸部にて吻合いたします。
内胸動脈は腹壁に入ると上腹壁動脈となり、外腸骨動脈の枝である下腹壁動脈と吻合します。
また、この図では、最上肋間動脈(第1肋間)と第2肋間動脈が鎖骨下動脈の系統であることがよくわかります。
胸壁・腹壁に分布する動脈(大動脈の全体像 側面より) | 徹底的解剖学
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