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#19 夏の空と石焼き芋

ついに梅雨も明け
クーラーを付け閉め切った部屋に聞こえてきたのは
石焼き芋のトラックからのあの歌だった。

にわかに信じ難く、少し耳を澄ませる。
おぉ…、間違いない。
石焼き芋を売る車が近くに来ている
この辺りにも来るんだ・・・
しかも夏なのに。


飲んだ帰りの真冬の赤坂で
あまりの寒さと酔った勢いで
トラックで売ってた焼き芋を買って
カイロがわりに
コートの中で抱き抱えて帰ってきたのが
わたしの最後の焼き芋だった
あのおじさんは元気なのだろうか

とか思い出しつつ
マスクとお財布を掴んで外に出てみたら
焼き芋屋さんが車から出てきてくれた
しわしわのおじいちゃんが
いかにも焼き芋屋さんなキャップをかぶっていて
もうそれだけでたまらない気持ちになってしまった

昔からおじいちゃんという生き物によわい

紅はるかは食べたことがありますか?
と、ゆったりした動きで でも無駄なく
ずらりと並んださつまいもを見せてくれた
おじいちゃんからするとうんと年下なわたしにも
すごく丁寧に接してくれて
さらにたまらない気持ちになってしまった

なんと試食まで勧めてくださったが
もう全面的に信頼しかなく
希望のものより大きいのをいただく事にした
おこがましいけど
ほんの少しでも貢献したい
そんな気持ちにもなってしまった

しわしわの手が選んでくれた焼き芋は
恐ろしい程しっとりと甘くて濃厚
人から買うっていう事を久々にした
それだけでもっと特別美味しく感じる
見せてくれたさつまいも
ぜんぶ売り切れたらいいのになぁ…

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色々思った通りにできない日々だけど
しあわせを見つけることも
上手くなったように思うし
明るいところをみて過ごそうと思ったり
そんな8月最初の週末は
ぴかぴかの青空だったので
どうにもこうにも救われた気持ちで
胸がいっぱいになった。


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