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ハードだけど、あがいてみよう。

言葉には魂がこもる。
いわゆる「言霊」だ。

「あの人嫌いなんだよね」と口に出せば、もっと嫌いになる。
「あー面倒くさい」と言葉にすれば、もっと面倒くさくなる。

…そんな気がして、心では思っていても口には出さないようにしていることがある。
それに、そういうことはだいたい「できない言い訳」であったり、口にしたってどうにもならないことだったりする。「あーおなかが痛い!」と口にしたところで、痛みは治まらないのと同じ。
痛い痛いといって痛いのが飛んでいくなら、いくらでも口に出すさ。

PREP法といって、結論→理由→例→結論の順に話を展開しましょうと、とくにビジネスの場面ではよくいわれる。
ビジネスだけじゃなくプライベートでも「R」をだらだら話せば言い訳がましく、冗長に捉えられがちなこともままある。

ただでさえ話し上手ではないわたしだ。
話しはじめるとつい、あれもこれもと長くなりがちなので、P・R・E・Pどころか「Pのみ」ということも少なくない。

とにかく、ネガティブなことは自分のためにも口には出したくないのだ。
心のなかでは叫んでいても。

∽∽∽

話は変わるが、わたしは都会生まれ都会育ち、都会の生活に慣れきった人間である。
ところが夫は転勤族。
赴任先は田舎が多い。

田舎を否定するわけではないけれども、はじめての転勤では街や生活の違いっぷりになかなか馴染めなかった。

移動手段は車がデフォルト。
いちばん栄えている場所は隣町のイオンモール。
昼間、街を歩いてもすれ違う歩行者がいない。
それどころかドライバーは「歩行者なんていないもの」と思っているため、信号のない交差点で、スーパーの出入り口で、あわや接触しそうになることもしばしばだ。

え、みんな洋服はどこに買いに行っているのかな?
ドトールやスタバはどこにあるのかな?
ていうか駅前なのになんにもなくない?
ていうか居酒屋にも駐車場!?

それでも、誰か話し相手が夫以外に外にいればまだ気が紛れるが、知り合いすらゼロというのは当時はかなりこたえた。

…夫の転勤についていった奥さんのなかには、赴任先にどうしてもなじめず、離婚してしまった人もいる。
まあ、赴任先になじめなかったことだけが原因ではないだろうけれど。

それにくらべればまだ、わたしは適応力があるほうなのかもしれない。

∽∽∽

先月は実家に帰り、5年ぶりに中学時代の友だちと街でショッピングを楽しんだ。

「こういうお店が、近所とはいわなくても、がんばらずに行ける距離にあればいいのになあ」となんの気なしにつぶやいたわたし。

友人はわたしに問う。
「え、あんた今どんなとこに住んでんの?」

こんなおしゃれな路面店なんて、車数十分走らせてもあるかどうか。
頼みのショッピングモールも車じゃないと行かれない。
歩いていける範囲にスーパーとジムがあるのが、救いかな。
小さいけれど、本屋もあるし。

そう答えると、彼女ははっきりこう言った。
「そりゃなかなかハードだね」

みる人がみれば、今わたしの住んでいる街だって栄えていると感じるかもしれない。
世の中には『ポツンと一軒家』に出てくるようなTHE田舎だっていっぱいあるだろうし、まあそれは極端だったとしても、今わたしが住む街よりももっと田舎街はあるだろう。

でも、都会で生まれ育ってしまったわたしにとっては、やっぱりなかなかハードだなって。
同じ街で生まれ育った友人にはっきり「大変だね」って言葉にしてもらえて、そのひと言だけですごく浮かばれた気がした。
「この程度でハードだとか口にしてはいけない。口にしたら毎日もっとハードに感じてしまう」と、心の奥底に押し込めてきた息苦しさが。

そう、たしかにハード。
ときには泣き言もいいたくなるし、嫌になっちゃうこともあるけど、それでも次の転勤までの期間限定だから。
最後には「これはこれで住みやすい街だったな」っていえるように、あがいてみるよ。

本当に言霊の力が働くのだとすれば、最後にひと言こう言おう。
わたしは、あがける。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが住んでいる街は、どんな街ですか?

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