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【日記小説】冷たい春


2023.2.25

今日は大学生の知り合いが大学卒業の記念に舞妓体験をするというのでカメラマンを依頼され清水坂で撮影した。
その清水坂に向かう途中、電車で真隣に立っていた女性が電車降りても全く同じ進路を歩き、気づけばぴったりと真横に並んで歩いている。
見ず知らずの女性とは思えないくらいの距離感でぴったり、カップルのように並んで清水の方へ向かって歩く。

体を離しても気が悪いし、かといって見ず知らずの男女が体を寄せ合うというのは、いくら奇怪な行動をとる自分でも恥ずかしく感じる。
ドキドキしながらも、この状況にむしろ笑えてきてしまい、もう少しで吹き出ししまうところだった。
最近こういった不思議な体験をよくするのはなぜだろう。
結局その女性とはある地点ではなればなれに、緊張からの解放と一抹のもの寂しさを感じた。

清水坂の着物体験の場所へ着き、着付けをしている友人とその友人を待つ。
出てきた二人は玄人が見ない限り舞妓さんにしか見えなく、外へ出れば外国人の格好の的となった。
自分は歩いている姿を動画に収めたり、八坂の塔などの前で止まって写真撮影する。
自分のようなプロでもなんでもない、中途半端にカメラを触る人間が撮って大丈夫なのかと卑下でも何でもなくそうずっと思っていた。
無事に撮影が終わり、鴨川沿いを歩いて七条のマクドでお昼を食べて帰ることにした。

今日はとても寒く時折小さな雪の欠片が落ちてくるも、よい天気だった。日が差す鴨川の水面を見ているだけで心地が良い。
マクドの店内には9割くらいが女子校生で、普通に食べているだけでなんだか悪いことをしているような気がしてならなかった。
寒さの中の春の気配と少しの倦怠に包まれながら、バーガーを頬張り、ポテトを小刻みにつまんでいく。

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