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NIRVANAを歌いながら
あたしとパートナーは昼寝が大好きだ。昼寝は一人でしても最高だが、二人でするともっと心地いい。存分にセックスを楽しんだ後の昼寝もあれば、絡まりあってただ寝ているだけのこともある。どちらにせよあたしたちは、ぴったりくっついて親密に語り合いながらまどろむ。
ある日、ベッドに体を投げ出したままの格好であたしはふいに思いついた。「何か歌でも歌おうか?」無論アカペラだ。あたしは下手なのに歌を歌うことが好きだ。そうねぇ、とパートナーは考え、ややあってクスクスと笑いだした。「NIRVANAはどう?」と。
あたしは当然面食らった。「ニルヴァーナぁ?」NIRVANAはあたしが敬愛するアメリカのロックバンドだ。ボーカルのカート・コバーンは1994年、27歳のころにピストルで頭を撃ちぬいて死亡した。妻のコートニーは夫の訃報を聞いて「楽な道を選びやがって!」と激怒し、そして号泣したらしい。時として、死ぬことが生きることよりも楽に思えることを、あたしは知っている。
NIRVANAは好きだが、セックスのあとの甘い雰囲気にはふさわしくない。まったくもってふさわしくない。「合わないよ」「いいじゃない、リチウムとか」リチウムはNIRVANAの名曲だ。死んでしまえ!俺はクラックコカインなんてやってない!とカートが繰り返し叫ぶ曲。
「まったく合わない」パートナーは意に介さず一人でメロディーを口ずさみはじめる。それをあたしは仏頂面で聞く。これもこれで悪くないかな、なんて思いながら。そしてサビではあたしも思わず一緒になって歌う。
リチウムを歌ってもらったお礼にあたしはプレスリーのラブミーテンダーを歌った。パートナーは聖歌でも聞くような神妙な面持ちでそれに耳を傾ける。「なんだか聞いたことがある」と言って。二人とも裸のまんまで。
後日、ある曲を繰り返し聞いているうちに、メロディーを覚えてしまった。その曲はもちろんNIRVANAで「アニュリズム」という。カートらしい、破壊的なラブソングだ。「最近はこればかり聞いているのよ」というと、パートナーは複雑そうな顔をした。「タイトルも歌詞もすごいね」
アニュリズムは、「動脈瘤」を意味するのだと彼に聞いて初めて知った。
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