子どもの限界を決めてしまう親たち②

前回の記事では、「危ないからやめなさい」など、禁止の言葉が子どもが成長する可能性を狭めているという内容を書きました。

では、禁止の言葉以外はどうなのでしょうか。

今回は、もう一人、私が保育してきた中で特徴的だったK君の例をご紹介したいと思います。

K君は3歳児で初めて保育園に入ってきた子でした。

保育園の入園説明会では、ずっと走り回って、説明会以外の部屋を覗いたり園庭を眺めてはお母さんに何かを言っていました。

その様子を見て私は、K君が家でもよく暴れて走っているのかな?と思いました。

そして、K君の保育が始まると、初めはお母さんと離れる悲しさで泣いていましたが、数日で保育園生活にも慣れ、泣かずに遊べるようになってきました。

ただ、泣いている時に部屋を出ていこうとする事はありましたが、慣れてからも部屋を走り回ったりする事はありませんでした。

逆に、園庭で遊ぶと、園庭内にある高さ1.5mほどの丘に登ったら怖くて降りれなかったり、滑り台の階段も怖くて登ろうとしませんでした。

保育士と追いかけっこで走ったりはしますが、砂場で遊んだり、草木や花を見たりして遊ぶ事が多かったのです。

K君が泣かずに過ごせるようになった頃に、その様子をお母さんに伝えてみると、お母さんから返ってきた言葉が私にとって衝撃的でした。

「Kは今まで1度も公園とかで遊んだ事がないからだと思います。産まれてからほとんど家の中でしか遊んだことがなくて、外に出るのは私と買い物に行く時ぐらいでした。アンパンマンが好きで、家ではいつもアンパンマンのお絵かきをしています。滑り台も今まで滑った事はないです」

そうです。産まれて3年以上、1度も外で遊んだ事がなかったのです。外だけでなく他の室内の遊ぶスポットにも行ったことが無かったのです。

だから、入園説明会でK君は、保育園の中が珍しいので、走り回りながら探索活動をしていたのです!

そして、遊具で遊んだ事も無かったので、高いところに行くのが怖かったのです。

草木や花に触れる事が無かったので、園庭ではそういった自然に興味を持ってじっと観察していたのです。

K君からすれば、保育園は今までに見た事のない新しい世界が広がっていたのでしょう。

ここまでのK君を見ると、運動面での発達が遅れているように感じますが、K君は1ヶ月ほどで公園のどの遊具でも遊べるようになりました。それは、おそらくですが、K君は公園に行った事が無いだけで「危ないからやめておきなさい」とは言われておらず、何でも挑戦する意欲があったからだと思います。

お母さんもK君の成長を見て、「うちの子がこんなに運動できると思わなかった」とおっしゃっていました。

またK君の場合、家でずっとアンパンマンのお絵かきをしていたこともあり、絵は同年代の子どもの中では飛び抜けて上手で、保育士が「これを描いてみて」と見本を見せると大体のものが描けていました。ですので、K君は3歳児でしたが5歳児に混じって行事のポスターを描いてもらいました。

K君が家で過ごした3年間は、外で遊べてはいませんでしたが、家でたくさん絵を褒められていたのでは無いかと思います。

K君のお母さんは、運動面で成長をさせる経験をさせてはいませんでしたが、成長をする土台はきちんと残して子育てをしていたのです。

子どもが何かに興味を持った時、それを制限せずにやりたいだけやらせてあげる、それが、様々な事に子どもが挑戦する意欲となり、成長の第一歩になるのでは無いでしょうか。

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