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本を紹介する難しさと楽しさを味わえる1冊を読みました!

花田奈々子さんの『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』という本を読みました。

この本を手にしたきっかけは、今年の夏にヒガクレ荘という本屋でやっていた「ヒガブン」という企画でした。

貸し本棚の棚店主さんたちがおすすめしたい文庫本をコメント入りのブックカバーで隠して販売する(ビニールなどで覆われてないので、店頭で何の本かは確認できる)といった企画で、私は「大人の放課後、始めました。」というある棚店主さんが書いたPRコメントに惹かれたこの1冊を選びました。他の本屋だと見逃してしまうタイプの本と出会えるのもシークレット本の良さだと思います。

感想

勝手に恋愛色強めなエッセイかな?と思い込んで読み始めた今作ですが、実際は書店員の著者がこれまでに読んだ本を通していろんな人とつながったり、読書の新たな楽しみ方に気付いたりと本好きにはたまらない内容となっていて、読了時には「この本に出会えて本当に良かった!」と思ったくらいでした。

「誰かに本を紹介する」ことも本好きの楽しみのひとつではないでしょうか?身近な人に好きな本を手にしてもらえると嬉しい一方で、相手が自分の好きな本を気に入ってくれるか?そもそも読書が好きかどうか?と悩んでしまう要素もたくさんあります。

この本では著者の花田さんがタイトル通りの経験を続けてきた中で気付いた「誰かに本を薦める」ことの難しさと魅力、そして誰かに読んでほしい本をおすすめするポイントについて書いてあり、noteなどのSNSでも役に立ちそうなネタが満載でした。

書店員の経験を活かしてSNSで知り合った人に今まで読んだ本をおすすめしていく花田さん。はじめは会話で出たフレーズを拾ったりなどしておすすめする本を選んでいきますが、次第に本当に誰かに本を薦めるのであれば、まずは相手そのものの魅力を理解しないとならないと気付きます。

確かに私にも本屋などで本を物色している時や、何かの本を読了した時に「この本、友達が好きそうだな」などと身近な人の好みを思い浮かべてしまうことがよくあるので、花田さんの気付きはそういった気持ちにも近い感じがしました。

私も相手の好きを押し付けられるよりも、読書の傾向とか印象を踏まえた本紹介をしてもらった方が紹介してくれた1冊を「読んでみたい」と思えます。むしろ相手の好きを押し付けられると変に気を遣うから嫌。

また花田さんは、自分が紹介した本を読むかどうかは相手の自由だけど、何かの場面でその本が役立ってもらえたら嬉しいという思いを込めておすすめする1冊を選ぶようになったそうです。ただ単に好きな本を布教するのではなく、相手にとっての選択肢のひとつとして本を活用してほしいというこの考えはとても参考になりました。

その一方で、読書が大好きな人にその人が好きそうなジャンルの本を薦めても、既に読んでいる本ばかりを紹介してしまったなんてアクシデントも作中では描かれていました。でも、それも本好き同士の一種のコミュニケーションとして読んでいるだけでも楽しそうだったし、私もこういう会話が久々にしたくなりました。

ひたすら出会った人に本を薦める習慣には失敗も多かったですが、この奇抜な挑戦が前職を辞めてからもまた本に携わる仕事がしたいと考えていた花田さんの身になったのは確かだったと思います。

運よく出会えた新たな職場にて、来店したお客さんの今の気持ちを踏まえて、その人が求めていそうな本を紹介していた風景は流石プロでした。花田さんのような書店員さんがいる本屋だったら絶対リピーターになります。

それにしても花田さんは書店員という仕事柄もあってか、小説やエッセイ以外のジャンルも積極的に読んでおり、この方は本物の「本好き」なんだなと実感しました。作中で花田さんが紹介していた個性的な本たちは、私も「読んでみたい」と思わせてくれました。

読めばもっと面白い本に出会いたくなる1冊。私だったらこの本を「最近、面白い本に出会っていないな…」と感じている人におすすめしたいです!

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