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映画のような恋愛小説ってやっぱり好き

梅谷うめたにももさんの『星降るシネマの恋人』という小説を読みました。

映画好きのヒロインがタイムスリップし、激動の時代を生きた大好きな俳優と恋をする…そんなあらすじに惹かれ、発売前からとても気になっていた1冊です。

『星降るシネマの恋人』感想

熱海のレトロな映画館で働く主人公・雪がタイムスリップしたのは、戦時中の日本。そこで雪は、彼女が大好きな俳優「三峰恭介」こと千秋さんと出会い、歓喜します。だけど千秋さんは戦時中に亡くなる宿命であることを雪は知っており、同時に彼と過ごす時間への不安も抱き始めます。

まず今作を読んで感じたのが、戦時中を描いたお話なのにも関わらず、ハートフルな場面がとても多かったことです。

戦争を描いた物語というと暗い、悲しいというイメージがこれまでありましたが、今作ではいつ命が失われてもおかしくない状況の中でもそれぞれの幸せを求めて生活を送る人々の様子がよく描かれていました。千秋さんとその仲間たちがそれぞれの特技を活かして、家族や街の人々、疎開で熱海にやってきた子どもたちへ幸せを届ける姿には心打たれました。

序盤は雪と街の人との交流を描いた心温まる場面が多い今作ですが、物語が進むにつれてだんだんと戦争の存在が強く描かれていきます。シンプルにタイムスリップ×恋愛だけでなく、過去の世の中を知れる要素もあるところが今作らしかったです。

千秋さんは俳優ではありますが、この頃の映画というと娯楽というよりは戦争を肯定する内容が主流で、自分はそのような映画には正直出たくないという気持ちを心に隠して活動していました。千秋さんと彼の映画に携わる人々の正直な気持ちには読んでいて胸がざわつきました。

複雑な思いで映画作りにのぞむ千秋さんですが、雪の熱い推し三峰恭介への愛が、彼と関係者たちの心を動かします。雪の千秋さんへの思いはやがて恋に変わり、他の登場人物も雪に影響を受けて戦後に素晴らしい映画を世に放つ様子が描かれており、微笑ましくなりました。

今作は設定が設定だったので、雪と千秋さんの恋は悲劇で終わってしまうんじゃないかと予感していましたが、タイムスリップという要素が含まれた今作だからこそ描ける最高にときめくエンディングがこれまた予想外で良きでした。美しい映画のような恋物語を味わいたかった私としては非常に満足した1冊になりました!

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