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あめじろう
2017年10月31日 17:44
このつやつやとした丸い玉はなんでしょうか。「ふむ、それは、ゆで玉子じゃ」箸で追いかけると、つるつると逃亡を計り、なかなか掴めない、憎いやつだ。「ふむ、生きがいいのう」この糸のようなものはなんでしょうか。「ふむ、それは、糸こんにゃくじゃ」だし汁が滲み出す黄金色に透き通った身体には、うっとりとしてしまう。「ふむ、美しいのう」この白くてふわふわしたものはなんでしょうか。
2017年10月30日 10:49
水に飢え、岩地を彷徨う子羊の足は、血で滲む。 たどり着いたのは、炎のごとく燃える森。地の底から湧き上がる、熱き血潮を呑み込んだ森。木々の葉は血潮の熱さで燃え出していた。炎の重さに耐えられず、枝から離れていく香ばしい葉たち。地の上で、幾重にも重なり、眠りに付く。後悔や、秘め事や、罪、それらを覆い隠す。これから訪れるであろう、凍てつく冬に見つからぬよう。木の葉で埋め
2017年10月20日 20:11
手にしたスマートフォンの光に目にくらむ、愚かな男がおりました。 切りすぎた前髪を人差し指で弄び、昔話風に呟いております。 愛した男に気づかれない哀れな前髪。触れる指先には、美しいネイルが施されております。 ベランダの窓を開けると、ネイルと同じ色に滲む朧月夜です。あなたの額が好きでした。私のわがままに困る皺が好きでした。だから、あなたの、額に向けたのです。朧月夜
2017年10月8日 10:49
水をひとくち分けてくださいませんか。「申し訳ありません。私もこれで最後なのです」お金ならあります。「お金などいただいても仕方ないのです」何を差し上げたら水を分けてくださいますか。「食べ物となら交換いたしましょう」あいにく、持ち合わせておりません。 「申し訳ありません。私も生きるのに必死なのです」そうですよね。こちらこそ、無理を言って申し訳ありませんでした。
2017年10月4日 21:09
紺青に滲む朧月。滲み行く月明かりは危うき世の果てまで染み行かん。 我がうなじを伝う冷たき滴は、清き涙か、あるいは、苦き血潮か。 消え行く百合の香りに絡みつく小琴の音が、我が髪を乱す。くれなゐの花弁を重ね、かぐわしき歌に泣かん。小箱に秘めし問いは夕雨に濡れ、燃え立つ焔は羽に覆われん。瞳の色をうるませし君、月光の河にて、浮葉の舟を待つ。柳のかげに消え行く姿を写す夜露、呑