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朧月夜
紺青に滲む朧月。
滲み行く月明かりは危うき世の果てまで染み行かん。
我がうなじを伝う冷たき滴は、清き涙か、あるいは、苦き血潮か。
消え行く百合の香りに絡みつく小琴の音が、我が髪を乱す。
くれなゐの花弁を重ね、かぐわしき歌に泣かん。
小箱に秘めし問いは夕雨に濡れ、燃え立つ焔は羽に覆われん。
瞳の色をうるませし君、月光の河にて、浮葉の舟を待つ。
柳のかげに消え行く姿を写す夜露、呑み込む冷たき地。
琴の上弾かれ散るは、古き恋歌。
口ずさむ唇に滑る冷たき月明かり、喉を潤す。
夜の帳開きし風、髪のほつれをほどかん。
髪をとくは、やわらかき月明かり。
髪を濡らすは、やわらかき月明かり。
今宵の朧月夜、みなうつくしき。
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