見出し画像

幻覚世界

歩いていた
あの山へ続く道を

突然
世界が揺れた気がして
息が止まる

一秒と一秒の隙間に落ちて
世界が崩れる様を思う

そして目の前が暗くなる

ふと、見下ろすと
後ろから続く道が
足の下で止まっている
色のある過去だけが存在している

前に行くしかないのに
踏み出すところに
まだ道はない

こんなところで
どうして私たちは
前を向いて歩けたのだろう

途端
バランスを失い
前方へ倒れる

落ちていく
落ちていく
そこは
分子も原子も無い空間

落ちていく
落ちていく
そこは
確かなものは無い空間

「人間は
こんなところじゃ生きられない」

息を吸う
目が開く

立っていた

眼前には道が有り
遠い山が視野を広げ
太陽が高く輝いていた

ああよかった
これが世界だ
人間が生きる幻覚世界だ