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読書感想No.29『アイネクライネナハトムジーク』

こんにちは、天音です。
今回の読書感想は伊坂幸太郎さんの『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎文庫)です。

●あらすじ(裏表紙)
妻に出ていかれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐車場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物立が仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。

伊坂さんは2冊目です。
この前読んだ『逆ソクラテス』と同じように、この作品も6篇のお話からなる連作短編集でした。

少しずつでも、人は誰かと影響し合っている。
出会うこと。そして誰かと関わることの細波のような触れ合いを、人肌の温度で描いている作品だと思います。

私は「ルックスライク」が微笑ましくて好きでした。
恋人と別れた後。憎んだり嫌悪したりするのではなく、いつか悪戯を仕掛けてやろうと思える関係って、たとえ終わっていたものだとしても素敵だなと思いました。

それとは別にニヤリとしたのは「メイクアップ」です。
高校時代に自分をいじめていた同級生と出会うOL、結衣の話なんですが、いじめっ子の描写がもう、いるいるこんな女子!!って感じで。なんか感心しました。
ボス系の子っていつの時代も変わりませんね……。
そういう子に積極的に苦しんで欲しいわけではないという気持ちと、できたら仕事か生活かのどちらかは失敗して欲しいという、結衣の消化しきれない矛盾した感情がとてもリアルでした。

最後の話である「ナハトムジーク」は、今まで出てきた繋がりがたくさん押し寄せてきて、前を向くのを助けてくれるようなお話です。

『アイネクライネナハトムジーク』に出てきた人たちの話は、どれも有り得そうな出会いのお話なんです。
有り得ないよな、こんな綺麗なお話。
でももしかしたら、些細な奇跡は起こるかも。
自分の軌跡にも、あのとき出会ったのが私にとっての奇跡だったと思えるものがあるのかなと考えてみてもいいかな、みたいな。

多分誰も不幸にはならないと、安心して読める小説でした。
ただ、結構時系列や人物が入り組んでいるので、読んでる途中で「誰や」「いつや」という混乱した事態になってしまうのには注意が必要かもしれません。
私が馬鹿なだけですか。

とても穏やかで素敵な小説でした。
星降る夜に読んでみるのもいいかもしれませんね。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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