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Photo by
macurocuo
曖昧なくらいでちょうどいい
この国が、ニッポン、と呼ばれていた大昔
理由については、分かっていないのだけれど
ともかく、国民の記憶を冷凍保存することになり
記憶冷凍装置がつくられた
けれど、誰の記憶を冷凍保存するか
その決定の際、不正があり
多くの斉藤さんが選ばれることになった
その数、二億人
これじゃあ、記憶冷凍装置じゃなくって
二億斉藤装置だなあ、なんて
揶揄されていたらしい
しかし、人の記憶を冷凍保存する必要なんて、あるんだろうか
保存してしまったら、あとあと、細かなとこまで
明らかになってしまうじゃあないか
記憶なんてものは、曖昧なくらいで、ちょうどいい
いい思い出は、曖昧に美化され
悪い思い出は、曖昧に醜悪になっていく
曖昧だから、いい、そういうことも、あったりする
結局、記憶冷凍装置は、すっかり忘れさられ
冷凍保存された記憶だけが、いまも
静かに保管され続けている、らしい
昨日、ねこが、そんなことを話してくれた