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【有料 小説】ゆなゆなゆなゆなって音が聴こえる

ゆなゆなゆなゆな。
その音は、突然、部屋の四隅からサラウンドで聴こえた。
ゆなゆなゆなゆな。
なんだこの音は。
女性の声で、日本語で、ゆなゆなゆなゆなと聴こえるが、明らかに四隅には人がおらず、幽霊らしき影もなく、大体1分置きに四回ゆなを繰り返して言う規則性は、ぼんやりとした存在の幽霊にしてはキッチリ過ぎる。真面目過ぎる。
なんなんだ一体。
ゆなってなんだよ。いや、誰だよ。いや、なんだよ。
人の名前なのか、擬音なのかも、わからない。
ゆなゆなゆなゆな。
もうそろそろ次のゆなゆなが来るぞ。そんな慣れが30分も経てば起こる。もう30分も経ってるぞ。いつまで続くんだ。
ゆなゆなゆなゆな。
はいはい。
ゆなゆなゆなゆな。
はいはい。
ゆなゆなゆなゆな?
ん!?なに!?いま、聞いてきた!?俺に、ゆなゆなゆなゆななのかと、聞いてきたか!?
今までとは明らかにイントネーションが違う、疑問系の声だった。
次のゆなゆなを待とう。
ゆなゆなゆなゆな。
また、元に戻った。
ゆなゆなゆなゆな?
また聞いてきた!!なんだ!俺はゆなゆなゆなゆなでも無いし、ゆなでも無いぞ!!
ゆなゆなゆなゆな。
うるせーよ。怖いけどうるせーよ。
怖さは勿論あるが、ずっと怖がり続けながらも別の感情も生まれるってもんだ。うるさくてムカつくという感情だ。
ゆなゆなゆなゆな。
うるせえ!!!!
ゆなゆなゆなゆな。
ムカつくわ!黙れ!!!
ゆなゆなゆなゆな?
はい、たまに来る別の味!それすらも慣れたわ!うるせえ!!!
こうして、俺と、ゆなゆなゆなゆなの、日々は始まった。

四隅にシーチキンを持った小皿を置いた。
盛り塩でもいいのだが、俺はこれを不吉な物として認めたくない。そう認める事で、悪い事が起こるのではないか、と考える。
だから俺は、ゆなゆなゆなゆなを甘やかす。
敵ではなく、仲間に取り入れる。
だから四隅にシーチキンを置いた。

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