【医療者向け】予防接種を迷われている、打ちたくないという方に出会ったら

これまで「医療のかかり方」のお話会を開催してきました。参加者は毎回30名ほど。(もっと少ないときも多いときもあります)

13年のうちの後半の8年間×30人×年間5回(もっと多いときもあるけれど)=1200人。途中から副代表にお願いしていた分を除いて、少なく見積もっても私がお伝えした方の人数は1000人以上になっています。

その中で、予防接種について迷われていたり打たない選択をされている方は、毎回2~3人います。

そしてお話を終えるとこの2~3人の方がたいてい駆け寄ってきます。

「あまさんが子どもの命を守るための活動をしているということがとてもよくわかりました。でも予防接種についてだけは、まだ不安です。」もうちょっと強い言い方の方だと「予防接種についてだけはあまさんと考えが違います」

そんなことをおっしゃいます。そのような方々とどんなふうにお話しているか、今日は相手がもっと知りたいという気持ちがあるとき、のお話です。

まず大切なことは、メリットとデメリットを正確に把握されている方かどうか、ということです。最初にそこを尋ねます。
「どうして打たない選択をされているの?」ということです。「どこに不安がある?」ということです。

ほとんどの方は、「なんとなく怖い」とおっしゃいます。(※文末に例外の方のお話※)

なんとなく怖いと思われる方には、できるだけ正確なことをそのままお伝えするようにしています。(知識のアップデートは不可欠です)

伝えるときに、気を付けていただきたいことは、打たない選択をしている方を下に見ない、ということです。愚かであるとか、そういう目で見ていることは確実に伝わります。知らないことは、愚かなことではないと思います。

現状、それほど知る機会が多くあるわけでもないので(そのために改善したくて活動してきたわけですが)怖れることや知らないことを愚かだと思うこと、それは間違いだと思います。

ただ、現状を伝えるだけです。

そこになにも、ない。良いも悪いも、ない。相手をその場で変えようともしない。

相手をその場で変えようとするならば、確実に力が加わります。こちらが正しい、こちらの言い分が正しいのだと。

そうではなくて、ただ、事実を伝えるだけ。

すると、どうでしょう。たいていの方は、「全然知りませんでした」とおっしゃり、「じゃあ何から打とうかな」となるわけです。そこで、「かかりつけ医に相談してみてね」となるわけです。「間に合いますか?」と聞いてくださる方もいます。

またその場では、困った顔をされて、後日Facebookのメッセージなどから、詳しく質問が来る、なんていうことも多々あります。

またこれも案外あるのですが、何年もしてから「打ちました」という報告があることも。赤ちゃんのうちは赤ちゃんという存在が小さくてかわいそうだと思い続けてきたけれど、成長とともに確実に子どもから逞しさを感じられるようになったのでしょう(親子とも逞しくなったのかもしれません)何年かしてから「打ちました」という報告が届くこともあるのです。

当然のことながら全員が全員、そのように変わるというわけではありません。

また、もちろん予防接種には対象の年齢や月齢があるので、急ぐ医療者の気持ちもわかります。今伝えなければ、今親を変えなければという気持ちもわかります。もしかかってしまったら、と思うと、その「目の前の子」の命を守るために必死の行為だということもわかります。

でも、迷っているときに頑なな姿勢で正しさを主張する(つまり相手が間違っているという態度をとられる)医療者に心を許し、さらに考えを変えるという人がそれほどいるとは思えません。急ぎたい気持ち、守りたい気持ちがあるからこそ、フラットな気持ちで情報を丁寧にただ伝える、ということに注力することが大切だと思います。

数年前ですが、アメリカの、ある予防接種を取り扱う組織の専門家の方々が来日されたときに呼んでいただいたことや、また別の機会で、米国大使館でも専門家の先生方と過去に懇談したことがあるのですが、どちらでも言われました。「あなたの集いにそういった(打ちたくないと考えている)方々が来るのはなぜ?」

「そういう人たちにこそ伝えたいと思っても、その手段がないのが通常ではないの?」「しかもその方々が話を聞いて接種するっていったいどんなことをされているの?」とそれは熱心にお話を聞いてくださいました。

伝えてきたことが、『医療のかかり方』だからでしょう。予防接種も内容に含まれますが、『子どもの命を守るために親として知っておきたいこと』という内容だから、伝わるのだと思います。

ひとつ思うことは、予防接種を打たない方々に対して専門家の方々は、日米問わず、誤解があると思うのです。

子ども達のことをきちんと考えていない、わかっていない、知ろうとしない人たちだと思われている方が少なからず、います。

現実には、そうではなくて、打たない選択をしている方、迷いながらの方も含めてですが、子どものことを真剣に考えている方が多いということは言えると思います。

少し思い違いや知識に偏りがあるかもしれませんが、往々にして、子どものことを考えている方だという印象を私は持ちます。

ワクチン反対派として活動をされている方々、それを人に広めたいと思って熱心に活動されているような方々は、別です。もう決して揺るがないポリシーを持って、打たない選択をしている方々と、今日書いたような、迷っている方々とは別の話です。

迷っている方にこそ、確かな情報が届くといいなと思ってやっています。

※メリットとデメリットを正確に把握されたうえで打たない選択をされているのであるのならば、それ以上言えることはないと思っています。わずかですが、このような方もいます。

現にお会いした方だと、ご兄弟が予防接種の副反応で苦しまれているという方がいました。その方は、たとえ命を落としても同じ命を落とすのならば自然に亡くなったほうがいいというお考えでした。

自然にかかる数と比較すると人数としてはわずかですが、予防接種のリスクはゼロではないために、悲しいことは起きてしまいます。その少ないけれども確実に存在するリスクと、かかってしまうリスクを知っていてそして比較してもなお、打たずにかかってしまうほうが良いと考えるのならば、そこに口出しはできないと私は思っています。※

~「小児医療 伝え方のコツ」テキストからの抜粋です~

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