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或虎
2024年1月28日 10:50
若い男が拳を突きだす。袖から出た腕、刺青。「どうだビビったか?詫びを入れるなら今のうちだぞ!怪我したくないだろう?」 連続でパンチを繰り出す。空を切る音。「怪我したくないです」 中肉中背、一見普通のサラリーマン。「今からてめぇは、ぼっこぼこに殴られるんだ。恐くねぇのか?」「恐いです、でも吸い殻を拾ってください」「てめぇ!死にてえのか?」「死にたくないです」「知ってる?ジークンド
2024年1月29日 00:35
「エコテロリスト、絵画テロリスト、世間は色んな呼び方をしているが、俺たちはテロリストなんかじゃない!ソルジャーだ!俺たちはエコソルジャーだ!」「その通りだ!人の手によって描かれた絵画なんかより、自然にこそ大衆は目を向けるべきだ!森、河、海、今この瞬間にも自然が破壊されている。国家や企業というテロリスト達の手によって!」「まったく同感だ!芸術?絵画?そんなものクソ喰らえ!有名な絵画を汚すことで、
2024年1月30日 00:13
「生きることは抗うことにゃん」 ブロック塀の上から、猫が話しかけてきた。朝、バスの時間は――まだ大丈夫。「抗う?何に対してですか?」 僕は訊ねた。猫は顔を掻きながら答える。「生の対義を為すのものに対してにゃん」「生の対義?つまり死ですか?」「そうにゃん。でもキミの認識している死とはきっと違うにゃんねぇ」「認識?つまりあれでしょう。死は無ってゆうことでしょう?」」「にゃあ、何が無にな
2024年1月31日 00:17
詩を書こうと思ったが冷蔵庫の中には、目薬と豆腐しか入っていない。目薬は、気の遠くなるほどの昔っから卵入れの窪みに閉じこもったままのフリーターであり、豆腐は2日前の深夜12時を以て賞味期限を終えて定年退職したオールドミスである。 ここはロートレアモン著『聖マルドロールの歌』の一節、『手術台の上のミシンと蝙蝠傘の結婚』に倣い、かの二品をプレステの上に於いて引き合わせることにしよう。 コントロ
2024年1月31日 22:28
夢を見た。 遠く霞んだピラミッド潰れた夕陽にぶっ刺さって俺はフンコロガシ。 後ろ脚が一本無い。まともにフンが転がせない。 朝、巣穴から這い出し、放牧地にフンを探しに行く。歩みは太陽に負ける。餌場にたどりまでに、何匹もの仲間とすれ違う。着いた。殆ど真上にある太陽、俺を見下してやがる見渡すフン――無い。飛び散ってへばりついた滓をかき集め、小さなフンの球を作り、巣に持ち帰る頃にはまた潰れた夕
2024年1月6日 01:59
「かー」 痰を溜めた。吐き出そうと街路樹の根元に狙いを定める――と、そこに天使が現れた。 仕方が無いので、ガードレールの横っ面にぶっかけてやろうと向きを変えた。しかしそこにまた別の天使が現れた。 足元しかない。靴に当たらないように、真下に落としてやろうと顔を下に向けると、空間が揺らめいてにょきにょきと天使が生えてきた。純白の肌、シームレスな翼。 私は、喉の奥で凝り固まった小さな悪意を、体外