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#私の作品投稿

詩『サンタナ恋い』

詩『サンタナ恋い』

肩甲骨這う指
鎖骨圧す舌
首筋から微かな気流
白金の星が香る
腕の血管膨張
血液はまるで
魔術師の赤
ブランド―もののワイン
意思の仮面被って

「人間を辞めてキミを抱くぞ!」

心はもはや狂ったダイヤモンド
ふるえるぞハート!
燃えつきるほどヒート!
キミを捕食するビート!
抱き締めるスピード!ワゴン車よりも
銀の戦車よりも速く
腹から胸から
キミの体を凹り込ませる
細胞でキミを感じる
心音のエ

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詩『にんげんばくだん』

詩『にんげんばくだん』

にんげんばくだん
ばくだんだん

おうだんほどうをわたってる
おーえるばくだんわたってる
がくせいばくだんわたってる
ろいじんばくだんひきかえす

いぬばくだんをつれたばくだん
へいのうえにはねこばくだん
そらをみあげりゃすずめばくだん

ばくだん
ばくだん
ばくだんだん

どうかせんをひきずって
みんなびくびくくらしてる
ちきゅうばくだんにのっかって

散文詩『僕は永遠に右折できない』

散文詩『僕は永遠に右折できない』

 僕は永遠に右折できない。
 片側二車線、信号機は無い。手前の2車線、右から途切れることなく車がやってくる。多少途切れたとしても僅かな猶予しかない。左折は出来たとしても右折は不可能だ。向こう側の斜線もかなりの交通量。もうすでに3年は、中央分離帯の植え込みの隙間を睨んでいる。
 手前の車線と、向こうの斜線。僕の車が右折できるタイミングは、永遠に来ない。そう、永遠に――。
  
 永遠なんて存在しない

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詩『未送信カイロ』

詩『未送信カイロ』

知っていますか?
ホッカイロのカイロって
”懐炉”って書くそうです
寒さを凌ぐために懐に入れる炉
なるほどねという気がします

私はいつもカイロを持ち歩いています
あなたの言葉がそうです
私の懐炉です
いつも胸の内にあって
熱を失わずに
私を温め続けています

私の言葉があなたにとっても
懐炉であればいいなと
願っています
その願いがまた
私を温めてくれる懐炉にもなっていて
今年の冬は
あなたのせ

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散文詩『合金とアルミ』

散文詩『合金とアルミ』

 透明な箱に緑の文字が張り付けられているそのすぐ横で、僕は千円札を店員に渡しコンビニの喧騒に耳を傾けていたのだが、ふと、透明な箱の中で小山を築いている惨めなジャックポットに視線を取られ、そこに一枚の異質な硬貨を認め息を飲み、鼠のような笑みを口端に浮かべ「誰だこんなところにスロットのメダルをいれたのは?」と辺りを見渡しこそはしなかったが、X氏の後姿を脳裏に描いて、このメダルが――その見たような見ない

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詩『この人生から俺を追放する』

「この人生から俺を追放する」
今さっき自己判決を下した
無罪という罪状
罰は×
つまりミッフィーの唇
化繊糸で絶叫封印
(俺はもうこの人生にはいない!)
0㏈の叫びが傍聴人の鼓膜を揺らす

++++++++++
廃楽園のはずれ
幹の腐った林檎の木から
熟した蝉が地に落ちた
水で研磨されたような黒曜石の瞳
それはレンズ
カラスという映像記録装置の
ちなみに取説には落書きがある
簡素な女性器の
+++

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詩『Siri滅裂』

詩『Siri滅裂』

ボクの神経は花瓶だ
誰か花を挿してくれ
対空マカロンが火を噴く前に
小さい前倣えの大を実演する
最後尾のパンダいやアレは・・・
汚い白熊だ騙されるな!
ヤギとヒツジのあいのこを飼っている
八木という執事を知りませんか?
僕は知っています
月の裏側にびっしり
笑い茸がはえていることをそれは
それは間違いなく
養殖されたあの子の笑顔
ホクト
いや南斗
いやポット
ぱっとサイケデリックな
シャニスとモリ

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散文詩『wash me away』

散文詩『wash me away』

 河原に腰掛け、集めた小石、端の方から一つ取っては、スナップ効かせて川面に投げる。
 失った友。
 去った恋人。
 亡くした親のことなどを想い。
 秘蔵の平べったい石コレクションを、夕陽で味付けされた赤スープに向かって、ひたむきに投げ続けていると僕は――

 石一つ投げるたびに僕は――自分の体積が少し失われていくかのような感覚になって――つまり僕は、石一個投げると、石一個分の僕が、川面を跳ねて跳ね

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眠れない夜に梶井基次郎を読んだ挙げ句に散文詩 5編

 花火の音ばかり空に響いてる。うろうろと見上げるがやはり明るい宵闇が貼り付いているだけ。
 親子が歩いている。母親と男の子2人、子供はどんと空が鳴るたび、駆けようとするが母が制する。この先に行けば、音の源が光って見えるのだろう。
 鑑賞は彼等に任せ、僕はいつもの飯で眠るだけ。

**********

 コンビニ、冷蔵庫、扉を片手で制しつつお茶を一本抜き取る。後ろに控えていた1本が音も微かに滑り降

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詩『ボブディランを止めてくれっ』

詩『ボブディランを止めてくれっ』

噛み合ってしまったんだ
窓辺3時の陽光と
落ちずに頑張ってる街路樹の一枚
テーブルの古傷
君とこの席で語った未来
零れ落ちたピクルスに笑い
お互いの口元を拭いあった紙ナプキン
ブラックに顔をしかめる猫が君で

"一緒にいる"
それだけ
それだけのことが
どんなに困難なことか
見積もりも取らず
君の肩を抱き
髪の香りに意識を失う
暖かな泥のような幸せ

窓辺5時光薄れ
手相をスプーンでなぞる
さっき

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落語詩『萼』

落語詩『萼』

えー毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席
紫陽花に一粒の露がありましてぇ
そいつが朝日を浴びてきらきらと輝いております
光沢のある透明とでもいいましょうか
空の色まねをしている紫陽花の萼をお座布に
落語家のように座っておりますとそこへ
一寸ばかりはあろうかという蝗がやってまいりました
だいぶ歳古い蝗のようで
気門からしゅーしゅーと息を漏らしながら
命からがらといった様子でよじ登ってきて
露のおります萼の上

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散文詩『筆影山』

 暗いアスファルトに目を凝らす。心が水筒の闇に同化してゆく、もはや2cm、遠足の目的地まで足りるはずもない麦茶。帰り路もあるのだ。笑いながら薄ら返事。異変に気付いた友が顔を覗き込む。
「お茶もう無いの?」
 水色の水筒を掴みシェイクするとちゃぷと弱弱しい音が一度したきり。
「まだ着いてもなぁのに、お茶がこんだけしかないど」
「飲みすぎじゃ」
 皆が笑った。僕にはそれが嘲笑に聞こえ――
「朝飯に塩昆

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散文詩『九十九足』

 百足は思った。
「脚が痛い」
 でもどの脚か分からない。
 右か左かも分からない。
 前か後ろかも分からない。
 ただただ鈍やかな痛みがしんしんと続いていて、百足を苦しめる。
 百足は思った。
「分からないからなんだと言うんだ?」
 分かったところで、どうしようもないのだ。
 ああ、痛いのはここだと分かったところで、いったい何になる?そう決め込んで、ぞろぞろと歩き出したのだが、やはり痛い。
「俺

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詩『19頁に挟まってる口づけ』

人生の一頁に口づけが挟まっている
栞のように
もう読み終えた筈なのに
抜くことのできない

あの人との口づけ
手探る
まだ前半部分
物語がうねりだす地点
だけど私にとって
そこが最終頁なのかも

あの人との口づけ
何度も同じ頁をめくり
そこから再開したいと
願う
もう一度読み返せば
物語が変わるのではないかと
でもその先に
あの人は登場しない

口づけ
輪郭のない花のよう
大丈夫
ちゃんと今

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