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詩『ボブディランを止めてくれっ』

噛み合ってしまったんだ
窓辺3時の陽光と
落ちずに頑張ってる街路樹の一枚
テーブルの古傷
君とこの席で語った未来
零れ落ちたピクルスに笑い
お互いの口元を拭いあった紙ナプキン
ブラックに顔をしかめる猫が君で

"一緒にいる"
それだけ
それだけのことが
どんなに困難なことか
見積もりも取らず
君の肩を抱き
髪の香りに意識を失う
暖かな泥のような幸せ

窓辺5時光薄れ
手相をスプーンでなぞる
さっきの葉っぱが笑いながら落ちる
自分の黒眼が灰色になる感覚
どら猫のどらとどら焼きのどら
誰かが頼んだ珈琲の薫り
静寂そして
ギターが鳴く瞬間
噛み合ってしまった
目の前のすべて
嗄れ声

「俺、この曲好きなんだよね」
「英語分かるの?」
「分からない」
「じゃあ歌詞の意味は?」
「分からなくていいんだ、そういうもんなんだ」

理解できてなかった
しなくていいと思ってた
ボブディランの歌詞も
君の言うことも

答えは
風に吹かれることもなく
縁石で排ガスにまみれてるさ

ベル鳴らして店員呼ぶ
(曲を変えてくれ)
心中泣き叫びながら笑顔で
「コーヒーお代わり」

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