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2022年8月の記事一覧

『ミルコの左ハイ』

『ミルコの左ハイ』

ミルコよ
ミルコ・クロコップよ
お願いだ
俺の後頭部にハイキックを浴びせてくれ
首から上が居間まで吹っ飛んで行くほどの
ロケット点火のような瞬間火力
加齢臭に彩られた後頭部に頼む

俺はそれを笑顔で受け止める いや
受け入れる
スマホでくだらないYouTubeを鑑賞
へらへらと笑っているこの隙に さぁ!
俺の首を刈り取れ
俺の存在を分断してくれ
心(頭部)と体(首から下)に

怒りも憐れみもいらな

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(株)猫

(株)猫

「すべての猫は個人事業主である」

 社員を雇わず、一人すべてを担い会社を経営している。
 猫の経営姿勢から学ぶべきことは多い。一挙手一投足に無駄が無く、すべての行動が理に適っている。
 以前、猫の損益計算書を見た某大手商社の社長が、その利益構造の余りの素晴らしさに、腰を抜かし、以来猫背になってしまったというのは有名な話だ。

 誰です?「縁側でボンヤリして、あれはサボっているんじゃないか?」です

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眠れない夜に梶井基次郎を読んだ挙げ句に散文詩 5編

 花火の音ばかり空に響いてる。うろうろと見上げるがやはり明るい宵闇が貼り付いているだけ。
 親子が歩いている。母親と男の子2人、子供はどんと空が鳴るたび、駆けようとするが母が制する。この先に行けば、音の源が光って見えるのだろう。
 鑑賞は彼等に任せ、僕はいつもの飯で眠るだけ。

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 コンビニ、冷蔵庫、扉を片手で制しつつお茶を一本抜き取る。後ろに控えていた1本が音も微かに滑り降

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『明日僕はザクに乗る』

『明日僕はザクに乗る』

「怒りは情熱に悲しみは優しさに変えろ」
 父が遺した言葉だ。母を亡くし男手で僕と妹を育てた父。働き詰め、体を心を壊し、作業中の事故で命を失った。アースノイドだった父は差別され続け、それは僕らにも及んだ。
 明日僕はザクに乗る。
  怒りを情熱に、悲しみを悲しみのまま抱いて。

 探るように掌を押し当てる。深緑の装甲冷たい。宇宙の温度が染み着いている。俺と同じだ。なぁお前、家族はいるか?俺はいる。

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