奎文初

ノンビリ、気の向くままに、書きたいことを、書ける時に書く。ここではそれが目的です。

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マガジン

  • 変哲もなく、非凡なバンド―999

    パンク史上、最もメジャーなカルト・バンドについての雑文集

  • インド紀行

    20歳の時に行った、実質唯一の旅の、切れ切れにしてへたれな思い出

  • 『ever fallen in love-』

    ピート・シェリー~バズコックスの、おそらくは現在最良の評伝

最近の記事

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私の大学時代事始め

   今はどこの大学でもネットのホームページがあって、大学に関する情報をわんさか伝えてくれる。私の大学にもホームページが当然のようにある。講義一覧や教職員のプロフィールがこまごまと載っている。食堂やら図書館などの施設についての説明も動画付きで実に細かい。なによりそうした施設の映像やら写真やらが実に綺麗で、まるでどこかのアミューズメント・パークの如きであり、軽い眩暈を起こしたほどであった。 「あのころとはまるで違う・・・・」    私は、なんだか自分が浦島太郎になったような気分

    • 同じ原著でも―アダム・スミス『国富論』③

       前回、さんざん悪口を述べ立てたアダム・スミス『国富論(諸国民の富)』の大内兵衛/松川七郎訳版(岩波書店)を、おそらく30年ぶりに手に取っている。30年前には読んだということではない。その時に本は買ったけれども、全く読まずにそのまま放りっぱなしにしていたのである。最後にきちんと読んだ、いや読もうとしたのは、前回記したように大学2年の終わりころ、大学の図書館から借り出した本によってであり、大河内一男監訳版(中公文庫)を買ってすぐに本は返却し、その後再び借りるなどして読みかえすこ

      • 豊かさよりも・・・・―アダム・スミス『国富論』②

            前回、スミス『国富論』は巷イメージされるような書ではないと述べたところでおしまいにした。今回はその続きである。まずは個人的な記憶を書き連ねるところから始めたい。少々長くなるが、ほかでは記す機会もないからちょうどいい。     高校時代の社会科の教科書で、すでにアダム・スミスの名は知ってはいたが、『国富論』の存在と内容を意識することになったのは大学に入ってからなのは、あまたの大学生諸子と変わるところはなかった。きっかけは卒業まで良くも悪くもさんざん世話になったK教授の担

        • 「見えざる手」とは―アダム・スミス『国富論』①

          本来ならアダム・スミス生誕300年に当たる昨年(2023年)に取り上げるべきトピックであったと思うのだが、私の思考がまるで整理されず、今日までずれ込んでしまった。ちなみに『国富論』は1776年3月9日公刊とされているから、出版250年まで、あと2年弱である。さすがにそのときまで待っていると、投稿する意欲がなくなってしまいそうだから、今回こうして公にするのである。  その『国富論』が、いたるところの行論に矛盾を生じ、ときに破綻を示していることは、古今東西の経済学史研究者、経済学

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        私の大学時代事始め

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        • 変哲もなく、非凡なバンド―999
          12本
        • インド紀行
          20本
        • 『ever fallen in love-』
          36本

        記事

          「ギターは魔法の木」—ひとつの雑感

          「ギターはその音一発で、ばらばらになっている人の心をひとつにする魔法の木」    どなたによるものか覚えていないが、こんな内容の発言であったと思う。なるほどなあと思ってしまった。たしかにギターには、人の心を虜にする摩訶不思議ななにものかがある。いわゆるsomething elseというやつである。ビートルズの「デイ・トリッパー」やジョニー・サンダースの「ボーン・トゥ・ルーズ」の出だしの、あの音が鳴った瞬間、散らかった頭の中が一気にそこに引き込まれ、高揚するあの感じ。まだ小学

          「ギターは魔法の木」—ひとつの雑感

          「俺は気に入ってるぞ」-999‘Nasty Nasty’

          「セカンド・シングル。アルバム未収録で泣いている人も少なからずいるはず。あんまりゾクゾクしないんだよなあ。思ったほど。むしろ『NO PITY』の方が好きかなあ。『I’Ⅿ ALIVE』にみる緊張感てゆうか、ギリギリの感じがしないんだよなあ・・・。調子に乗ってるとか思ったんだなあ。キャッチーな曲の落とし穴として認識せざるを得ない。ハイ・スピード・チューンだし、どうぞ聴いて判断して下さい。77年てのは凄いけど。有名曲」[1]  いきなり否定的な引用文から入ってしまったが、今はなき

          「俺は気に入ってるぞ」-999‘Nasty Nasty’

          たしかに、生きているんだがー999‘I’m Alive’

             イギリスのパンク・バンド999のデビュー・シングル「アイム・アライヴ I’m Alive」は、70年代パンクを画するシングル群の一枚として、この日本では現在も語り継がれている・・・・のであろうか。パンクの歴史をつまびらかに調べたことのない私には自信をもって答えられないのだが、持っているほんのわずかの資料から、そしてネットからの情報から察するに、例えばセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」やクラッシュの「ホワイト・ライオット」らと比べると、はるかに注目されな

          たしかに、生きているんだがー999‘I’m Alive’

          モテたいと思わないのかい?

              つい最近知ったのだが、女にモテる3大職業として、①バーテンダー②美容師③バンドマン、があげられるという。人によってはそこに④ロケバス運転手⑤舞台俳優、が加わる。ロケバス運転手の理由は、特に女優さんがロケ撮影の合間にバスの運転手とくっつきやすい、女優さんはスケジュール調整が難しくてなかなか男と会えないかららしい。なるほどねえと思ってしまった。かつ、私とは無縁な話題であることを、しみじみ思ったのであった。     上の職業に就くだけの才能も縁もまるっきり持っていなかった私

          モテたいと思わないのかい?

          限界情報人・・・・?

              今日、ほぼ一か月ぶりに我が家にパソコンが戻ってきた。故障して、修理に出していたのである。修理に出している間、書き物はほとんどしなかった。する必要もほとんどなかった。どうしてもしなければならぬ時はご近所の家にあがらせてもらってそこのパソコンを使うつもりでいたが、そんな煩雑さは経験しないで済んだ。     私はSNSを普段あまり利用しない。スマホは持っているが、XやLINE、フェイスブックはまず、利用しない。Xは1年くらい前まではたまに利用していたが、原因不明のアカウント

          限界情報人・・・・?

          雨が強く降り出した―6月24日を控えて

           正確には1969年6月22日、または23日の未明に、彼女が残した言葉である。生前最後に、自らの日記に記した、その最後の段落最初に記した言葉である。生への意欲を断ち切ろうとしていたと思しきあの刹那に聞こえていた雨音。それは彼岸への誘いを成す調べとなったのだろうか。彼女が死んだその日に雨はやんでいたというが、やんだ時には、もう己はこの世から消えるだろうと予覚していたのだろうか。  今、私のいる部屋の、雨戸を締め切った窓の外から、雨音がする。今日は6月22日または23日ではない。

          雨が強く降り出した―6月24日を控えて

          もはや引き千切れないだろう―999『RIP IT UP』その他映像作品

          DVDなんて買ったの、何年ぶりだろうか。しかも輸入盤のDVDは初めてではなかろうか。そう思いつつ、繰り返し眺めているのが先日出た999の『RIP IT UP』である。今年(2024年)の1月24日にロンドン北西のミルトン・キーンズにあるクラウファード・アームズという名のライヴ・ハウスで録られたライヴ作品である。 初めからケチをつけてしまうが、このフィジカル作品、何故DVDに同内容のCDをつけたのだろうか。そこが解せない。時には音だけに集中したい人もいるからということなのか。C

          もはや引き千切れないだろう―999『RIP IT UP』その他映像作品

          匂いに,ふたはできない―ザ・スターリン『Fish Inn』

              のっけから否定的な展開になってしまうが、あえて言おう。最初にその報を知ったとき、もろ手を挙げて再発を歓迎できるアルバムではなかった。1984年、最初に聴いた時、前作の『虫』やその前の『Stop Jap』とは明らかに違った音像に、「バイバイ・ニーチェ」を除いてやたら長くなった―と当時は思った―1曲の演奏時間に、大いに違和感を覚えたからである。短い演奏時間に幾重もの解釈を可能にする歌詞が載った怒涛の如き展開をするのが、そしてアルバムに1曲だけ長尺の演奏をねじ込むことで聴く

          匂いに,ふたはできない―ザ・スターリン『Fish Inn』

          田舎(過去)をばかにするな―U.K.SUBS②

              私はパンクを、これまで喧伝されてきた「断絶」よりも、「継承」をより強く指向したムーヴメントだと述べてきたが、U.K.サブスもまた、それを極めて分かりやすいかたちで具現化させてきたバンドなのである。リーダーのチャーリー・ハーパーの年齢、そしてその遍歴がそれを雄弁に語っているけれども、ハーパーだけではない。サブスのギタリストとして、おそらく誰もが筆頭に挙げるであろうニッキー・ギャレットの、ギタリストとしての出発点はクラッシク・ギターであり、バッハを好んで弾いてきたこと、1

          田舎(過去)をばかにするな―U.K.SUBS②

          「あなたは、それでいいの」―高野悦子『二十歳の原点』

              私はその言葉を聞いた。実際には‘音’として、聞いたわけではない。だが私の心は、確かにその言葉を聞いた。二十歳の秋。1988年。翌年から消費税が導入されることで賛否両論が喧しく踊っていた。億ションがどうとか、海外では日本人が爆買いしているとか、そんなニュースも流れていた。日本人の多くがバブリーに浮かれていた時代。だが私の生活は、私の心は、まるっきりそんな事柄とは縁がなかった。大学ではつまらぬ講義を聞き、ゼミでは教授の追求に青息吐息になっていた、そんな日々のさなか、大学の

          「あなたは、それでいいの」―高野悦子『二十歳の原点』

          砕け散る石に貼りつく苔ありき―ブライアン・ジョーンズ

          「・・・・俺も、持っていたな」    先日たまたま、YouTubeの待ち受けに、ブライアン・ジョーンズの映画を紹介している方の動画が貼りついていた。その方が手に持っている本を見て発したのが、冒頭の言葉である。押し入れから引っ張り出し、最初のページから読みだした。何十年ぶりだろうか。高校時代、あれほど熱心に読んだのに、くだんのYouTubeを見るまで、この本の主人公である男の事をすっかり忘れ去っていた。だから当然、今年2024年に公開されたという映画の事も、全く知らなかった。

          砕け散る石に貼りつく苔ありき―ブライアン・ジョーンズ

          歳食っちゃ悪いか?-U.K.SUBS

              世間で問題になっている「老害」に真っ向から異を唱えるかのような表題になってしまったが、いい機会である。本題に入るマクラとして、「老害」について思う所を述べてみたい。     誰が言っていたか忘れてしまったが、人は年を取ってくると脳みそが固くなって柔軟な思考が出来なくなり、それが原因で老害になるのだという。一理あると思うが、私の見立てでは、そもそも老害を起こす人間は、若い時から人格上問題を持っているものである。若いときに害を与えないとみなされていたのは、単に運が良かった

          歳食っちゃ悪いか?-U.K.SUBS