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【薬剤師が解説】点鼻薬の形状によるアレルギー性鼻炎の治療への影響

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

2023年6月にアレルギー性鼻炎薬アラミストの
ジェネリックが発売されました。


点鼻薬の形状が変わって
気になっている方もいるかもしれません。

ステロイド点鼻薬は
デバイスの使いにくさや
使用感に違和感を感じることで
治療継続率の低下を招き
十分な効果を得られないこともあります。

今回はアレルギー性鼻炎で使用頻度の高い
アラミストとナゾネックスで
異なるデバイスによる治療への影響
調査した文献について勉強していきましょう。


1.アラミストとナゾネックスとは

両剤形共に
1日1回型
のステロイド点鼻薬として
アレルギー性鼻炎の治療薬として用いられます。

点鼻薬の違いについては
下記ブログにてまとめています。

<点鼻薬一覧>

アラミストとナゾネックスでは
デバイス(薬の形状)が異なります。

アラミストの方が新しい薬で
あまり見ない特徴的な形をしていますね。

ナゾネックスはフルナーゼなど
下記の写真のような
従来の点鼻薬の形を保っており
馴染み深いかもしれません。

では、実際にデバイスの使用感等について
有効性や安全性を含めて比較した試験を
見ていきましょう。

2.試験デザイン

今回は友永先生の研究報告を元に
勉強していきます。

【対象】
13歳以上のアレルギー性鼻炎患者54名
男性12名 女性42名
≦19歳:4名 ≦29:9名 ≦39:9名 50≦:25名

男女比に差があること
症例数が少ないことは
少し気になる点ですね。

年齢は50歳以上が
25名と多少年齢層が高いです。
最高齢で85歳でした。

【試験方法】
ランダム化、クロスオーバー法
投与期間:4週間(各点鼻薬2週間毎)

アラミスト群(FF:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
ナゾネックス群(MF:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)

それぞれ1日1回点鼻の薬であるため
ランダム化しても問題ない試験となっていますね。

また、クロスオーバー法により
各薬剤を2週間投与後に
それぞれFF点鼻液又はMF点鼻液へ
切替えて2週間投与していきます。

【点鼻薬投与後のアンケート項目】
1.点鼻薬を1日のうちに、主に使用したタイミング
①朝 ②昼 ③夜 ④寝る前
2.使用後の印象
①大変使いやすい ②使いやすい
③やや使いにくい ④使いにくい
⑤特に何も感じない
3.上記の印象を持った理由
①サイズ ②ノズルの太さ長さ ③持ちやすさ
④押しやすさなど操作性 ⑤残りの薬量
⑥蓋の開閉 ⑦その他 ⑧とくにない
4.今後も使用したいか
①使用したい ②どちらかというと使用したくない
③どちらでもいい ④使用したくない
⑤わからない

2週間後と4週間後に
上記の項目について
各点鼻薬毎にアンケートをとります。

3.試験結果

アンケート回答結果を
下記の通りです。


3-1.アンケート結果

【点鼻薬の使用タイミング】
過半数において夜または寝る前

夜中に鼻の症状で寝付けない
朝はバタバタして忘れやすい
といったような理由が想像できそうですね。

【使用後の印象】
①、②の割合
MF群:81.5% FF群:46.3%
理由:持ちやすさ、押しやすさなどの操作性

大変使いやすい、使いやすいの割合は
モメタゾンの方が使用しやすいと
回答した割合が多い結果
となりました。

これはデバイスの操作性に
起因すると考えられました。

【今後もぜひ使用したい】
MF群:37.0% FF群:14.8%
【どちらかというと使用したい】
MF群:20.4% FF群:25.9%
【どちらでもいい】
両群:35.2%

50歳未満群では
「ぜひ使用したい」の回答には
両群で有意差はありませんでした。

しかし、「使いやすい」の回答に関しては
MF群で有意に多い結果となりました。

また、2週後と4週後の結果は
いずれの評価時期においても
同様の結果を示していました。

【どちらが良かったか】
MF群75.7% FF群16.2%
同程度8.1%


3-2.安全性

両郡において副作用は認められず
忍容性は良好でした。

副作用がなかったのは
点鼻薬は局所的で
全身への移行が少ないためと
考えられそうです。

4.いつき博士の考察

使いやすさという点では
最新型のデバイスより
従来からのデバイスの
ナゾネックスが優れていることが
示唆されました。

今回の試験で気になった点を
3点記載します。

①試験対象者について
今回のアンケート結果では
女性や中高年齢層で
噴霧時にアラミストでは
やや押しずらいとの回答もありました。

ナゾネックスは従来通りのデザインで
米国関節リウマチ患者によるアンケートで
もっとも使いやすいと選ばれています


これはアラミストのデバイスの使用には
ある程度の力を要するため
考えられています。

今回の試験デザインから
女性比が多い点や
半数以上の方が50歳を超えている点も
ナゾネックスが有意になった理由として
考えられそうですね。

②使いやすさ以外の点について
ナゾネックスの使いやすさでは
持ちやすさやサイズ感が
結果の要因となってくる一方で
アラミストは残量が見える点なども
特徴として挙げられます。

しかし、今回のデータから
残量の確認やにおいなどは
大きな要因とはならないと
考えられそうです。

③今後使用したいかの結果について
ナゾネックスが使いやすいと
回答した割合が8割を超えているにもかかわらず
『また使用したい』を選択した方が
4割弱
という結果となっていましたね。

デバイスの使いやすさの他に
薬剤自体の効果を実感できたかできないか
評価のポイントとしては大きなウェイトを
占めているかもしれませんね。


ステロイド点鼻薬は
長期連用により改善率が上昇する
ことが知られています。

1日1回となることで
コンプライアンスの向上に
繋がることも示唆されます。

今回の結果では
ナゾネックスの方が
使いやすいといった結果でしたが
薬剤に対する印象や好みには
個人差が大きい
と考えらます。

医師と話し合い、自身に合った
点鼻薬を見つけることが
治療を円滑に進める近道でしょう。

《参考文献》
アレルギー性鼻炎におけるMometasone Furoate点鼻液とFuluticasone Furoate点鼻液の患者満足度に関する検討.友永和宏
Allergology&Immunology Vol.17,No11,(2010)