かわいいうさぎが、幸福へと道案内する。 宇治神社「合格守」
◆この記事を書いた人
京都外国語大学国際貢献学部グローバル観光学科 Ngai Yat Nam
宇治は京都市の南に位置し、宇治川の流れと朝日山や大吉山など連なる山並みが美しい、山紫水明にして風光明媚な街である。また宇治茶の産地として知られ、抹茶の世界的な人気の高まりもあって、国内だけでなく外国からの観光客も多い。宇治橋の東岸にある1160年創業という通圓を始め、宇治橋商店街に立ち並ぶ伊藤久右衛門や中村藤吉など歴史あるお茶屋さんが並美、若い女性を中心に人気も高い。
宇治神社は京阪宇治駅から徒歩で約10分。駅前のロータリーを宇治橋の方へと向かって歩き、先ほど紹介した通圓の脇の細い道を進んでいくと左手に見えてくる赤い鳥居が宇治神社への入り口となる。社伝によれば宇治神社の歴史の始まりは西暦313年というから、いまからおよそ1700年も前のこと。じつはこの創始については、とても印象深いエピソードが残されている。
応神天皇が次の帝に菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)を指名したのだが、菟道稚郎子命兄である大鷦鷯命(おおさざきのみこと)を差しおいて自らが皇位を継承することはいかがなものかと思い悩んだ。結果、3年近くにわたり互いに皇位を譲り合って空位が続き、それが国の混乱を招いていた。最終的に菟道稚郎子命はこの状態を解決するため、312年に宮居のあったこの宇治の地で自らの命を絶ち、兄である大鷦鷯命に皇位を譲ったのだという。仁徳天皇として即位した大鷦鷯命は、この出来事をたいそう悲しみ、この地に菟道稚郎子命の御神霊を祀った。これが宇治神社の始まりだったのだそうだ。
なお菟道稚郎子命の陵墓が京阪宇治駅近くにあるので、あわせて尋ねてみるのもいいだろう。
もともと宇治は漢字で莵道(うさぎみち)と書いて「うぢ」と読んだのが地名の由来。ではなぜうさぎの道なのか?じつは先にも述べた宇治神社の御祭神である莵道稚郎子命が、河内の国からこの地に向かう途中で道に迷ったところへ、ふと一羽の兎が現れ、振り返り、振り返り、この地に道案内をした」という「見返りうさぎ」の故事に基づいているのだそうだ。
宇治神社の「合格守」が見返りうさぎの絵柄になっているのも、もちろんその故事に由来している。見た目もかわいらしいこのお守りは“合格”と“五角”をかけて、五角形のかたちをしており、とくに受験生からの人気が高い。色は黒と緑とピンクの3色。御祭神である莵道稚郎子命は幼いころから学問に秀でていたことから「学問の神様」として知られ、学業の向上や入試・就活の合格などをご利益としているのだ。
また、宇治神社に参拝したら、ぜひ「うさぎさん巡り」にトライしてほしい。うさぎさん巡りとは、うさぎの絵が描かれた絵馬に願い事を書き、本殿のまわりを時計まわりに3周する間に、3つあるうさぎの置物に巡り合えると、絵馬に書いた願い以上のご利益を授かれるとされる宇治神社ならではの参拝方法だ。お賽銭箱の前にある見返りうさぎと同じものが1つと、等身大のうさぎ(見返りうさぎではない)の置物があと2つ、どこかに置かれているので、ぜひとも見つけてみてほしい。
このように、うさぎの縁の深い宇治神社。とくに2023年はうさぎ年ということもあり、宇治神社をお参りするのにうってつけの年でもある。かわいい置物にもなる「見返りうさぎみくじ」で今年の運勢とこれからの自分が進むべき道を占い、かつての逸話のようにうさぎの道案内に従ってみるのもいいかもしれない。
◆宇治神社 公式サイト
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