時計とホイッスル。

 そこのアルビが好きなあなた。

イルカ、と言えばいったい何を思い出すだろうか。もちろん海に住んでいるイルカと答える方が多いだろう。いや、海に住んでいるというのは大多数で、アジアには川イルカというのもいるらしいのだが。
 

ちなみにwikipediaには川イルカ(カワゴンドウ)とは言うものの淡水の河川に住むのではないと書いているが、ラオスのシーパンドン付近やカンボジアのクローチェ地方など、河口から200-500キロくらい離れたところでも私は見ているので、正直wikipediaは怪しいと思っている。

 というか自称専門家の言うことや、大正義新潟日報様以外の活字の情報が信じられないのは私たちが最もよく知っている。毎年毎年色々なメディアや専門家にJ2降格候補と言われていたのにしぶとくJ1に残ったあの頃のアルビのように、イルカにもwikiに反発して川に住み続ける根性のあるやつはたくさんいるのだ。よくも毎年毎年降格候補にしてくれたな、覚えてろよ、○○(←お好きな解説者のお名前を入れてください。私も本当は実名を書こうとしましたが、あまりに候補が多いので断念しました)

 さて、海に住むイルカでなければどのイルカだろうか。私くらいの年齢だと、G-SHOCKのイルカ・クジラを思い出す人もいるかもしれない。というか、実は今でもイルカ・クジラはしぶとくリリースされているらしい。まるで時計界のカズ、三浦カズのようである。

 ご存知ない方にイルカクジラを説明すると、私が小中学生のころ、一世を風靡したG-SHOCKのシリーズの一つで、バックライトをつけるとイルカが見えるというやつである。   

 イルカと言っても、もちろん同じく中学生時代に歴史の時間に往年の魔法の言葉・墾田永年私財法と並んで華麗に一世風靡された蘇我入鹿様ではないし、歌手のイルカでもない。

きっと当時はお二方とも一世を風靡されていまそかりだったのでしょうが、残念ながら時計に起用されたのは海に住んでいる方のイルカであった。

ボタンを押すとバックライトに歌手のイルカが出現とか、蘇我入鹿が出現とか、それはそれで衝撃的でいとあやしなのだろうが、残念ながらカシオ社の社員はまともだったのか或いは蘇我入鹿の顔を忘れていたのか、それとも歌手のイルカの顔が気に入らなかったのかは定かではないが、いずれにしても時計に採用されたのは海のイルカだった。

 しかしながら、今私がイルカを言い出した理由は、海のイルカでも川のイルカでもなく、ましてG-SHOCKでもなく、蘇我入鹿でもなく、まして中臣鎌足でもなく、歌手のイルカである。そう、あのイルカである。汽車を待つ君の横で時計を気にしている、あのイルカである。

 今日私が歌手のイルカを引き合いに出した理由は、会社の隣の課の川内さん(実名・28歳独身)に似ているからとかそういうことではなく(だが川内さんは本当に似ている。星雄次と星広太くらいのレベルで似ている。ただし私はジェントルメンなので彼女にそのことは言わないでいる)、私たちアルビサポの生活は本当に時計を気にしているなと思うからである。

 はっきり言って、私が知る限り普通のサラリーマンは朝の出勤時間と飯の時間くらいしか時計をそれほど気にしていない。普通のサラリーマンの定義が難しいが、仮にサザエさんのノリスケ的なサラリーマンとしよう。ただし彼もあの年齢であの風格は只者ではない。FCサザエの大エース・アナゴ選手ほどではないが、前田大善程度の風格は持っている。

 しかし、我々アルビレックス新潟サポは、尋常じゃないほどに時計を気にしている。

 いや本当に、尋常じゃないほど気にしている。試合当日は何時に試合が始まるから何時に出発しようと朝から時計を気にしている。今でこそ少しマシになったが、あの頃は本当にナイトゲームのために朝から準備していた。アウェーとなると前日から準備だ。その前にアウェーはチケット争奪戦なので何時から発売というのを本当に時計を気にしている。

 スタジアム入場口には抽選が何時だとか、何時に開門だとか時間をひたすら気にしている。まだまだ時計を気にすることは多いが、そして試合中、試合の終わりはやはり、時計とホイッスルをひたすら気にしている。

昨日の甲府戦、試合終了間際、ずっと時計を気にしていた。ロメロのゴールまでは試合終了までの時間と、そのあとロメロのゴールからはやはり試合終了まで何秒だろうとみていた。それだけじゃない、2003年、最終節の大宮戦、優作のゴールから相手にひたすら攻められていたあの日。思えば僕たちはずっと変わらず、いつも時計を見てきていた。

 今僕たちが時計を見るのは、次の試合までどれくらいだろう、試合が終わるまでどれくらいだろう、そして昇格までの距離はどれくらいだろう、それを知るために時計を見ている。  

正直、昇格の可能性は低いのかもしれない。それでも僕らはあきらめず、どの試合も時計を見ている。時計の向こうにはイルカは映らない。蘇我入鹿も映らない。だけど、目には映らないはずだけれども、それでも今年の最終節の時計が90分+α過ぎたとき、その向こう側には昇格に喜ぶアルビが見えるはず、そう信じて私は勝利のための時計を見ている。


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