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読書記録 「キリング・アンド・ダイング」

 本来であれば。先週書いた通り、ジャームッシュの映画2本とジム・キャリーの映画、そしてサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」とヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの「MORSE」下巻の感想をね、この場で書くはずなのだけれども。

 いやあ……観れませんでしたねえ。 読めませんでしたよ。ねえ? なんか、「ハードルは越えられないと意味がない」的なことを先週書いた気がするのだけれども、いやあ、まさかだよね。一発目でさ。いけると思ったんだけどね。無理でしたわ。まあ、”こういうケースもあるという リアリズム そんな目でオレを見んな”と。ね。

 ということで一週間待ってほしい。まあ、これ読んでる人は誰も待ってないんだろうけどさ。この、先週ね、これを観るぞ! これを読むぞ! って決意した自分に対して言ってる。まあ、一週間待ってくれ。俺にも事情があるんだよって。まさにリアリズム。

 とは言っても。言わせてもらうけど、俺だって何も一週間遊んでたわけじゃないんだ。「ナイト・オン・ザ・プラネット」観て、初めて、ジム・ジャームッシュの魅力が分かったりしたし。自分ジャームッシュは「コーヒー・アンド・シガレッツ」と「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」だけしか観てなくて。これらもまあ、悪くないな程度だったんだよね、自分にとっては。何で皆そんなジャームッシュジャームッシュ言うんだろうって。分らされましたよ。俺も今すっげえジャームッシュジャームッシュ言ってるもん。
 そんでサミュエル・ベケットよ。もうすぐ「ゴドーを待ちながら」読み終わるんだけどさ、いやあ、凄いねこれ。久々に脳が焼かれた。ドン・デリーロがさ、読み手の世界を変えてしまうほどの力を持った作家つって、ベケットとカフカを挙げていたらしいんだけど、いやあ、まさにまさに。これはね、また単独で感想を書きます。本当に素晴らしい。自分ベケットの戯曲全集注文しちゃったもん。いやあ、凄いよベケット。ベケットベケット。

 てな具合にね。全く目標を達成出来ていないわけではないんだってのは知っていて欲しい。うん。ちょっと自分を過信しすぎていたのと、現実を甘く見過ぎていたっていうね。と言うことで、もう一週間いただいて、「ミステリー・トレイン」と何だっけ、ジム・キャリーの映画、それと「ゴドーを待ちながら」と「MORSE」の下巻ね。鑑賞します。映画週二本くらいにしてさ、本は週一冊にしようかな。ちょっとね、他に何も出来なくなっちゃうんだ。曲がりなりにも作家志望何でね。

 はい。つーことで今週書くことなくなっちゃってさ。「ナイト・オン・ザ・プラネット」も確かに面白かったけど、そんな語れるほどではなくてさ。「今週これとこれとこれ観たんだよねえ。これはここが好きで、こっちはこういうとこ」くらいしか書けない類なんだわ。端的に言えば尺が持たん。これは前にも書いたけど、好き嫌いとか、出来の良し悪しとか関係なく、単にそれについて語る言葉が俺の中にはないってだけ。素晴らしい映画ってのに変わりはないんだ。

 じゃあ今週何書こうかってことではい。

 皆さんはグラフィックノベルというジャンルをご存知ですか? 僕はあまり良く知りません。多分ニュアンス的には漫画と小説の間みたいな感じなんだよねきっと。もうちょっと詳しくなったら改めて語ります。今回はそれほど重要じゃない。

 このグラフィックノベルというジャンルでそれなりの地位に立っているのが、このエイドリアン・トミネなわけですわ。この「キリング・アンド・ダイング」はね、「パリ13区」という映画の原作なんですが、ご存知ですか? 僕は知りませんでした。これは短編集なのでね。この中に入ってる作品のうち二つを組み合わせた映画なんだね。短編あるある。

 片方は「アンバー・スウィート」。これはアメリカのAV女優と同じ顔してるってことに悩む女子大生の話。語り口が凄いオシャレだったわ。こんな経験してさ、こんな生活だったんだわってのを、恐らく今の恋人に向けて、あなたには知っておいて欲しい的なね、流れだってのが、最後のコマで分かるっていう演出。余韻が好きだったなあこれ。

 そんで「キリング・アンド・ダイング」の方ね。これはもう、根暗な女の子が突然コメディアンになるって言い出して困っちゃうお父さんの話。お母さんは乗り気なんだよね。無責任なのか、尊重しているのか、愛ゆえなのか。お父さんはリアリストでね。お前にコメディアンは無理だろ……みたいになるんだけどっていう。これは切ないってか、この短編集の中で一番文学性を感じた。リード曲みたいなさ。あ、表題作か。そりゃあこれ選ぶわって。タイトルも良いんだよね。「キリング・アンド・ダイング」。ネタバレすると終盤お母さん死んじゃうんだわ病気でさ。そんでもう二人とも引くに引けないというかね。どうにも出来ないこの閉塞感。互いに互いを思いやっているのにっていう。いや、素晴らしい。これ「パリ13区」ではどういう風に繋げてるんだろ。気になるわね。

 そんで惜しむらくも映像化から溢れてしまった奴らにも触れておくか。そういう作品に限って輝いていたりするもんなんだわ。

 「ホーティスカルプチャーとして知られるアートの短い歴史」。これは植木屋の男がある日突然変なアートに凝り出すっていう話。誰にも相手されず家族も振り回してって感じなんだけど。いやあ、全体的な共感ってのはなかったんだけど、やっぱり、グラフィックノベルの強みっていうのかな、ちょっとした一コマ、ちょっとした一言が凄い刺さるというか。こう、苦笑いしながらさ、まあ、分かるよって言いたくなる感じ。素晴らしかった。これぞまさに”道に迷った普通の人”って感じ。とても良い。凄く好き。

 「それゆけアウルズ」。これはもう、そうだよこれで良いんだよこれこれこれこれこれってなる作品。一日一日をもがくように生きている底辺の男と女がどうしても幸せに触れられないって感じ。切ないんだよね最後がさ。俺もう切ないしか言ってないんだけど。色々とリアルなんだよね。切羽詰まると攻撃的になるもんだし。暗いっちゃ暗いんだけど、俺さ、これ一回しか読んでないから記憶違いかもだけど、作中で描写されてる時間さ、昼間が多いんだよなあ。このギャップよ。たまらない。
 
 「日本から戻ってみたけれど…」。これはあんま言うことないかな。良い作品なんだけどね。上手くいってない夫婦がいてさ、そのお母さんの方が、娘連れて旦那のとこに戻るって話だったと思うんだけど。うん。飛行機の中で、このお母さんがする妄想、あれは好きだったな。その後の旦那とのやりとりもさ。うん。細やかだったね。多分、この本の中で一番気持ちが分かった。うん。何か身に覚えがあるんだよなあれ。

 そんで最後、「侵入者たち」。これ一番好きかもしれんってか、これが短編集の一番最後におさまってるの本当に良い。ビートを感じた。雑に言うと、現在の生活があんま上手くいってない主人公が、以前彼女と住んでた部屋の鍵を偶然見つけて、もうその部屋には別の人が住んでいるのに、留守中に入り込んで料理したりくつろいだりするっていう話なんだけど、これめちゃくちゃ良かったなあ。この淡々としたやるせなさ。不機嫌なふてぶてしさ。停滞感に閉塞感。だけどうじうじした空気感はなくて、その部屋の向かいのカフェでコーヒーを飲んだりとか、部屋の中で卵を割る感じとか、凄くクールなんだよね。うん。素晴らしい。

 はい。ということでね、言い訳と読書感想を書かせてもらいました。いつも時間ギリギリなんだよな。これも何とかしたいんだけどね。なかなか……。それじゃあまた来週ね。


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