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『徳利と盃の魅力』浦野惠司著/酒器本解説シリーズ②

こんにちは!
 酒器研究家の知鳥(ちどり)です。
当ページにお越しいただき、ありがとうございます。

今回は、
 酒器を語る本シリーズ~その2!
~『徳利と盃の魅力』浦野惠司著~

 についての解説になります。

タイトル:「徳利と盃の魅力」
浦野 恵司(うらのけいじ)著 里文出版
単行本 ‏ : ‎ 167ページ
2012(平成24)年3月8日 初版発行

【写真・本表紙(2024年・執筆Chidori撮影)】
毎回、写メ画像の質が悪く、お許しのほどを・・
【写真・裏表紙(2024年・執筆Chidori撮影)】

1.本の立ち位置

当シリーズにて
酒器について書かれた書籍・図録等をご紹介させていただくにあたり、
目安として、以下の形で分類しています。

【A】本のなかで酒器についての記述箇所の多さ
★ 一部のみ ~ ★★★★★ 全体が酒器について
【B】難易度レベル
★入門 ★★初級 ★★★中級 ★★★★上級 ★★★★★超専門
【C】記載されている酒器の種類・タイプ
【D】対象酒器の時代区分

こちらの本について・・・
★★★★★ 本全体が酒器
★入門 ~ ★★初級
種類:   〇 徳利 〇 盃
時代区分: 〇 現代 〇 歴史的

2.本の内容感想

目次は?というと・・以下のとおり。
1 徳利蒐集事始め(太田金山周辺のこと;内田太古庵のこと;東京からイサム・ノグチがやって来た;岡本太郎もやって来た;新田義詮もやって来た)
2 酒と文人(立原正秋;萩原朔太郎;南方熊楠;山本周五郎;泉鏡花;坂東三津五郎)
3 古窯の旅(九谷紀行;秩父紀行;丹波紀行;備前紀行;古瀬戸紀行;常滑紀行;唐津紀行;鎌倉紀行)
4 酒の効用(酒は百薬の長;大阪鴻ノ池酒造の灰投入れ事件;日本の銘酒宣伝口上)

引用元:紀伊国屋書店/公式オンラインショップ
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784898063859

感想としましては・・
 目次だけをみると、文章での解説がほとんどか?
と思えてしまいますが、実際は、
目次の内容に関する章は、およそ20ページほど。
 残りの140ページ程度には、
200種を超える、徳利と盃の写真(カラーと白黒)と解説
1つの酒器に、数行の解説が付されています。

  • ほぼすべてが陶磁器

  • 国内各産地(中国・韓国産の酒器も若干あり)

  • 様々なデザイン・形態の酒器

  • 時代も様々。

掲載されている酒器の多くは、
どちらかというと、著名な作家モノの酒器紹介というよりは、
著者がコレクションした、さまざまな形態の酒器の紹介がメイン。
私も、拝読して、こんなにもいろいろな形の酒器があるのか!
驚きでした。

例えば・・
この徳利は李朝(現在の韓国)の酒器ということですが・・
この形状の徳利は大変珍しいモノ・・。
李朝三島偏壺徳利
高さはそれぞれ、12cm、14㎝/容量2合と3合用。

李朝徳利
李朝三島偏壺徳利(時代不明)/写真・本著掲載写真をから

偏壺というより珍壺である。
実に珍しい壺を両手で抱えていると幸せなハッピー気分になる。
茶席に入れば客人皆、きかかえて手離さないのではなかろうか。

当著100ページ記載

こちらも今の時代、大変珍しい形!
国産・瀬戸焼の徳利。
作成年は不明ですが、時代的に、明治中期~太平洋戦争終戦までの間に作られたものでしょう。
著者曰く・・
 富国強兵戦争勝利のため種々の容器が考案されたとのことで・・
大砲のタマに見立てた胴部、上部が盃(ペク盃という)になっていて、
注いだ酒を呑み乾さないと置けないタイプの盃です。

瀬戸弾丸徳利 一対
高14.5cm 容量1.5合

今瀬戸弾丸徳利一対

形が、今の時代の携帯用コーヒーポットのようですが、
携帯用の酒器ポットもありなんでは?
 ・・酒Loverの旅には必携アイテムになり得る?と思ってしまいました。

著者の浦野氏は、冒頭(20ページ)の中で、
執筆の動機や背景、酒文化などについて語られています。
群馬県ご出身ということで、地元愛にあふれておられ、
地域の歴史(群馬)や古墳、地元でのコレクションについてのお話など書かれています。

個人的に一番印象に残ったのは、
さいごの「あとがき」の内容で・・。
地元の価値あるコレクション(太古庵の財宝)が、残されることなく、
大阪の骨董市でたたき売られてしまったことに対する、無念さ・・・
 ・・・短い文章ながらも、気持ちがストレートにつたわり、強烈です。

地元の文化財は地元に残す!
 市の文化財担当者も教育委員会も努力したにもかかわらず、
 結果的に政争の具と化した太古庵の蒐収品は雲散霧消。
 文化財行政の貧困ここに極れり・・・

あとがきより抜粋

と、くくられておりました。

地産地消ではなく・・
 ・・「地資産地残」(➡ちどりの造語)の発想が必要だと思いました。

伝統文化・伝統工芸・美術の世界・・・
カネのことは語らず的な美徳(日本人にありがち)が、
現実は通用しないのは、
長年、私は金の世界にいた身なので、よーーーーーくわかります。
カネが目的であってはならないですが、手段としてのカネは必要な存在・・
現実は、キレイごとではすまされず・・・
浦野氏がさぞかし悔しい・悲しい思いをされたのか・・
 酒器の写真をながめているだけではわかる由もなく・・の感想でした。

最後となってしまいましたが・

3.著者略歴(※)

(※刊行された当時の情報)

浦野惠司[ウラノケイジ]
1938年 群馬県渋川市生まれ 画家、古陶器研究家・大日本古陶器研究所主幹
他にも著書 『徳利・盃図鑑』(里文出版) など


今回は以上となりますが、
 もし皆さんの中で、
 他に、こんな本もあるけど、
  中味がどういうものなのか知りたい!
という方がいらっしゃいましたら、
 是非、コメント等、お寄せいただけたらとても嬉しいです。

今回、雑誌の酒器特集をご紹介する予定だったのですが、
 それは、次回に・・ということで少々お待ちください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

~Written by CHIDORI ©2024~
   無断複写厳禁 

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