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灰汁詰めのナヴォー

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小説っぽいなにかがあります
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#タピオカ

タピオ・カーン INTO SWEETIA

タピオ・カーン INTO SWEETIA

 FLAAASH! 森の中、神が放った火柱の如く太い稲妻が落ちた。その直後……

 ズッグーン……グラタァァァン!!!
 神の怒りの如く大きな雷鳴!キャンディリス、トフィーフォックス、シロップラクーンなど野生動物が逃げ惑う。

 稲妻が当たった場所、クラウン・ゼロ。木々が倒れ、土が爆ぜてクレーターが生じた。そのど真ん中、モンゴル帝国式鎧を着たひげ面の男と、彼が載っている漆黒の毛色のモンゴル馬がいた

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タピオ・カーン HARVEST

タピオ・カーン HARVEST

 一見整理されていない、低木と雑草が生い茂る平地だが、もう少し目を凝らして観察すれば、そうでないとわかる。

 地面を這うハート型の葉はさつま芋、縁がギザギザした葉を持ち、人の高さをも超える草は苧麻、茎が真っ直ぐに伸び、白菫色の花を咲かせている亜麻。扇型に伸びた大きな葉からフットボールみたいな蕾をぶら下がっている芭蕉。そして一番多い、葉が放射状に七つ股に分けた矮木はキャッサバ。どれも利用価値のある

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タピオ・カーン JUDGEMENT

タピオ・カーン JUDGEMENT

 シャーー……夜の街、重金属酸性雨が降りしきる雨の中、みすぼらしい格好の男は雨に打たれながら町を徘徊している。彼の名はアクズメ、かつての屈強なマッスルボディが影も見えず痩せていて、髪の毛とひげは伸び放題。一体彼の身に何があったのか。

 ことの発端は九月下旬、家政夫が主催した物書きどもが集まる芋煮会に、アクズメはある目的で会場に爆弾を投下した。しかし頑強な物書きたちは爆弾でも殺せず、逆に彼を返り討

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樹薯粉可汗

樹薯粉可汗

 夜、大雨、埼玉県、秩父市近郊の山道。

 稲妻は夜空をよぎり、道路を僅かな間照らした。そのど真ん中に抜刀状態でモンゴルナイトメア跨がるタピオ・カーン。転倒し、ひしゃげた二台のトラック、斬殺死体、そしてあたり一面に散らばったタピオカ、タピオカ、タピオカ!何が起こっていたというのか、聡明なる読者諸君は既にお気づきであろう。タピオカブームが去り、大量在庫に悩んだ悪徳業者はタピオカを、夜に紛れて山野に不

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ダピオ・カーン TEA END

ダピオ・カーン TEA END

「こないね」

 黒糖タピオカミルク専門点「枕牡丹」、15時。ティータイムにちょうどいい時間だが客人は一人もいない。一時間まえにUber EATSからの注文を消化してからずっとこの状態だ。一ヶ月前に行列がブロックを一周できた盛況はウソのようだ。

「あちぃー……」

 東京の夏、悪辣な太陽、湿度、温暖化、ヒートアイランド現象、昼過ぎても39℃の気温の中で出歩く者はあまりない。店の天井から伸ばした日

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タピオ・カーン TAPIOCA KNIGHT

タピオ・カーン TAPIOCA KNIGHT

「店長はん、売上が上々やな」

「ハイ、リンさんのおかげで」

 渋谷、ティーショップ「リットルフィニックス」、二階のオフィス。店長の児内(こない)とソファにもたれた男がローテーブルを挟んで対面している。男の名前は林玄聖(リン シュエン スン)、母体会社から派遣されたお目付け役……つまり台湾マフィア『凰門』の幹部だということだ。はたけた黒い唐装(中華風のシャツ)の中に覗かせる関羽と関勝の刺青、オイ

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タピオ・カーン STRIKES AGAIN

タピオ・カーン STRIKES AGAIN

「これでOK?」「もう少し近づけた方がよくない?」

 ピンク縁眼鏡のケイミと黒いロン毛のラビ、二人の女子高生はカメラに向けて、頬がくっづくらいに顔を近づけ、手に持っているタピオカミルクティーとタピオカ冬瓜ティーのコップを合わせて乾杯するポースをとった。

「おっ、いい感じじゃない?」「じゃあ撮るね。せーのー」

「「イェーイ」」

 満点な笑顔をきめて、ケイミはBluetoothシャッターリモコ

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タピオ・カーン RISING

タピオ・カーン RISING

「おいおい、見ろよこの列ぅ〜」「バッカみてえ!」

 メガネとセミロングの若い男性二人組が列を成しているタピオカミルクティーショップの前でスマホをかざして生配信していた。並んでいる客の顔が処理されず直接youtubeのLiveに流されている。立派なプライバシー侵害だが流行り物を叩いて自分の優越感に浸っている彼らにとってそれすらスリルを増すスパイスである!

「そもそもさぁ、タピオカはキャッサバとい

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