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『スケバンとユーサク』

起立〜

礼〜


着席〜


高校1年生の
ある日のこと。


I時間の
現代国語の時間が始まった。
しばらくして
遅刻してきた生徒がいた。
S君だ。


ン?
何?
どうした⁇


S君のカッターシャツがおかしい。
ビリビリになっている。
しかも血もついている。


隣の席に座ったS君に

『どうしたん?
 服ビリビリやけど!』



と聞くと

『最悪や〜
学校に来る途中に
スケバングループに絡まれてあいつらに、カミソリで切り刻まれたんや!』




S君の言葉に耳を疑った。


ええ〜ッ!!
ウッソ〜
そんなことある?
テレビの世界やん!
スケバン刑事みたいやん。



カッターシャツについた血は
カミソリによるものか?
みんな興味津々で
S君の話に耳を傾けたものだ。


ん?
どこかで見た光景?
デジャヴか?



昭和の時代
街にはヤンキーの兄ちゃんも
スケバングループもいた。


目が合うと

『何メンチ切ってんねん?』


すぐに絡んでくる。


あの人たちには
人見知りなど全くない。
凄いコミュニケーション能力だ。
私の友達は
電車の中で絡まれたら嫌なので
座席に座ったら
いつも下を向いていた。


すると、
あの人たちは
そこも対策済みで
下を向いて座っている友達の
顔と膝の間に自分の顔を入れて

『お前、
何メンチ切ってんねん?』

と言ってきたそうだ。
んな、アホな!
ギャグやん!?


我々は
サブマリンメンチ切りと
恐れていた。


話は変わりますが
中学2年の頃
東京から転校生がやってきた。


サーファーヘアの
サラサラ髪をなびかせて
当時は聞きなれない東京弁を
流暢に話すユーサクという名前の男の子。


私とユーサクの
ファーストコンタクトで

『君はバカだね!
君のIQは10くらいだね!』



いきなり生意気なことを
東京弁で言われた。


『やかましいわ‼️』


と言って


長州力の必殺技である
掟破りの逆サソリ固めを
丁重にかけてあげた。

『イタイ〜何するんだよ!』


ユーサクが
叫んでいたのを思い出す。
口は災いの元を
絵に描いたような男だった。


時代は昭和。
大阪の中学に
こんな転校生が
東京からやってきたら……


私のクラスに
エリートヤンキーのOという
女の子がいた。
兄2人も極上のワル。
英才教育を受けたOさん。
O兄弟のキーワードは
みんな知っている。
ヤヴァイと。


Oさんの机を横切る時に
チラリと見えた下敷きに
たくさんの写真が挟まっていた。
兄弟の写真だ。


全員、
右拳を顔の前に握りしめ
パンチパーマで長ラン
ボンタンのヤンキー王道スタイル。
何人か写っている中に
兄弟がいるんだろう。


そのOさんに
ユーサクがロックオンされた。


ある日の
昼休みが終わる直前
教室に戻ってきたユーサクが
服がビリビリに破れていたのを
見つけた。


『服どないしてん?』


聞いてみると、
ユーサクは一言

『地獄だった』


と、つぶやいた。
その言葉を言い終わった瞬間に
Oさんとその仲間が
教室に入ってきた。
みんな
ユーサクに

『ギン‼️』


と、メンチを切っている。


あ、
そーいうことね!
全てを理解した。

5時間目が
終わった瞬間、
ユーサクは教室から
ダッシュで出て行った。
その後を

『待てコラ〜』

追いかけるアマゾネス軍団。
逃げまくるユーサク。
ああ無情。


昭和の時代
大阪の街は活気にあふれていた。


逃げたらあかん〜♪
逃げたら〜♪
くちびるかんだけど〜♪
Hold me tight〜♪
大阪ベイブルース〜♪



上田正樹の
『悲しい色やね』が
どこからか流れていたのを
今も思い出す。


最後まで読んでいただき
ありがとうございました♪


#66日ライラン
55日目






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