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映画日記『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

定期的に映画館で映画を観る新習慣の第21弾。今回は、3月3日公開の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(エブエブ)』。米国アカデミー賞では、作品賞を含む最多7部門受賞した話題作。

エヴリン(ミシェル・ヨーさん)は、優柔不断な夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァンさん)と反抗期の娘、頑固な父と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営している。税金申告の締め切りが迫る中、エヴリンはウェイモンドに並行世界に連れて行かれる。そこでカンフーマスターさながらの能力に目覚めたエヴリンは、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる(シネマトゥデイから引用)。

以下ネタバレあります。

これまでの新習慣シリーズでもわかる通り、近年は圧倒的に邦画派。洋画出演俳優も馴染が薄いので、まず自分が知っている俳優の誰に似ているかを考えてみました。

主演のミシェル・ヨーさんは三田佳子さん、その夫役のキー・ホイ・クァンさんはジャッキー・チェンさん、娘のジョイ・ワン(ジョブ・トゥパキ)役のステファニー・スーさんは渡辺直美さんと思い込めば、作品の世界観に没入しやすいのかなと(笑)。

序盤の印象は、ラジオ番組『赤江珠緒たまむすび』における、町山智浩さんの映画コーナーでの赤江さんの言葉に激しく同意。映画評というと、ちょっとカッコつけたくなるものですが、こういう率直なところが赤江さんの持ち味。今週で番組終了するのが悲しい…。

「町山さんの解説と、アカデミー賞を総なめにしたみたいなのを聞いてなかったら、正直初見で見ていたら30分ぐらい、もうカオスすぎて。とんだB級映画を見てしまったな、みたいに思ったかもしれません。あそこからね、なんか、どうするんだろう?みたいな、すごいですね」

設定として、マルチバース(多元宇宙)を結ぶ技術があり、エヴリンは違う世界のもう一人の自分の能力を身につけて巨大な悪と戦うのですが、その正体は娘のジョイ・ワン(ジョブ・トゥパキ)で…というお話。

別の世界でも必ず母娘だったエヴリンとジョイ(タイトルの由来でもあります)。別世界のエヴリンが、マルチバース間をジャンプすることをジョイに強要したため、精神が壊れてしまい闇落ち。ジョイの目的は、世界(宇宙)の破壊や母への復讐かと思いきや、実はあらゆる世界を見てきた末の虚無感から、自身の存在をマルチバースの全てで消去しようとしていたのでした。

何とか娘を救おうとするエヴリンと逃げるジョイ。最後は娘の意志を尊重するのですが…おバカ映画と思いきや…最後は泣ける映画に仕上がっていました。『酔拳』や『ヤングマスター』など、ジャッキー映画で育った世代には懐かしい、カンフー映画という側面もあり、楽しめました。

余談:エヴリン自身、何者かになりたかったけれど、何者にもなれずに年老いている現実を、他の世界の自分を見て改めて気が付くのですが、それを最終的には受け入れるというあたりが『青い鳥』的でもあり、『ブラッシュアップライフ』的でもあり。

大谷翔平選手のように、十代の頃「目標シート」に書いた「27歳でWBC日本代表MVP」というような夢を実現させる人は一握り。なりたい者になれなかった多くの大人たちに刺さる物語であると同時に、情報過多で自意識が肥大化したこの時代に、虚無思想から抜け出すヒントも示しているのかなと。

渡辺美里さんの「10 years」が聴きたくなりました。

蛇足:昨日は夕方、久留米市の桜の名所の一つ、小頭町公園で独り花見。酎ハイとツマミを買って、座り込んで飲みながら桜を眺めていると、花びらがちらほら舞っていて、一番いい状態。

家族連れ、友達連れ、会社の宴会、大学生のコンパ、犬の散歩など、それぞれが思い思いに楽しんでいて。すると、4~5歳ぐらいの可愛い女の子が「こんにちは」と突然話しかけてきて。ちょっと驚きながらも「こんにちは」と返すと、満足した表情で去って行きました。

まだマスクをしている人が多数派ながら、せっかくなのでマスクを外して、桜の匂いを感じながら、露店などもチェック。なかなかバラエティー豊富で賑わっていました。

毎年のことですが、桜の季節になると、「また一年生き延びたなあ」と感慨深く。来年もまた見られるという保証など、誰にもないわけで。今年の桜を今日も堪能してきます。



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