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バブルに踊る 吉田まゆみ『アイドルを探せ』

1980年代、一世を風靡した少女漫画家に吉田まゆみさんがいます。『年下のあンちくしょう』で人気を博し、『れもん白書』『B.Dフィーリング』などヒット作多数。

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作家の高橋源一郎さんにいわせれば、「吉田まゆみのマンガの中心は“初体験”なのである。そこへ至るプロセスはワンパターンであり、そして同時になんと豊かなバリエーションを持っていることか。“少女から大人へ”のわななきを、完全に手中にしているように見える」だそうです。

以前にも紹介した、1974年から6年ごとに行われている「青少年の性行動調査」によれば、高校生の性交率が大きく上昇した1980年代、吉田まゆみさんのテーマであった“初体験”は、そんな時代背景もあったのでしょう。


吉田さんの代表作『アイドルを探せ』はさらに進化。“初体験”がゴールではなく、さらに“自由”になった女子大生が描かれました。時はバブル時代、当時の世相がよく描かれていて、その時代の空気を知るにもうってつけ。

主人公の知香子は女子短大の1年生。初めての一人暮らしで、同じ住民の千明やカンロちゃんと知り合い、男性を物色する日々。やがて、知香子には突然のモテキ。年下の大家の息子に気に入られ、バスツアーでは好青年の岩田と知り合い、中学時代に憧れだった永江とも再会し…というストーリー。

結局、永江と初体験に至る知香子ですが、すぐに別れて岩田の方へ。誠実な岩田にしとけよ、と読者は思うのですが、再び永江に。交通事故&新幹線シーンを経て、岩田と元鞘かと感動させておいて、今度は広告代理店の青木ともいい感じという、欲望に素直というか、なんというか(笑)

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ある方は知香子を評して、「ちょっと顔がかわいいことだけが取柄のカラッポ」と評されていましたが、なかなか手厳しい。たしかにバブルに踊ったあの時代、空虚でカラッポなことをしていた人も多かったような気もします。

モブキャラと思われていたカンロちゃんが、最後はラガーマンと恋に落ちる展開が秀逸。初体験のシーンは、これまでの吉田まゆみさんの集大成といえるでしょう。

菊池桃子さん主演で映画にもなりましたが、別物と思ってください。

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