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親の意見と「永遠の恋」

大学時代、日光に大学の宿泊施設があり、ゼミ合宿で泊ったことがあります。せっかくなので、東照宮や華厳滝なども観光。子供の頃、心霊写真スポットとして有名だった、滝の前での集合写真は全力で回避しました。

自殺の名所として知られる華厳滝。元々は、明治時代に藤村操という学生が、哲学的な言葉を残して自殺したことがきっかけで、後追いが続出。社会問題にもなりました。

ところが、近年その真相が判明。ある女性への失恋であったとみられています。死の直前、藤村はその女性に、傍線と書き込みをした、高山樗牛『滝口入道』を手渡していたのです。まずは、傍線を引いた本の内容。主人公の父が、ある女性に心を奪われてしまっ た息子を諭した文章。

人、若(わか)き間は皆過ちはあるものぞ、萌え出づる時の美はしさに、霜枯の哀れは見えねど も、何れか秋に遭(あ)はで果つべき。花の盛りは僅に三日にして、 跡の青葉は何れも色同じ、あでやかなる女子の色も十年はよも続かぬものぞ。

若い時は容色にばかり気を取られて、いずれは衰えるということに気が付かないものだ、というわけです。そして、この文章に対して、藤村の書き込みがありました。

そハ色ぞかし、恋にハあらじ 色ハ花よ、無情の嵐に散りもせむ、恋ハ月よ、真如の光に春秋のけじめのあるべしやは

父が言っているのは肉体的な性愛であって、自分が(あなたに対し)想っているのは精神的な愛なのだから永遠だ、というわけです。純粋ではありますが、観念的。そして、若い、若すぎる。

「親の意見と冷や酒は後で効く」「親の意見と茄子の花は千に一つも無駄は無い」などといいますが、逆に言えば、若い頃に親の意見を、素直に聞くことの、難しさを表しているようにも思えます。

秋篠宮家のさまざまな報道に、思い出した話です。



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