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ルル
2020年5月20日 18:16
一面の萩だった。どこもかしこも萩、萩、萩。すべての萩が空の上から枝垂れている。あぜんとしている僕に、君は言った。すごいでしょ。 うん、すごい。すごいよね。 うん、すごい。僕はすごいしか言えなかった。口をぽかんと開けたまま、上を向いて歩いた。時々、顔戻さないと。のどとか口とか、からからになるから。慌てて僕は顔を正面に戻した。ごっくんとつばを飲み込む。ちょっと飲み込みにくかった。
2020年5月21日 16:44
石澤くん、東京にお帰りですか。キヨスクのレジで、そう言われて仰天した。ペットボトルと財布しか見ていなかった。 え、なんでここにいんの。バイト。三十円のお返しです。君の右手から、十円玉が僕の手のひらにそっと落とされる。4.5×3=13.5グラム。軽いのか重いのかわからない、ただあたたかい。 あー、夏休み中に集中講義があるから、早めに戻んないとさ。なぜか僕は言い訳している、と思っ
2020年5月23日 15:33
なんかね、こないだ、すごいの見た。中学校の体育祭は、一年生のクラス対抗リレーが始まっていた。後輩の応援をしようと、前の方へ移動した人たちの空いた椅子に、違うクラスだった君が腰かけて言う。僕のななめ後ろの椅子。 すごいのって、なに。僕は後ろを振り返らずに言う。君も身を乗り出したりはしなかった。声はとても興奮しているのに。なんかね、すごいの、もう、ぱあーってなってね、ひかってね、ぎゅい
2020年5月24日 11:11
あたし、ハギツカイだって言われた。萩に。初めて、そしてその一度きりだったけれど、あそこに一緒に行ったとき、小学四年生だった君は言った。なんかね、聞こえたの、あんたはハギツカイだから、って。僕はずっと萩使いだと思っていた。でもそれは違っていた。この土地の訛りで、エがイのように聞こえることがあるのだ。だから正しくはハギツカエ、萩仕えだったのだ。 それはさ、全然意味が違ってくるじゃん。
2020年5月26日 13:33